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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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ユーカリの葉から油を作ろう

翌朝。


「ふぁ……」


昨日はユーカリについて色々調べていたせいか、少し寝不足気味だ。

でも、やることは決まっている。


「ユーカリの葉から油を作る!」


まずは、どうやって作るのか。私はパソコンを起動して、蒸留について調べ始めた。


「蒸留……蒸気……冷やして液体に……」


なるほど。


ユーカリの葉を加熱して、出てきた成分を含んだ蒸気を冷やす。そうすると液体として回収できる。


「ふむふむ」


簡単な蒸留器の構造も調べる。

容器。蒸気を通す管。冷やす部分。

液体を受ける容器。


「これなら……」


私は必要な部分をまとめて印刷する。


「よし。これを村で作ってもらおう!」


◇


村へ向かい、まずは鉄工職人さん。


「職人さん、これを作ってほしいんです!」


「これは?」


ちほは、印刷した紙を広げる。

蒸留器の簡単な構造図だ。


「この容器で葉を加熱して、出てきた蒸気をこちらの管に通します」


「ふむ」


「ここで冷やして、液体に戻します」


「なるほど……」


鉄工職人さんが図をじっと見る。


「複雑そうに見えるが……」


「作れそうですか?」


「これなら作れそうじゃ」


「本当ですか!」


「ただし、細かいところは実際に作ってみんと分からんな」


「もちろんです!」


次は木工職人さん。


「こっちは?」


「蒸留器を置く台や、冷却部分の外側などをお願いしたいんです」


「ほう」


木工職人さんも図を見る。


「これくらいなら作れそうじゃな」


「お願いします!」


こうして、小型の蒸留器を作ってもらうことになった。


「大きな物じゃなくて大丈夫です」


「最初は実験じゃからな」


「はい!」


いきなり大量生産するつもりはない。

まずは、ちゃんと油が取れるか確認する。


◇


数日後。


「できたぞ」


鉄工職人さんが完成した蒸留器を見せてくれた。


「おお!」


思ったよりちゃんとしている。小型だけど、ちゃんと蒸気を通す管がついている。

冷却用の部分もある。


「これなら使えそうですね!」


「実際に使ってみんことには分からんがの」


「それじゃあ、早速!」


ちほは、ユーカリの葉を持ってくる。


「これを使います」


「本当にこの葉から油が取れるのか?」


「私も実際にやるのは初めてです」


「……」


職人さんが私を見る。


「それで大丈夫なのか?」


「たぶん!」


「たぶんか……」


まあ、実験なんてそんなものだ。

失敗したら、また考えればいい。

私はユーカリの葉を蒸留器に入れる。

そして加熱を始める。


「……」


「……」


しばらく待つ。蒸気が管を通っていく。

冷却部分を通り抜け――ぽた。


「……」


ぽた。


「おお?」


液体が少しずつ落ちてくる。


「出てきましたよ!」


「本当じゃ!」


さらに、ぽたぽたと落ちてくる。

ちほは、受け皿を覗き込む。


「……」


透明に近い液体。

そして――ふわっ。


「……ユーカリの香り!」


思わず顔を近づける。

独特の、すっきりした香り。


「取れた!」


「本当に葉から出てくるとはのう……」


職人さんも驚いている。


「すごい……」


ちほは、少量の液体を眺める。

まだ、これが十分な品質なのかは分からない。

どれくらい取れるのか。どう保存するのか。

どう使うのか。調べることはたくさんある。


でも。


「まずは成功ね!」


最初の実験としては十分だ。


「さて……」


ここからどうするか。いきなり薬として使うのは怖い。効能についても、ちゃんと調べないといけない。それなら、まずはもっと簡単なところから。


「香りを使ってみよう」


アロマ。温泉での香り付け。石鹸。

この辺りなら試しやすい。


「温泉にユーカリの香り……」


想像してみる。


「……ちょっと良さそう」


しかも、この村にはこれから温泉小屋ができる。その温泉で使えるなら、村独自のものになる。


「ユーカリの香りの温泉かぁ」


ちほは、少し笑う。


「いいじゃない!」


そして石鹸にも使える。香りのある石鹸。

村で作れれば、商品にもなるかもしれない。


「……」


また商売のことを考えてしまった。

でも。これも村の新しい仕事になるかもしれない。


「まずは、少しずつね」


ユーカリを育て葉を集める。蒸留し、香りを作る。そして、村で使ってみる。


「よし!」


ちほは、完成した小型蒸留器を見る。


「次は、もっと上手に作れるようにしよう!」


ユーカリの木から、また一つ。

新しい可能性が生まれた。

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