異常成長するユーカリ
ふぁ〜あ……。
「うーん。よく寝た」
昨日は温泉の湯船に使う木材について考えていたら、そのまま寝てしまった。
「さーて。油……」
今日は油について調べよう。そう思ってパソコンの前に座った、その時だった。
「ん?」
パソコンの横に、何か落ちている。
葉っぱ?
「こんな物、昨日あったかしら?」
拾い上げて眺める。細長い形。独特の香り。
「この葉っぱは……」
私は鼻を近づける。
「……ユーカリ?」
でも、どうして?ユーカリの植林地は、ここから少し離れている。こんなところに葉っぱが落ちているはずがない。
「……」
私は葉っぱをもう一度見る。
「何で?」
まさか。
「……ユーカリ植林地に行ってみるか」
私は急いで外へ出た。
◇
ユーカリを植えた場所まで歩いていく。
そして――。
「……」
ちほは、その場で固まった。
「わお……」
思わず声が出る。
「随分と成長しとるがなぁ……」
植えた時は、まだ小さな苗木だった。
それが今では――。
「……普通に木材として使える程度に成長してるじゃない」
幹もしっかりしている。枝も伸びている。
葉も大量についている。どう見ても、数日前に植えた木には見えない。
「……」
私は木を見上げる。
「ユーカリって、こんなに成長が早い……」
いや。違う。
「……わけがないだろー!!」
思わず叫んでしまった。
いくら成長が早い植物とはいえ。
これは明らかにおかしい。
「植えたの、いつだと思ってるのよ……」
まだ、そんなに時間は経っていない。
それなのにもう立派な木だ。
「これは……」
どう考えても。
「……+神」
あの表示が頭に浮かぶ。果樹にも。ユーカリにもそして、最初に植えた苗木にも現れた。
「……」
私はしばらくユーカリを眺める。
「いや」
考えるのは止めよう。
「うん。考えたら負けね」
この世界の神様が何かしている。それだけは、なんとなく分かる。だったら、今はありがたく使わせてもらえばいい。
「それより……」
目の前のユーカリを見る。
「これなら、湯船に使えるじゃない!」
水に強く、腐りにくい木材なら、温泉の湯船にも使えそうだ。何より――。
「もう育ってるんだから、すぐ使える!」
私は幹を軽く叩く。
コンコン。
「うん。しっかりしてる」
これは使える。ペンキも欠品、油もどうやって作るか分からない。そんな状況だったけど。
まさか、こんなところで解決するとは思わなかった。
「……というか」
私は周囲を見る。
「この調子で成長するなら、燃料問題も解決するんじゃ……」
ユーカリは薪としても使える。
しかも成長が異常に早い。
「……」
いや。また考えるのは止めよう。
神様案件を真面目に考えたら、頭がおかしくなりそうだ。
「とりあえず、村長さんに説明しよう!」
私はユーカリの木を見上げる。
「この木なら、湯船に使える」
そして。
「村の人たちにも、ちゃんと説明しないとね」
私は急いで村へ向かった。
◇
「村長さん!」
「おお、ちほさん。どうしたんじゃ?」
「ちょっと見てもらいたいものがあるんです!」
「また何か見つけたのか?」
「はい!」
ちほはユーカリの植林地へ村長さんを案内する。
そして――。
「これが……?」
「ユーカリです」
「……」
村長さんが木を見上げる。
「前に植えたものか?」
「そうです」
「……大きくなりすぎではないか?」
「ですよね!」
私もそこは激しく同意する。
「植えたばかりじゃったよな?」
「はい」
「……」
村長さんが木を見上げる。
「この木は、そんなに早く育つものなのか?」
「本来は……」
私は少し考える。
「こんなに早くは育たないと思います」
「では、なぜ?」
「……分かりません!」
きっぱり答える。
村長さんは少し考えてから、木を触る。
「まあ……育ったのなら、それでよいではないか」
「ですよね!」
やっぱり、この村長さんは話が早い。
「それで、この木を温泉の湯船に使いたいんです」
「湯船に?」
「はい。水に強い木なので、向いていると思います」
村長さんはユーカリを眺める。
「なるほど……」
「これなら、わざわざ地球からペンキを持ってこなくても済みます」
「それは助かるのう」
「ただ、実際に湯船に使って大丈夫かは、木工職人さんに確認してもらった方がいいと思います」
「そうじゃな」
村長さんが頷く。
「では、木工職人に見てもらおう」
「お願いします!」
こうして温泉の湯船問題は、思わぬところから解決へ向かい始めた。
私は帰り道、ふと思う。
「……このユーカリ」
これだけ成長が早いなら。
「他にも使い道、いっぱいありそうね」
私は少しだけ笑った。




