温泉の湯船、その材料をどうする?
温泉小屋の建設は、村の人たちに任せることになった。ただ、一つ問題がある。
湯船だ。
普通の木材を使ってもいいけど、毎日お湯に浸かっていれば、どうしても傷みやすい。
「水に強くて、腐りにくい木材か……」
私は考える。そして、ふと思い出した。
「……ユーカリ?」
いや。
「流石に無理ね」
まだ植えたばかりだ。それに、ユーカリを湯船に使えるほど大きくなるまで待っていたら、何年かかるか分からない。そもそも、ユーカリを温泉のために植えたわけでもない。
「となると……」
私はパソコンで検索する。
水に強い木材。耐腐食。木材を長持ちさせる方法。いろいろ調べていく。
そして、一つの商品が目に入った。
「耐水、耐腐食のペンキ……」
これなら、普通の木材でも表面を保護できそうだ。
「これを持ち込めばいいじゃない」
ただ。
「本当は、こっちの世界で再現できるのが良いんだけど……」
ペンキを地球から持ってくれば、簡単ではある。でも、それでは村の技術として残らない。
今までと同じように、最初のきっかけとして地球の物を持ってくるのはいい。
でも、できれば最終的には、この世界で作れるようになってほしい。
「うーん……」
とりあえず、ペンキが手に入るなら、それで湯船を作ることはできそうだ。
ちほは、バッグの向こうにいるさとるへ声をかける。
「さとるー? いるー?」
「はいはい。何よ?」
「耐水耐腐食ペンキって、在庫あったっけ?」
「んーーー」
さとるが少し考える。
「無いな?」
「そう」
「注文する?」
「しておいてよ!」
「何個?」
「二十個ぐらいかな?」
「そんなに!?」
「温泉小屋で使うんだから、そのくらい必要じゃない?」
「まあ……そうだけど」
「お願い!」
「分かった!」
さとるが注文を進める。
これで一安心――そう思ったのだが。
「姉さん」
「なに?」
「……あー」
嫌な声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
「ネット見る限り、欠品中だって」
「え?」
「次回納品も不明だってよ」
「……」
私はパソコンを見ると確かに在庫なし。
入荷予定未定。
「そうか……」
せっかく見つけたのに。
「欠品中なら仕方ないか……」
無いものは仕方がない。いつ入荷するか分からない物を待っていたら、温泉小屋の建設も進まない。
「さて……」
他の手を考えよう。
「んー……」
木材を腐りにくくする方法。何かあるはず。
私はパソコンで検索を続ける。
すると、いくつか方法が出てきた。
「塗装……防腐剤……乾燥……」
そして。
「オイル……?」
木材にオイルを染み込ませて保護する方法もあるらしい。
「オイルを染み込ませるか」
これなら、ペンキよりも村で再現しやすいかもしれない。
問題は――。
「オイル?」
私は首を傾げる。
「油?」
油なら、この世界にもある。食用油は村でも使っている。でも、木材の防腐に使える油となると話は別だ。
「……油をどうやって手に入れるか」
植物から油を取る?種から油を搾る?
そういえば、油を取れる植物はいろいろある。
菜種。ゴマ。大豆。ヒマワリ。
そして――。
「……」
私は考え込む。
「この世界で、油を作る方法から考えた方がいいのかも」
温泉の湯船を作るだけだったはずなのに。
また新しい問題が出てきた。
「うーん……」
ちほはパソコンを眺めながら考える。
そして――。
「……」
「ぐー……」
「……」
気がつけば、眠っていた。
「……はっ!」
目が覚める。
「寝てた……」
どうやら考えすぎたらしい。
「今日はもういいか……」
温泉に入って疲れを取ったはずなのに。
新しい問題を考えていたら、また疲れてしまった。
「油のことは、明日考えよう……」
ちほは布団に入る。
「……明日になれば、何か思いつくでしょ」
そう呟いて、目を閉じた。




