温泉の浴槽を作ろう
「さて……」
私は手押し台車を持って、川へ向かっていた。
目的は――石。温泉の浴槽を作るためだ。
川に到着すると、さっそく周囲を見渡す。
「うむ。沢山ある」
大小さまざまな石が、川岸に転がっている。
「これなら何とかなりそうね」
浴槽の底や周囲に敷くため、手頃な大きさの石を選んでいく。
「これはちょっと大きすぎるかな」
もう少し小さいもの。
「これは使えそう」
一つ拾って、台車へ。また一つ。さらに一つ。
「……」
しばらくして、台車を見る。
「こりゃー、何往復もしないとダメか」
思っていた以上に石が必要になりそうだ。
でも――
「まあ、温泉のためだしね」
私は台車を引いて、温泉予定地へ戻る。
石を降ろしたら、また川へ。
そしてまた石を積む。何往復しただろうか。
「ふぅ……」
さすがに疲れてきた。
でも、頭の中には完成した露天風呂が浮かんでいる。
温泉が湧いている。薪を燃やす必要もない。
ただ温かいお湯が出てくる。
「薪を使わずに、温かい水を得られる……」
これは大きい。この世界では、温かい水を得るためには基本的に薪が必要だ。
だからこそ、私は燃料問題を考えてユーカリまで持ち込んだ。そして鉄も探した。
鉄釜を作って、お湯を沸かすつもりだった。
「それなのに……」
鉄は見つからなかった。
代わりに見つかったのが――
「温泉!」
まさかの展開だった。
「いや、本当に何が起こるか分からないわね」
私は苦笑する。
でも、温泉があるなら利用しない手はない。
「まずは、私のお風呂にしよう!」
村全体のお風呂にするには、まだまだ考えることがある。浴槽。排水。安全。湯の流し方。
それに、たくさんの人が使うなら、もっと大きな設備も必要になる。
「だから最初は……」
私は運んできた石を見る。
「ちほ専用の露天風呂!」
まずは自分が入れる程度の大きさでいい。
実際に使ってみて、問題があれば改良する。
それから村の人たちにも使えるようにすればいい。
「よし!」
私は再び台車を持つ。
「もう一往復!」
川へ向かって歩き出す。
温泉に入るためなら、このくらい頑張れる。
「……でも、石って重いのよね」
私は苦笑しながら、また川へ向かった。




