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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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温泉、どうやってお風呂にする?

「お目当ての鉄は出なかったけど……」


私は温泉が湧き出ている場所を眺める。


「当初の目的のお風呂には、近づいたのか?」


鉄を探していたはずなのに、まさか温泉が見つかるとは思わなかった。

私はもう一度、湧き出ているお湯を確認する。

泥水のような色をしている。


「うむ……色はちょっと気になるけど」


手を入れてみる。


「湯加減はちょうど良い……」


鑑定では温度は42℃。

これなら、そのまま入れそうだ。


「でも……」


問題がある。


「温泉……露天はどうやって作るんだ!?」


今あるのは、地面から温かい水が出ているだけ。このままでは、ただの水たまりだ。


「いや……源泉なんだから、パイプを差し込むのか?」


そこから湯を引けばいいのだろうか。

でも、浴槽は?石を積む?木で作る?排水は?


「……分からない」


私は腕を組む。


「一度、小屋に戻ってネットで調べるか」


◇


小屋へ戻り、さっそく調べてみる。

温泉。露天風呂。源泉。

いろいろな画像や作り方を見ていく。


「ふむふむ……」


本格的な温泉施設を作るとなると、かなり大掛かりだ。配管。浴槽。排水。湯温の調整。


「うーん……」


今の村で、いきなりそこまでやるのは難しい。

でも――


「簡単な方法は……」


ある程度地面を掘る。

そして、その中に石を敷き詰める。


「これなら、できそうね」


石なら、この近くの川にたくさんある。


「川へ行けば、石はたくさん拾えるから……」


そこから運んできて、浴槽になる部分に敷き詰めればいい。


「うむ。そうするか」


最初から立派な温泉施設を作る必要はない。

まずは、温泉に入れる場所を作る。

使ってみて問題があれば、その都度改良すればいい。


「よし!」


これで、お風呂計画が一歩前進した。


……ただ。


「しかし……」


私はふと、別の場所を見る。

そこには、先日植えたばかりのユーカリ。


「温泉が出るなら、ユーカリ植える必要なかったじゃない!」


薪でお湯を沸かす必要がなくなった。

あれだけ燃料問題を考えて、ユーカリまで植えたのに。


「まあ……」


せっかく植えたんだし。


「何か他に使えないかしら?」


私はパソコンで調べてみる。

ユーカリの利用方法。


葉。


「アロマ……精油?」


香りを利用できるらしい。


「へえ……」


さらに調べる。木材としての利用方法もある。

耐久性が高く、腐食や水にも比較的強い種類もあるようだ。


「なるほど……」


私は考える。


「なら、良いわね」


温泉ができる頃には、ユーカリも大きくなっている。


「大きくなったら、温泉施設に使えるかもしれない」


浴場の建物。休憩所。木製の備品。

それに――


「アロマも一緒に使えるね」


温泉に入って、ユーカリの香りを楽しむ。


「なんか、それっぽい!」


最初は燃料にするつもりだったユーカリ。

まさか温泉施設の材料になるとは。


「まあ、無駄にはならなかったってことで!」


私は満足してパソコンを閉じた。

温泉も見つかった。ユーカリも育てている。

あとは――


「お風呂を作るだけね!」


そう思ったところで、ふと気づく。


「……川から石を運ぶの、大変そうだな」


まだまだ、やることは残っていた。

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