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『異世界に行ったら、鞄の中が実家の商店でした』  作者: 稔


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鉄を探していたら温泉が出た!?

「さて……」


小屋に戻った私は、さっそくさとるを呼び出した。


「さとるー!」


「なにー?」


「鶴嘴を持ってきて!」


「鶴嘴?」


「そう。ちょっと掘りたい場所があるの」


「分かった!」


しばらくして、さとるが鶴嘴を持ってきた。


「はい。これでいい?」


「ありがと!」


私は受け取ろうとして――


「……あれ?」


鞄の入口を見る。


「入らない」


鶴嘴は長い柄が付いている。

そのままでは鞄の入口を通らない。


「姉さん、どうする?」


「うーむ……」


少し考える。


「鉄の部分と柄を外せばいいんじゃない?」


「なるほど」


鶴嘴の鉄部分と木の柄を外して、それぞれ鞄へ入れてもらう。

こちら側で受け取って組み立てればいい。


「よし。これならいける!これで準備完了!」


私は手押し台車にスコップと鶴嘴を積み込む。

これも一輪車を作ってもらって本当に良かった。以前なら全部背負って歩いていたところだ。


「さて……」


昨日、ダウジングが反応した場所へ向かう。

目印を付けてあるので、迷うことはない。


「ここね」


台車を止めそして、さっそくスコップを手に取った。


「掘ってみますか!」


ざくっ。ざくっ。


「んー……」


掘った土を見る。


「どう見ても土よね……」


私が見ても鉄鉱石には見えない。

砂鉄みたいに黒くもない。


「もっと深く掘るってことかしら?」


ダウジングは確かに反応した。

ならば、何かが下にあるはず。


「よし、もう少し掘ってみよう」


ざくっ。ざくっ。


さらに土を掘っていく。

しばらくすると――


「ん?」


土の色が少し変わった。


「……なんだろう?」


さっきまでの土より、少し湿っている。

スコップを入れる。


「……なんか、土が湿ってない?」


掘った土を手に取る。


「水かな?」


もう少し掘ってみる。


ざくっ。すると――


「ん?」


ふわっと、何かの匂いがした。


「……この匂い」


私は鼻を近づける。


「どこかで嗅いだことがある……」


何だろう。土の匂いとは少し違う。私は湿った土を手で触ってみる。


「……あれ?」


「温かい?」


ひんやりしているはずの土が、ほんのり温かい。


「……え?」


私は固まった。


「ちょっと待って」


この匂い。この温かさ。

まさか――


「そうだ!」


こういう時は、あれを使えばいい。


「鑑定!」


私は湿った地面へ向かって鑑定を使った。

すると――


【温泉】

【泉質:良好】

【温度:42℃】


「…………」


私は表示を見つめる。


「……温泉!?」


思わず声が大きくなる。


「ちょ!? 何で!?」


私は掘った穴を見る。

まだ、そんなに深くない。


「何でそんな深く掘ってないのに温泉掘り当てるのよ!?」


ダウジングを見る。

そして、もう一度地面を見る。


「いやいやいや……」


そもそも目的は鉄だった。鉄鉱石を探すために、ミカミさんから神具を借りたはずだ。

それなのに――


「鉄はどうした!?」


私は空を見上げる。

もちろん、答えてくれる人はいない。

ただ、足元からはほんのり温かい水が染み出していた。


「……温泉かぁ」


さっきまで鉄のことしか考えていなかったのに。今では頭の中が、完全にお風呂のことでいっぱいになっていた。


「……これ、もしかして」


お風呂計画。思っていたより、ずっと早く進むかもしれない。

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