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Scene.5 二手

 基地内を巡り、隊員を探す。トレーニングルームに入り、五十嵐さんを探すも見当たらない。


「だ〜れをお探し〜かな?」


 聞き覚えのある声に振り返ると、そこに星澤さんが腕を組んでひょうひょうと立っていた。


「星澤さん、あの日以来ですね」


「そ〜だね。僕もこ〜見えて、結構〜忙しい身で〜ね」


「そうなんですね。あの日はありがとうございました」


「気にするこ〜とはな〜いよ。僕も任務〜で訪れてた〜だけだ〜から」


「新しい任務で、隊員を探しているんです。昼間は五十嵐さんがここにいたんですが」


「なるほ〜ど、ちょ〜っと待って〜ね」


 そういうと、星澤さんは膝をついて座る。次の瞬間、彼の首はガクとなり、死んでいるようだった。


 ほんの1、2分の出来事だった。バッと顔を上げた彼はにこりと微笑み、まるでマリオネットのように立ち上がる。


「五十嵐く〜ん、柊く〜ん、山形く〜んは部屋だ〜ね。狐火く〜んはいつも〜の時計台〜の上、九条く〜んは、すぐそこ〜の路地裏〜にいた〜ね」


「あ、ありがとうございます」


「急ぐ〜といい〜よ。東山〜氏の霊障〜は、他〜の霊障〜を取り込ん〜だみた〜いだからね」


「分かりました」


 私は慌てて、隊員を集めた。最後の時計台は本日2度目なこともあり、足がガクガクで、五十嵐さんの肩を借りたほどだった。


「本当に人遣いの荒い組織じゃ」


 ため息をついて肩を落とした狐火さんが何となく目に焼き付いた。


◇◇◇


「どうするや、五十嵐の旦那?」


 私たちは、2つのビルの入り口の前にいた。


「ち……これ以上、的を絞り込めないか」


「仕方なかろう、二手に分かれるぞよ」


「どうする、隊長さんよ?」


 皆が私の指示を待つ。前回の作戦で失敗だらけだったのに、偉そうなこと言えないよ……


 俯いた私の背中を五十嵐さんがパンと叩いた。


「隊長はあんただ、沙庭。自信を持って決めろ。司霊官だってバカじゃない。お前を隊長にした理由はあるだろう」


「は、はい……それじゃ――」


 私は勇気を出して提案する。


「霊力の高い順に……九条さん、狐火さん、新太郎くんが超級・上級・上級でしたよね。この3人で組んでもらえますか。五十嵐さんとこのはさんは私とで」


「まあ、手堅いとこだな」


「皆さん、気を付けてください」


 通信機がない。だから、互いの状況は分からない。そんな中で、私たちは1Fの隅の部屋から順に、霊障の本体を探す。


「こ、この階には、いないみたいです」


「上に行きましょう」


 エレベーターを使おうとするも、ずいぶん前から廃墟のようで、壊れて動かなかった。


(また階段上るの……勘弁してよ)


 ひぃひぃ言いながら、2人の後ろを付いていく。救いは、各階で部屋の確認があるので、上り続けないことだけだった。


「着任早々で、さすがに気の毒だな」


「そ、そうですね、隊長大変そうです」


「す、すいません……足、ひっぱっちゃって……」


「気にするな。それに安心しろ、そろそろ屋上だ」


「え……」


 私の視界の先には、屋上への扉が見えた。やっと階段が終わった。私は少し元気を取り戻した。そして、ガチャリと重い扉が開くと――


「な、何もなさそう――」


「待て! 左に霊障だ!」


「このはさん、危ない!」


 私は咄嗟にこのはさんの前に出る。私の霊力は、その霊障の攻撃を軽く受け止めた。


「あ、ありがとうございます、隊長」


「無事で良かったです」


「畳み掛けるぞ! 柊、援護を! 沙庭はいざって時に取っておけ」


 そう。私のダーツは1日2回しか使えない。今日はすでに1回使っている。残すはあと1回……


 このはさんの銃弾が、霊障を撃ち抜く。だけど、勢いは収まらずに攻撃の手が彼女に迫る。


 私は彼女を庇う。それを何回か繰り返した頃――


「良くやったお前たち」


 霊力がしっかりと乗った斬撃が、霊障に到達する。悲鳴を上げて、上下に霧散する霊障に、私たちは安堵した。


そして、隣のビルの様子を見ると――


「ち……こっちは本命じゃなかったってことか」


 その言葉と同時に下へ向かって、五十嵐さんがすぐさま走り出した。


「こ、ここからだと、あたしも届かないので援護できません」


 向こうのビルでは、新太郎くんが懸命にパチンコを打ち続け、九条さんもマークし続けている。おかしい。私は、狐火さんの姿を探す。


「狐火さん!」


 霊障の前に座り込み、動けないでいる。よく見ると、足に傷があり、立てないようだった。


 彼女を守ろうと必死の2人だったが、隙を突かれて新太郎くんが吹き飛ばされた。彼のカバーで防御に回った九条さん。


 だけど、その状況だと、狐火さんがガラ空き――


『うわぉぉぉぉんっ!』


 雄叫びと共に振り下ろされる巨大な手。間に合って――


 私の投げたダーツは光速で巨大霊障の中心を捉えた。悲鳴を上げて霧散する巨大霊障は、恨めしそうに私を見ていた。


「た、隊長……こんな遠くなのに。凄いです」


「いえ、これしかできませんから……」


 向こうに少し遅れて着いた五十嵐さんが、狐火さんの容体を確認して、私とこのはさんに向けて、大丈夫だと手を振る。


「でも、本当に良かった……」


 この後、脱出の際、五十嵐さんに背負われた狐火さんは、ずっと私を見つめていた。


 基地に着く頃には、もう朝だった。正直、眠い。疲れた。もう司霊官に呼ばれませんように――


「おかえりなさい。沙庭隊長、司霊官がお呼びです」

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