第94話 女子大で教える男
オレは勤務先病院の付属看護学校で教えている。
面倒なので脳外科の誰もやりたがらない。
だから仕方なしにオレ一人で引き受けている。
看護学校は3年制の専門学校だが、4年制大学にも看護学科があって、そちらでも看護師の資格をとることができる。
ある日の事。
脳外科の同僚の1人が女子大のアルバイトの話を持ってきた。
看護学校と同じように脳外科分野について学生に授業をするというものだ。
「授業に行ってもいいと思う人はいるかな?」
「はいっ!」
「はいっ!」
レジデントどもが一斉に手を上げた。
「ちょっと待て。オレが看護学校の授業で苦労しているというのに」
「……」
「お前ら、女子大と聞いた途端にヤル気を出すとはどういうことだ!」
オレは憤懣やる方なかった。
「えっ? 先生の手も上がっていますけど」
そうレジデントに指摘されたオレは自分の右手をみた。
なんと高々と上がっていたのだ。
というわけで、少ない時間だが公平に皆で1回ずつ授業に行くことになった。
年甲斐もなく胸をときめかせてオレは女子大に向かった。
が、そこにあるのは道路に面した単なるビル。
緑の芝生とかチャペルとかシスターとか。
そういう女子大の必須アイテムが全く見当たらない。
オレの女子大幻想はガラガラと音を立てて崩れた。
学生の方も頭の中でイメージしていた女子大生とは全く違う。
単にそこら辺のネーチャンを寄せ集めました、という感じだった。
ワクワクしながら授業に臨んだオレの気持ちはどうしてくれるんだ!
レジデント連中も同じように期待を裏切られたのだろう。
翌年から女子大と聞いても誰一人手を上げなくなった。




