29 今後の対応
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姫に詰め寄られて結局俺は、これから起こり得る出来事について白状してしまった。
産まれるであろう子供を旗印に、今後反乱を起こす可能性についてもな。
「成程、お話はよく分かりました。ですが、今のところ確証は無いのですよね?」
「ええまあ、それはそうなんですが」
根拠は前世の記憶だって言っても信じてはもらえないだろうし、今のところは、な。
なので俺は後ろを振り返り、平伏したまま不安そうに俺達を見上げていた女官に声を掛ける。
「君は、何か気付いていたんじゃないか?」
「は、はい......も、申し訳ございません。ご懐妊については全く気付いてはおりませんでした」
「おや、そうかい。ま、上手いこと隠しておられたのかな」
「いえ、で、ですが今にして思えば、ご気分が優れないと仰られたり、お食事の好みがお変わりになったりとかはございました。ですので、もしかしたら.......」
「うーん、ご懐妊の兆候はございますかしらね?」
今のところは状況証拠のみか。
だが、咸陽に戻ってからにはなるが、もう一つ出来ることがある。
「此度の遷居は、咸陽におわすことが凶であるとのト占によるものだと伺っております。ですのでその占者に袖の下が渡されていないかを確認する必要があるかと」
「成程、その手がございますわね。流石は通古様。じゃあそれはこちらで調べておきましょう.......吼、聞いていたわね?」
「御意」
「え?.....うおっ!!吼さん....いつの間に??」
いやホント、いつの間に??
気付けば護衛の吼さんが、姫のすぐ傍にひかえていた。
姫といい吼さんといい、どうしてこう神出鬼没なんだろう?
心臓に悪いから止めてくれないかな.......
「吼は気配を消すのが上手いのです。私も少し習ったのですが」
「ああ、それで姫様は今日も突然現れたのですね?私の不注意のせいばかりではなく?」
そう言うと姫は微笑みながら少し屈み(姫は俺より少し背が高い)、軽く睨むように上目遣いに見上げてくる。
「そういうことです。ですから通古様が誰か他の女を泣かせたりしたら、私にはすぐに分かるのですよ?」
「え?」
言葉の意味を問う前に、姫はくるりとふり向いて吼さんへ命令を下す。
「それじゃあ吼、先程通古様が仰っていた件の占者について調べておいて。言質が取れればなお良いわね。」
「御意」
と、拝命する吼さん。
「それと通古様、この子は今から私達が連れて帰ります。ほとぼりが冷めるまでは私の屋敷で働いてもらいましょう。あなたもそれでいいわね?」
「ひ、姫様の!仰せのままに!」
少々テンパりながらも了承する女官。
よし、彼女の身の安全はこれで何とかなるな。
ホッとしたところへ、再び姫が俺の方を向く。
真面目な顔、仕事のできる人間の顔だ。
「通古様、この件についての対応は私がお預かりします。貴方はまず、太后殿下を無事に雍までお送りすることにご専念下さいましね?」
「あ、はい、承知いたしました。......で、姫様には何か伝手というかアテがございますので??」
「ふふっ......それは、内緒です」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おいっ!どこへ行っていた!?こんなシケた村でいつまで待たせるのだ!!」
キレ散らかす嫪毐を適当にあしらいつつ、例の女官が姿を消したことがバレないよう、気分が優れないので別の安車に乗せることにしたと伝えた。
ちなみにその安車には前もって、部下に命じて布で周りを覆わせ、無人であることが分からない様にさせておいた。
それにしてもシケた村とは酷い言いぐさだな。
秦でも有数の頭脳派集団だというのに(苦笑)
長めの休憩を終えて村を出発。
村長を先頭に、皆が見送ってくれる。
「それでは通古様、道中お気を付けて。姫様も会いたがっておられますから、どうかまたお時間を作ってお越し下さい」
「ああ、是非ともそうさせてもらうよ(さっき会ったけどな......)」
こうして「太后殿下御一行様(一名除く)」護衛の旅は続いた。
.......
.....
...
二日後、女官が姿を消したことが判明する。
その時の嫪毐の慌てぶりときたらなかったぜ。
同情する気など微塵も無いが、焦る理由は分かる。
力づくで言うことを聞かせていたあの女官は、逆に言えば嫪毐の弱みを握っているとこと。
目の届く範囲にいるならばまだしも、姿を消したともなれば、いつ何時自分の方が追い詰められるのか分かったもんじゃ無いからな。
「どういうことだ?お前達、一体何をしていた!!」
「何をと申されましても」
「消えた者がいる事にすら気付かぬとは、何のための護衛だ?」
「はて?私どもの任務は、一にも二にも太后殿下をお護りすることだと思っておりますが?むしろ長信侯様こそ、たかが一女官ごときの行方を何故それ程までにお気になされるのです?」
「う......」
言葉に詰まる嫪毐。
泣いていた女官の涙を思い出すと心がざわつくが、言葉を失う嫪毐の顔を見て、何とか溜飲を下げる。
「さあて、何処へ行ったのでしょうね?草の根を分けてでも捜し出し、何があったのか詳しく聴くことにしましょうか?」
「うぐ......も、もうよい。どうせ逃げたしたのだろう。捨て置けい」
「では、そういたします(ニヤリ)」
こうして女官失踪の件はうやむやになり、さらに数日後、俺達は無事に雍へと到着した。
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