22 デート?
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
話がし易いように、少し人の少ない通りを歩く。
「そういえば姫様、既に望遠鏡をお持ちということは、またあの村へ行かれたのですか?」
「いいえ、そうしたかったのですが、あまり頻繁に遠出するのは、両親が良い顔をしないのです。もちろん吼や恋もね」
思わず後ろを振り向くと、恋さんが「当然ですよ」って顔をしている。
ま、そりゃあそうだよな。
「ですから吼に一人で取りに行ってもらいました」
「そういうことですか」
「村の皆さんには、なんだか随分とがっかりさせてしまったみたいですけれど」
「皆、姫の喜ぶ顔が見たかったんですよ」
「ふふ、通古様もお上手ね。でも両親の気持ちも分かりますので仕方ありません。時には我慢もしなければ」
いやいや、いくら護衛を付けてるからといっても、大切な娘をこうやってほっつき歩かせ、あまつさえ外泊まで許可してくれてるんだ。
かなーり甘い親御さんだと思うぜ?
.......
.....
...
「それと私があの村へ足繁く通うことが出来ないのにはもう一つ理由があって、私は馬に乗るのがあまり得意では無いのです」
「え?いやだって、初めてお目にかかった時には、あんなに颯爽と.....」
「いえ、時々乗る分には平気なのですが、あまり頻繁に乗ると腿がつるんです。それに、お尻も痛くなりますし.....ってあら私ったら、はしたないわね」
バツが悪そうにペロッと舌を出す。
え?........可愛い..........
再び殺気を感じて後ろを向く。
はい、恋さんが睨んでますー(怖)
「どうされました?.....あぁもしかして、恋のことがが気になりますの?」
「いや大丈夫です(汗)......本当に大丈夫です(汗汗)」
いや勿論、気にはなってます。
姫のご想像とは別の意味で(怖)
「恋は駄目ですよ、もう相手がおりますから。吼が怒りますよ」
「あぁ、お二人はそういう......」
「ち、違いますよっ!」
背後から恋さんの焦った様な声が聞こえた。
.......
.....
...
「ちなみに姫様は、市場へ何かをお探しに?」
「ええ、半年も経ちましてお父上のお許しも出ましたので、近々あの村へ行こうと思いまして。つきましては皆さんへのお土産でも購おうかと。お塩とか甘い物などが喜ばれるんです」
「姫様がわざわざ?誰か使いの者にお任せになれば良いのに」
「ふふっ、ついでに何か変わった物でもないかと思いまして。七ヶ国のうちで一番西に位置するためでしょうか、秦の市場には、西域の物もごく稀に出回ることがあるんですよ」
ほう.......じゃあ子沙の為にワインか、それこそせめて葡萄の種でも手に入らないものだろうか?
いやそんなことより、姫がまたあの村へ行かれるのならば必要な物があるな。
「姫様、ついでに良い馬具も探してみてはいかがです?鞍とか、あ.....」
そこまで話してふと気付く。
この時代にもう鐙は存在したのだろうか?
「あぶみ.....ですか?......すみません不勉強にて存じませんわ。恋はどう?」
振り返って恋さんにそう尋ねる姫。
彼女は呆れたように顔を横に振って否定する。
「お屋敷で姫様以上に竹簡を読んでおられる方はいらっしゃいませんよ。その姫様がご存知無いのなら、吼は勿論、旦那様ですらも初耳かと」
「そう.....」
へえ.....姫ってインテリなんだな......
思わずまじまじと姫の顔を見つめる。
童顔で、それでいて何処かしら大人びた知性を感じさせる。
読書家であるが故のその落ち着いた顔立ちに、俺は小学校の時の先生を思い出した。
.....と、その顔が不意に赤くなった。
慌てた様に前を向く姫。
おや?
「そ、それで通古様!『あぶみ』とは一体何なのでしょうかっ!?」
「え?.....ええ、馬具の一種で、こういう形で.....」
往来から少しずれ、地面に石ころを使って簡単な絵を描く。
さっきの姫の声、若干尖ってたな。
.......え?もしかして......怒ってる?
何かヤバい事言ったか俺??
「まぁこんな感じで鞍から馬の両側へ丈夫な紐で垂らしておいて、ここへ足を乗せるんです。単なる輪っかでも良いんですが、『舌』と言いまして、こういう板状の靴を乗せられる部分を付けておくと足が楽ですよ。この鐙があれば、腿で締め付けなくても体の均衡を保ち易いので、長時間馬に乗っていても疲れ難いですし」
俺の説明を黙って聞いていた姫が感嘆の声を上げる。
「......凄いわ。このことを村で話して、実際に作って頂きましょう」
「それは良いですね。村の連中も姫様の為に何かすること自体が喜びですからね。ひょっとすると、この案こそが良いお土産になるかもしれませんよ」
「うふふ、案外そうかもしれませんわね」
興奮する姫の声には、もう先程の刺々しさは無い。
ご機嫌は治ったかな?
よし、それじゃあもう一つ前世の記憶をサービスだ。
俺は地面に「舌長鐙」の絵を描く。
「作る上では重量配分が少し難しいかもしれませんが、この鐙もオススメです。足を乗せるだけで輪っかに通さないので、本当に万が一ですが、落馬しても足が引っかかって引き摺られる恐れもございませんし」
「凄い!凄いわ!」
少女の様にはしゃぎ出す姫。
何だかほっこりするな。
と、安堵していたら、今度は背後からの不機嫌な声。
「あの姫様、通古様に一言申し上げてよろしいでしょうか?」
「え?ど、どうしたの恋?」
姫に断りを入れると、そのまま許可も得ずに、俺を怒った顔で睨み付けてくる。
またかよ.......一難去ってまた一難だな(汗)
今度は俺、何をやらかしたんだろう??
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