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李斯転生 勝ち確?それとも絶対の無理ゲー?  作者: 杠煬


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2/8

2 前世の記憶

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。


李斯という男が歴史に姿を現わすのは、古代中国の戦国時代末期のことだ。



当時は楚の国の上蔡で小役人をしており(ちょうど今の俺のことだな)、今日のネズミのエピソードを経て儒家である荀子の門を叩く。

そこでいわゆる帝王学を修め、そして秦の国へ行き出世を重ねることになる。

いきなり秦へ行くのでは無いあたり、「とりあえず東京へ行けばなんとかなる」って考える頭の残念アレな若者よりは多少マシかもしれない。



ちなみに「帝王学を修め」とは言ったが、実は李斯という男コイツ、まだ学業の途中で秦へ行っちまったんじゃないかと疑っている。



なにせ秦へ行く前に、師である荀子に対して「秦が天下統一をしようとしている今、手をこまねいて何もしない奴はバカだと思う(超意訳)」みたいなことを言っているからだ。

ひねくれた見方をすれば、ただ勝ち馬に乗り遅れまいと(あせ)って、学業半ばで師の元を去ったようにも思えるんだ。



ついでに言うと、この時期、荀子の同門にあの「韓非」がいたのも理由の1つだろう。

上には上がいるっていうことが分かり、それならばいっそ「拙速をたっとぶ」とばかりに早く世に出ようとしたのかもしれない。



優秀であったのは間違い無い筈なんだが、どうしても目端(めはし)()小賢(こざか)しい男っていう印象が(ぬぐ)えないんだよなぁ。



.......

.....

...



秦へ向かった李斯(おれ)はまず、あの「奇貨居くべし」で有名な呂不韋の食客となる。



秦王政との権力争いに敗れた呂不韋が失脚した後も、李斯(コイツ)は順調に出世を重ねていく。

ちなみに、その過程で自らのライバルになり得る「韓非」を謀殺しているのはいただけない。

秦帝国の法治体制を盤石なものにするには、韓非の存在とその才能は必要不可欠だった筈なんだ。



そういうとこ、やっぱ李斯(コイツ)って狭量だと思うんだよな。



んで、天下を統一した秦王政は「始皇帝」となり、李斯は重臣の一人として史上初(俺はそう思っている)の中央集権国家を造り上げる。

法の強化整備、文字や度量衡その他の統一、そして悪名高い「焚書坑儒」などを行い、ついには秦帝国の丞相にまで登り詰めるんだ。



言わば「位人臣を極め」たわけだが、それでも好事魔多し、「満ちた月は欠ける」しかなく、始皇帝の崩御をきっかけにその人生は暗転し始める。



始皇帝の身の回りを世話する宦官であった「趙高」の計略にのり、暗愚な始皇帝の末子「胡亥」を二世皇帝に即位させてしまう。

これが李斯という男の運の尽きだ。



宦官、つまり去勢された者達はその特(別な)性により、女性ばかりの後宮(ハーレム)の管理を任され、いつしか孤独なトップが気軽にその信を任せられる身近な存在となる。

そうなるとその献身に対して、何かしらの形で報いたくなるのが人情ってもんだ。

その最悪のパターンってのが、寵愛を笠に着た「権力の委譲」ってやつ。

その結果、正常な政治機関(システム)が阻害されてトラブルが噴出し、国は崩壊し始める。



この場合も同じことが起こった。



自らを律することのできた始皇帝ならばともかく、世間を、そして苦労を知らぬ二世皇帝(ボンボン)

彼は幼い頃から身近な存在であった趙高に容易(たやす)耳目(じもく)(ふさ)がれてしまい、享楽に(ふけ)り出す。

その結果、曲がりなりにも秦帝国の行く末を案じていた李斯(おれ)を遠ざけ、あまつさえ政治のセの字も知らぬ趙高なんて(俺以下の)小者(こもの)が権力を振るうようになる。



当然の帰結として国は乱れ、有名な「陳勝・呉広の乱」をきっかけに秦帝国は崩壊。

項羽と劉邦の覇権争いへとなだれ込む。



その最中、趙高との権力争いに敗れた李斯(おれ)は、謀叛の罪をでっち上げられてしまい、腰斬という、それはそれは残酷な方法で処刑されてしまう。



.......

.....

...



ここまで考えて改めて思うが、ヤベぇな俺!



このままじゃあ、破滅(バット)エンドまっしぐらだ。

知ってるか?

斬首ならともかく(いや、それも全力で拒否したいが)、腰で切断されるってのは、絶命するまで結構長ーいこと苦しむらしいぜ。



うわぁやだやだ!

どうせなら苦しまずに死にたいし、そもそも畳の上で(この時代に畳はないか)寿命が尽きるまで、笑って楽しく長生きしていたい!!



さて、どうしたものか......




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




まず、最初の選択としては、このまま小役人を続けるってのがある。

平々凡々と生きて、天寿を全うしようというわけだ。



だがこれは確実なように見えて、実は最も危険なルートかもしれない。



なぜなら俺が歴史に関わらなかったとしても、秦が天下を統一するのは確実だからだ。

少し前に行われた「合従連衡」すら時代の歩みを(わず)かに遅らせることしか出来ておらず、そもそもこの男(李斯)がトレンドに乗り遅れまいと必死だったように、この頃既に強大な秦という国は他国を一掃出来る程の潜在力を持っていたんだ。



つまりこの後、遅かれ早かれ天下は最後の戦乱に巻き込まれる。

前世に比べて人の命が随分と安く軽い時代だ。

どんな些細なことでゲームオーバーになっちまうのか分かったもんじゃない。

ならば、今後どのようなイベントが起きるか知った上で、トラブルを避けるべく立ち回った方が安全だし確実だろう。



それと、なるべく仲間を作っておいた方が良いな。

さっきも言ったが、まずは韓非だ。

コイツは確実に味方にしておくべきだし、それで彼が自分より出世しようがそれが何だってんだ?

むしろ今の李斯(おれ)の目標は、人生の栄華を極めることじゃない。

エンディングロールが流れるその日まで、とにかく生き抜くことなんだからな。



よし、そうと決まれば早速行動だ。

明日にでも職を辞して荀子の元へ行き、弟子の一人に加えてもらおう。

無論、勉学は大切だがそれより重要なことのために。



まずは韓非を仲間にするぞ!



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