320.密入国?
最後まで付いてきてくれよな!
「……ふむ、目の前の山を越えるのですか」
中央神殿へのお礼参りの道すがら商隊を襲撃し、護衛のプレイヤー含めて皆殺しにしたところで戦利品を確認、その中にあった地図を広げて現在地を確認します。
大陸中央エリアは、以前の北部でのハンネスさんの様な案内もなく、土地勘も全くないので目的地に到着するまで少し時間が掛かりますね。
そもそも私は他のプレイヤー達とは違い、メインシナリオや新コンテンツの解放を目的としてこのゲームをプレイしていないので、どうしても最新の情報やエリアに疎い部分があります。
まさかここまで来るのに、案内が無いとリアルで二週間も掛かるとは思いませんでした。
エリアの解放条件の一つにボスモンスターを倒す事が含まれているのですが、これが一番手間が掛かったと思います。
急所が無くていつもの様に即死させる事が出来なかったり、何らかのギミックを解かなければ無敵であったり、そもそも一人で倒す様に設計されていなかったり……などなど、ちょっとだけ面倒でした。
まぁ、それも今日で終わり……どうやら目の前の山岳を超えれば無事に中央神殿が存在する『神聖開闢都市』に辿り着けるそうです。
「さて、またボス戦でもあるのでしょうかね……」
武器、従魔、回復アイテム、その他諸々の確認を済ませ、やはりボス戦など人外が相手だと途端にリアリティが無くなるというか、仮想現実というよりゲームっぽさが前面に出て来て唆られないと気分を萎えさせながら足を踏み出す。
しかしながらここを越えねば、中央神殿に今まで散々ちょっかいを掛けられたお礼も出来ません。
覚者の意味深な発言、ヒンヌー教祖? でしたっけ? から絞り出した情報も気になります。腹を括って行くしかないでしょう。
「あぁ、トンネルが開通していましたか……」
麓まで歩くと、遠目に整備された関所が見えて来ました。そっと道を外れて遠目に観察できる場所に陣取る。
その規模は関所と呼ぶには大きく、小さな町くらいはあります。耐えず人の波が蠢き、列を成し、最奥にあるトンネルまで少しずつ進んでいる。
恐らくですが、彼らの目的地は『神聖開闢都市』であり、そして順番待ちをする彼らの為に宿泊施設やらが集まって町の様になったのでしょう。
新たにボスモンスターを相手にせずとも良さそうですが、その代わり私があそこを通過できるのかという問題が浮上して来ました。
NPC達はカルマ値に敏感な様ですから、確実に通しては貰えないでしょう。隠蔽や偽装のスキルはありますが、私の数値だと完全には誤魔化せない事が経験則で分かっています。
いつもの様に暴れ回って逃げる様に飛び込むのも有りですが、道がトンネルだというのが懸念点ですね。もしも反対側と連絡できる何かがあれば、即座に出口を封鎖され、トンネルの中に閉じ込められて出られなくなってしまうでしょう。
電話の様な物があると仮定して、私が山一つ分の距離を駆け抜けるよりも早く連絡と指示が終わるはず。やはり強行突破は愚策ですね。
「マリアさんでも連れて来るべきでしたかね」
彼女の荷物に紛れて忍び込む事も――いや、ハンネスさん同様、彼女も同じ陣営でありながら中央神殿に狙われているのでしたか。
「……まぁ、何も正規のルートでなければいけない理由もありませんが」
登山するなり、運び屋を見付けるなり、私の様な混沌陣営が足を運べる様な、何かしら手段があるでしょう。
うーん、ですが、登山ルートだとまたボス戦が始まりそうな予感がしてなりませんね。運び屋は……居るのでしょうか?
隠密行動で隠れたままコソコソとトンネルを進む手もありますが、トンネル内は隠れる場所など無いでしょうし、見付かった場合がまた厄介です。
「皆さんはどう思います?」
従魔達に尋ねてみますが、困った様な思念が送られてくるばかり……使えませんね。
彼らの落ち込んだ思念を軽く無視しながら様々な手を考え、そして――
「――わざと捕まってみますか」
彼ら自身に私を『神聖開闢都市』まで運んで貰いましょう。
町を観察する限り、簡単な収容所などはある様ですが、中央神殿に多額の懸賞金を掛けられている私の身柄をここに置いておくとは思えません。
場所も近い事ですし、きちんとした場所……中央神殿の司法の中心地で裁かれるのではないかと思うのですが、どうなりますかね。
「その場で即処刑となった場合は暴れましょう」
エレンさんに外交して貰って、その使節団に潜り込めればこんな面倒な事を悩まず済んだのですが……後で八つ当たりしましょう。
とりあえず、どうしましょう? 普通に襲って、返り討ちに遭ったと装えば良いのでしょうか?
「――そこで何をしている?」
背後から聞こえた声に振り返る。
「豪華な鎧ですね」
そこには黄金の全身鎧を身に纏った騎士が三人も立っていました。
一応隠密スキルを発動していた筈なのに見破れ、更にはここまで近付かれるまで誰も気付かなかった事から、彼らの実力が窺い知れる。
「! コイツ、混沌の使徒!?」
「手配書で見た事があるな」
「コチラ権天使、浄化の必要な魂を発見した」
腰の短刀を引き抜きながら、自らに言い聞かせる――わざと負けるわざと負けるわざと負けるわざと負けるわざと負ける――
「総員戦闘――」
――ごく自然に、お菓子を摘む様に一番近くに居た男の首を落とす。
「なっ! 天使!?」
あぁ、やってしまいました……けれど、仕方ないですよね? これまでの道中で鬱憤が溜まっていたのに、隙だらけの首を晒されていたのですから。
「まぁ、あれです、ほら……どうせ応援が来るのでしょうから、わざと負けるのはそちらで……摘み食いくらいは良いですよね?」
「何を訳の分からん事を! 死ね!」
殺す気で来られると困ります。捕まえて貰わないといけませんので。
サンタさんへ、Switch2が欲しいです。たけのこより。







