321.抑えられない
コミカライズ版の連載が再開します!
「コチラ第二権天使、加勢する!」
「コチラ第三――」
ほう、援軍が到着するのがお早いですね……まるで巣を突つかれた蜂のようにワラワラと集まって来ています。
皆さん既に武器を抜いており、拘束具なんて物は見当たりません。殺意しか感じませんね。
試しに先ほど首を刎ねた……えっーと、えんじぇるさん? の頭を掲げてみると殺気が一気に膨れ上がりました。
「貴様ッ!!」
生首の上官さん、隊を率いていたおじ様が怒って上空から急降下して来るのに合わせて生首を放り投げる。
「なっ!?」
なるほど、コチラの死生観でも遺体を大事にする様ですね。
もはや口を開く事もない部下の生首を受け止めようと、大きな隙が生じました。
「――《影刀》」
影山さんを纏わせ、間合いを伸ばした大太刀で生首ごと最初の隊長さんを、股下からバツンと真っ二つに斬り上げる。
「……ふむ? 手応えが妙ですね」
切り裂く際に、鎧やマントに引っ掛かりを覚えました。
ただ防御があるだけではなく、もっと別のなにか――
「――あぁ、なるほど、私と同じですか」
完全な死角から放った武雄さんの眷属の攻撃を、マントに引っ張られる様にして躱した者を横目に全てを理解しました。
「あなた方も魔纏っているのですね」
あれは鎧の防御力が高かったのではなく、本体とは別のHPを減らした感覚だったのでしょう。
「貴様が身に纏う不浄のアンデッドと一緒にするな!」
「我らに加護を与えているのは英霊である!」
「はぁ……」
違いは分かりませんが、ともかく彼らも意思とHPが存在する武具を身に纏っていると考えて良いでしょう。
私はこのゲームの、ゲーム的な要素について詳しくない自覚があります。ならばアンデッドと呼ばれる存在以外に、似たような物が存在していたとしても納得するしかありません。
とにかく、彼らに死角は存在しないという前提で相手をしましょう。
「先ずは降りて来て貰いましょう」
彼らは自らや仲間を天使と呼んでいるように、純白の翼を背負って空を飛んでいます。
対空攻撃手段が無い訳ではありませんが、頭上から見下ろされるのは不愉快なので堕としてしまいましょう。
「では行ってらっしゃい」
糸を括り付けた花子さんを投擲し、上空から見下ろす第四権天使の鎖骨の中心を鎧ごと貫く。
「ガハッ――!?」
即座に念話で指令を出し、花子さんには彼の体内に深く潜り込み、抜け落ちないように肉と内蔵をきちんと掴んで貰う。
そのまま花子さんを介して、モーニングスターの様に人体を縦横無尽に振り回す。
「な、なんっ……!」
「ぐわっ!」
後から合流した武雄さんにも同じ事をして貰い、これで振り回せる人間武器は二つになりました。
ただの鉄球よりも耐久力があり、周囲の人間はまだ生きている仲間を慮ってか弾き飛ばしたり、迎撃するといった行動が取れない様です。
「ち、地上部隊! なんとかしてくれ!」
「任せロ゛ォ゛ッ――?!」
単身で突撃しようとしていた方の脳天へと、遠心力をたっぷり乗せた人間武器を振り下ろす。
衝撃で舌を噛み切り、眼窩と鼻から血を吹き出しながらその場にバタリと倒れて動かなくなりました。
死角を突かずとも、相手が対応できない速度で、慣れない攻撃手法を使えば簡単に仕留める事が出来る。
彼らがこの人間武器に慣れる前に、あるいは吹っ切れる前に堕とせるだけ堕としましょう。
「クソッ! 糸を斬れ!」
「やってる! 想像以上に硬いぞ!」
肉同士が激しくぶつかって潰れ、その内にある骨が砕かれる。
武雄さんや花子さんが離れまいとしがみ付けば付く程に、内蔵に取り返しのつかないダメージが蓄積していく。
糸を切断しようとしても、何本も束ねて強化されたこれを不安定な姿勢から繰り出す斬撃で断てるとは思わない事です。
当然の事ですが、これは武器です。対応する武術スキルで強化できる。
その上束ねた糸の内側には影山さんから伸ばした影を潜ませています。なので安易に近付くと――
「――かヒュっ」
このように、突然吹き出た影によって喉を貫かれるのです。
全方位に視覚があると言っても、やはり意識外からの攻撃は有効なようですね。
不意打ちスキルも乗ったみたいですので即死でしょう。
「魔法は!?」
「糸が細くて近付かなければ狙えませ――がぁ!?」
彼らが及び腰になったところで、人間で人間を殴るのではなく、生き残りを絡め取っていく戦術に切り替える。
糸でぐるぐる巻きにし、影山さんに貫いて貰って固定した彼らを、さらに巻いて一塊にして地上の部隊へと叩き付ける。
「か、回避ッー!!」
実は武雄さんと花子さんには役割がもう一つありました。
それは体内に爆薬を運び込む事です。収納スキルを覚えさせた二匹は、卵管を通して人間の体内に爆薬を埋め込む事が出来ます。
そして全ての役割を終えた二匹を、影山さんの『影転移』で回収する。
そうする事で何が起こるのか――
「どっかーん」
内側から爆発し、肉片や骨を撒き散らしながら地上で咲く特大花火の完成という訳です。
「……あぁ、そういえばわざと捕まるんでしたね」
血の匂いが漂う場でふと本来の目的を思い出す。
生き残りは居ないかと辺りを見渡してみますが、それらしき人影はありません。
「さて、どうしましょうか?」
「貴様、これはいったい……」
「おや?」
ふと見上げれば、また新しい天使さん。
「コチラ主天使、下級天使達が全滅している。至急応援求む」
主天使――九つある天使の階級の中では第四位であり、中級天使の中で一番位の高い天使でしたか。
なるほど、後ろの二人は力天使と能天使といったところですか。
それぞれ上級、中級、下級の中で一番位の高い天使が隊長として、同じ階級の他二人の天使を従えているといった感じでしょうか。
つまるところ、新しく現れた天使さんは先ほどの彼らよりも楽しめると……そう考えても良いのでしょうか。
「聞きしに勝る力だな……応援が集まるまで引き撃ちだ。倒されないようにこの場に留める」
「「了解」」
えー、あー、どうしましょう。わざと捕まらなければいけないのに、私は既に『彼らを全員倒せば上級天使が来るのでは』と考えてしまっています。
「あー、うーん」
「何を唸っている……?」
「仕方ありません、予定変更です。今日は彼らで思う存分遊ぶ事にしましょう」
ゲームの中でまで我慢なんてしなくても良いですし、気紛れに行動しても全く困りませんよね。
「さぁ、出来るだけ大きな悲鳴を上げて、お仲間を沢山呼んで下さいね?」
次はどんな壊し方を、追い詰め方を試してみましょうか。







