ドライブシュート
インセクト・レオ(鎌翅豹)を華麗なリフティング技術だけで無力化し、原始の森を抜けた兼彦。南へ向かう街道の途中、冒険者たちが中継地として利用する、活気あふれる開拓村へと辿り着いた。
兼彦(50%)「……よし。この森を抜けるのにも結構動いたし、ちょうどお腹が空いたな。何か食べよう」
50%フォルム(知力D)の並みの思考力でそう呟きながら、兼彦は村で一番繁盛している食堂『剛腕の胃袋亭』へと入った。
注文したのは、新大陸名物のボリューム満点なスタミナ料理――『厚切り魔獣肉のワイルドハンバーグ』。
運ばれてきたのは、厚さ10センチはあろうかという、ナイフを入れた瞬間に肉汁が鉄板の上で津波のように溢れ出す凄まじいボリュームの塊肉だった。
兼彦(50%)「うお……美味そうだ。いただきます」
兼彦がハンバーグを大きく切り分け、口の中へと放り込む。
その瞬間、濃厚な魔獣の脂の旨味と、ピリッと辛い新大陸特産のスパイスの刺激が、兼彦の脳天を直撃した。
兼彦(50%)「んんん……ッ!! 美味い!! この島の肉料理、めちゃくちゃクオリティ高いな!」
あまりの美味さにガツガツと肉を平らげていく兼彦。
だが、その時だった。高エネルギーな魔獣肉に含まれる未知の魔力素が、50%フォルムで半分眠っていた兼彦の「知力」の回路に、ほんの一瞬だけ奇跡的な刺激を与えた。
ピコン、と頭の中でシステム音が小さく響く。
50%の脳メモリが一時的に100%側へ引っ張られ、彼の瞳が一瞬だけ、冷徹で鋭い超天才(知力SS)の輝きを帯びた。
兼彦*(……演算開始。今食べた肉の脂の粘性、およびスパイスの粒子が口腔内で引き起こす『摩擦係数』を計算。……なるほど。この摩擦の数式を、魔球を蹴る瞬間の『シューズの裏の芝生の噛み合わせ』に応用すれば……摩擦抵抗をゼロにして、スピードSSを維持したまま、さらに鋭角に曲がる新必殺技が構築できるね)*
ただ美味しくハンバーグを食べていただけなのに、脳内で勝手に『超絶ギザギザ・ドライブシュート(新魔球)』の数式を完璧に解き明かしてしまった。
ピコン。
数秒で肉のエネルギーを吸収し終えると、兼彦の目はまたいつもの「通常高校生(知力D)」へと戻った。
兼彦(50%)「ふぅ、美味しかった。なんか今、一瞬だけプライベートジェットのコックピットにいるみたいに頭が良くなって、サッカーのすごいシュートのキレをひらめいた気がするけど……まあいっか。お腹いっぱいになったし、またお散歩を続けよう」
アタッシュケース(白金貨5000枚)を抱えて南へ向かっている瑛人たちとの合流まで、あと7日。
まだ誰も知らない、そしてクラスメイトの誰とも会っていない孤独な旅。しかし、極上の肉料理でスタミナを100%に蓄え、新必殺技のイメージまで掴んだ兼彦は、再びサッカーボールをポフポフと蹴りながら、軽快な足取りで最南部の砂浜へと向かって旅を再開するのだった――。




