↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/12

インセクト・レオ

10日後に最南部の『始まりの砂浜』へ辿り着くという瑛人たちの気配を演算し、のんびりと南へ向かって歩き始めた広金兼彦。

彼は今、中央の山脈を越え、鬱蒼と生い茂る原始の森『未開の魔森林(ジュラ・ウッド)』のエリアまで戻ってきていた。

兼彦「……さて、南の砂浜まではまだ距離があるな。ボケたままだと変な方向に歩いていっちゃうし、ここからは【50%フォルム】(オールD)を維持して、効率よく南下しよう」

兼彦が脳内で意識を集中させ、カチリと通常高校生並みの思考力を取り戻す。

いつものように片手でサッカーボールを抱え、巨大な樹木の間をすり抜けるように歩いていると、頭上の太い枝から、不気味な低い唸り声が響いた。

現れたのは、体長3メートル。カマキリのような鋭い鎌の腕を持ち、ヒョウのような俊敏さで動く新大陸の肉食獣『インセクト・レオ(鎌翅豹)』だ。


【野生の魔物:インセクト・レオ】


• パワー:【A】

• 体力:【B】

• スピード:【A】

• 知力:【D】

フレンドリア王国のGランク冒険者なら一瞬でバラバラにされる強敵。

インセクト・レオ「シャァァァッッッ!!!」

魔物は鋭い鎌を振り上げ、頭上から時速100キロを超える神速の飛びかかりを仕掛けてきた。

兼彦(50%)「(スピードA……! 今の僕の50%フォルム(スピードD)じゃ、普通に走って逃げるのは不可能。かと言って、100%の覚醒スイッチを入れると脳の疲労でまた完全なボケ状態に戻っちゃう。……ここは、50%のままテクニックでいなす!)」

兼彦は、襲いかかってくる魔物の着地予測地点へ、抱えていたサッカーボールをポイッと放り投げた。

そして、鋭い鎌の刃が自分の鼻先をかすめる瞬間、ボールの弾みを利用した『極技リフティング・ステップ』を始動した。

ポフッ、と跳ね返ったボールを右足の甲で捉え、そのまま魔物の顔面をなぞるように滑らかなリフティングでボールを頭上へ浮かせる。同時に、自身の身体もボールの動きと完全に同期させ、ダンスを踊るような軽やかなステップで魔物の死角へと回り込んだ。

インセクト・レオ「グルッ!?(獲物が一瞬で視界から消えて困惑する)」

兼彦(50%)「(よし、完全に背後を取った。パワーDの僕の拳じゃあの硬い甲殻は砕けない。だけど、重力と遠心力を利用した『ヒールキック』なら……!)」

兼彦は、落ちてきたボールを、背後を向いたまま左足の踵(かかと)で強烈に蹴り上げた。

パワーD。しかし、リフティングによって極限まで無駄を削ぎ落とされた美しいフォームから放たれたボールは、凄まじいドライブ回転を帯びて、魔物の最も脆い『耳の穴(三半規管)』へと正確に吸い込まれた。

ドカッ!!!

完璧な急所へのヒット。強烈な回転の衝撃を脳内に直接叩き込まれたインセクト・レオは、キチキチと悲鳴を上げながら激しく目を回し、そのまま地面へと大の字にひっくり返って気絶した。

兼彦(50%)「ふぅ。100%を出さなくても、50%のインサイドの技術とリフティングの応用だけで、Aランク級の突進なら無力化できる。……よし、ボールの空気圧も異常なし」

兼彦は、落ちてきたボールを背中でピタッとトラップして再び小脇に抱えると、何事もなかったかのように南への歩みを進めた。

100%の超天才にならずとも、通常の高校生並みのスペック(ALL D)を極限まで使いこなすサッカーの申し子。

彼はこうして、新大陸の凶悪な生態系を「華麗なリフティング一人旅」で優雅に突破しながら、着実に瑛人たちの待つ『始まりの砂浜』へと近づいていくのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。