悪役令嬢を引っこ抜け2
するとまた教室の扉が開く音がした。誰かが入ってきたようだが意外にも私に気づいてくれない。なんで?目立つでしょ?
「あっれー、ないな。机の上に置いたままだと思ったのに」
聞き覚えのある声の独り言。そちらを見ればフィーリアさんが何かを探している。これで助かった!
「フィーリアさん?」
「あ、リュシアさん」
そう言ってからフィーリアさんは固まった。彼女の目線がゆっくり上から下に移動する。
「え?リュシアさん?」
「はい、机に嵌っているリュシアです」
首だけリュシアさんに向けてそう言うとリュシアさんは一瞬きょとんとした顔になった。それから吹き出した。
「え、なんで?なんで嵌って……ふふ、あはは……ごめんなさい……面白っ……ぶふっ」
笑いを抑えようと口を手で抑えているが、面白いと呟いたのは聞こえてしまったからな。
「ホント、なんでそんなことになってるんですか?」
「寮から教室まで最短で移動する方法を思いついて」
「思いついて」
「試してみました」
そう告げるとフィーリアさんは再度吹き出した。
どうしてこんなことになっているのか。これにはそう深くない理由があるのだ。
ここのところ夜更かしが続き、朝ギリギリに起きることが多かったのだ。どうにか学校まで一瞬で移動できる方法はないかと考えた時に思ったのだ。本棚の教科書は一瞬で教室に行けるのにと。
試した結果がこれである。
我ながらどうしようもない理由である。
「フィーリアさん、ちょっと引っ張ってくれない?」
「もちろん。ではお手をどうぞ」
そういって差し出されたフィーリアさんの手を掴む。フィーリアさんはゆっくり手を引っ張ってくれた。始めは控えめに、それから力を込めて。
しかーし私の体は動かない。全然動かない。
やがて体ごと重たい机の方が動きそうになり、フィーリアさんは力を緩めた。
「抜けないねえ」
「もっと力のある人に引っ張って貰ったら抜けないかしら」
「私、助けを呼んでき」
飛び出しそうになるフィーリアさんを慌てて止める。だってこんな姿他の人に見られたら末代までの恥である。できれば穏便に誰にも見られずなんとか引っこ抜かれたい。




