悪役令嬢を引っこ抜け1
「たーすーけーてー」
誰か助けてください。体が抜けない、動けない、机に嵌まってる。
私は今教室の机の天板を開けた収納スペースにがっちり嵌っている。上半身だけ「こんにちは」した状態で。通常であれば教科書を入れると寮の本棚に転送できるあの収納部分にぴっちりと詰まっているのだ。
放課後の教室は誰もいないようだ。前を向いた状態で嵌っているが見たところ人の気配はない。
助けを呼びたい。
でもよく考えて欲しい、この机に嵌っている姿を誰かに見られてしまったらと。貴族の女性として、いや人として終わりなのじゃなかろうか。なので先程から小声で助けを呼んでいる。もちろん助けはない。
「たーすーけー」
「うわぁ、へ?なんなの?!」
今度はもう少し大きな声で、と助けを呼んだ時、重なるようにすぐ傍から声がした。そちらに首を動かせばマルグリットさんが驚いた顔をしていた。
「あ!マルグリットさん。助けてくださ」
「あ、あ、あんた何やってんのよ」
「ちょっと寮から机経由で移動してみたくて」
「へ、何考えてんの、信じられない、貴族女性としてありえない」
「ちょっと引っ張ってくださいなー」
両手を彼女の方へ出すがひょいっと避けられてしまった。
「知らない。私知らないわ」
マルグリットさんは早口でそう捲し立てつつ教室を出ていってしまった。彼女がいた辺りの床に何か落ちている。
「マルグリットさーん、忘れ物ですよー。戻ってきてー」
このまま誰にも助けて貰えず、一生机に詰まって、教室を出られないで何度も何度も学生を繰り返し、永遠に学院から抜け出せずやがて伝説になってしまう。いや伝説というより学院七不思議とかにされてしまう。どうせ嵌まるなら机じゃなくてこたつがよかったな、みかんとおやつと一緒に永遠に嵌っていられる、でも暑い夏とかにこたつは嫌だな。いけないいけない、現実逃避してしまった。




