表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/50

英雄・江川英龍の死②

「越、たい、来てくれたのか。」


 布団から起き上がることもできなくなった兄は、顔だけ向けて義姉と私の名を呼ぶと、ほんのわずか顔を綻ばせた。


 蒼白の顔色、頬はこけ、白髪が増え、髭が伸びた兄を見て私は言葉を失ってしまったが、義姉はそっと英龍の手を取り、

「お元気そうで安心いたしました。」

と微笑んだ。


「そうか、越からも元気に見えるか。やはり越が一番わしのことを分かってくれるな。

自分でも今日は気分が良いと思ったのだ。良かった、これで明日にでも城に行けるな。」


 兄は義姉の嘘を喜んだ。兄が一番欲していた言葉を掛けられる義姉はさすがである。


「とんでもない!!」と叫びそうな医師を私は視線で制し、

「では兄上様、義姉上様、私はお医者様に看病の手順を教わってまいります。義姉上様、兄上様をよろしくお願いいたします。」

と言いおいて部屋を辞し、わずかな時間でも二人だけで過ごせるようにしてほしいと、医師や家臣達に頼んだ。


 

 妻や妹に会えた喜びからか、兄は一時的に回復の兆しを見せた。家の中だけならほんの少しだけ、支えがあれば歩ける程度に。


 大小を腰に差し、背筋を伸ばして毅然と歩く兄の姿を見慣れた者としては複雑だが、これから少しずつ回復してくれればよいと皆が願った。

 今回の病は、働き過ぎの兄に『休め』との神仏のお達しだったのではないのかと。

 これを機に、兄にはもっと自分を大切にしてもらいたい。



 川路様から「何とか無事にロシアと和親条約を結ぶことができた」と便りが届き、手紙を読み終えた兄は「一つ肩の荷が降りた」と笑顔も見せた。


 兄のためにと江戸中の蘭方医が訪れ治療にあたった。兄と旧知の仲の医者だけでなく、幕府や大名家からお抱えの医師が派遣され、交代で診ている。



 その医師の方々も家臣達も、ここ数日の兄の回復ぶりを見て安心していたのだが…。

英龍の病を治すために多くの医師がやってきたり、三嶋大社で神楽を奉納したり、加持祈祷も行われたり…。

英龍を慕う人々も必死でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ