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ディアナ号

 マストが折れ、浸水も激しかったディアナ号は激しい波風に逆らえず、駿河湾の奥の富士郡宮島(ふじぐんみやじま)村沖に至った。

 地元漁民の協力のもと再び戸田を目指そうとしたが、ついに限界を迎え沈没してしまった。

 日本人の漁民達の決死の救助により、乗船員500人の命だけは何とか救うことができた。



 そして急遽、ロシアの代用船を戸田で造ることをプチャーチンから提案されたが戸田には造船、修理などのドックの施設がないため、まずは小型の西洋式帆船を造り迎えの船を呼びに行くこととなった。



 これは西洋式軍艦を国産化するための大きな一歩とみた英龍も、ありがたく技術を教授しようと思った。


 

 設計はロシア側が行うが造船工がいないため、上田寅吉(うえだとらきち)緒明嘉吉(おあけかきち)ら7名の船大工が棟梁に選ばれ造船を先導した。

 

 

 3か月後、この日本人が初めて造った西洋式帆船『ヘダ号』が完成するが、英龍はその姿を見ることが叶わなかった。



 富士の宮島から戸田までの移動を、プチャーチンは陸路を希望して譲らなかった。

 12月の冬の山を、それも地震後間もなく復興していない道のりを、ロシアに最大限配慮して進まなければならない。


 供の望月大象は英龍の顔色の悪さに気づき、しきりに

「休憩を」

と勧めるが、英龍は武士の、官僚の鏡というほど厳格な性格のため、

「お役目第一だ。こんな大変な時に風邪ごときで職務を投げ出して休むなどできぬ。」

と決して承諾しなかった。


 ようやくヘ戸田に到着し、川路の配下に引継ぎを済ませ、地元の名主や廻船問屋に指示を出し、船大工達を集め

「この仕事はこの国の未来を拓く大事な仕事だ。我が国が自力で他国に負けない船を造れるようになるために、そなたらの力を貸してほしい。」

と激励した。


 全てが終わると英龍は倒れるように駕籠に乗り込んだ。もう歩くこともできぬほど、ひどく衰弱しきっていた。

この『ディアナ号沈没』で体調を崩すより前から、晩年の英龍はたびたび体調不良に襲われていて江戸城で倒れたこともあったみたい。


頭に湿布を貼ったり血圧を下げるために血を抜いたり…。激務は確実に英龍の体を蝕んでいました。

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