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本庄茂平次の結末

 遠山が本庄に下した判決は『遠島』であった。


 『遠島』は殺人の主犯ではなく指示されて殺人を実行した者に科せられる無期懲役である。『永蟄居』の鳥居と流刑の釣り合いを取ったかのような判決だった。


 本庄の入獄中に火事が起き、『切り放ち(罪人の命を守るため一時的に解放すること)』が行われ、3日以内に戻ってきた囚人は罪一等減刑される習わし通り、本庄も減刑され最終的な判決は『中追放』となった。

 

 弘化3年8月6日、午前2時という人々が寝静まっている、通常なら有り得ない時間に本庄は罪人用の駕籠に乗せられ『護持院原(ごじいんがはら)』にて解き放たれた。


「…へっ、遠山の奴、何だかんだ言っても結局大した判決じゃなかったな。俺を人目にさらせないからこんな時間にしたようだが…。命さえあればこっちのもんだ。どうとでも生き延びてやる。」

 

 よろよろと歩き始めた本庄の前に、暗闇の中から二人の白装束の武士が姿を現し、刀を投げ渡してきた。


「熊倉伝十郎だ!本庄茂平次、父・伝之丞と伯父・井上伝兵衛の仇、今こそ取らせてもらう!」

「直心影流、小松典善(こまつてんぜん)である!井上先生の仇、覚悟せよ!」

「!」


 

 良く晴れたその日、朝から江戸の町は歓喜に溢れていた。

 瓦版屋が威勢のいい声で、


「『仇討ち』だ!護持院原で仇討ちだ!剣術家・井上伝兵衛が殺されてから苦節8年、『妖怪(妖甲斐)・鳥居耀蔵』の手下、本庄茂平次を討ったのは甥の熊倉伝十郎と弟子の小松典善だ!南町奉行、遠山様の名裁きだ~~~っ!!」


 外国船が頻出する恐怖や、鳥居の厳しい取り締まりによって隠隠滅滅(いんいんめつめつ)の様相だった江戸の町を爽快な話題が駆け巡った。



「ははっそうか!!『仇討ち』か!!遠山、よくやってくれた!!」


 江川の告発の手紙を受け取って以来、ずっと気にしていた事の顛末を小姓の権太泰従から聞いた家慶は、自分でも驚くほど大きな歓声をあげた。

 

 これほど痛快なカタの付け方があったとは!!

 御伽噺(おとぎばなし)を超える壮大な『妖怪退治』に家慶も大満足だった。

 久しく見られなかった家慶の笑顔を見ることができて、主君を敬愛する権太も友人達の活躍に感謝した。


「遠山、よくやってくれた。これからも名裁きを期待しているぞ。」

「…。」


さっさと隠居して悠々自適に暮らす夢はついえましたとさ。

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