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町田が遺した手紙

(おいおい、こんな若造一人だけで大丈夫かい?)


 小柄で痩せ型、色白で眉目秀麗(びもくしゅうれい)な美少年のような青年・柏木総蔵(かしわぎそうぞう)と顔合わせした勝小吉は、不良旗本の見本のような自分のことを棚に上げて不安に思ったが、総蔵は英龍の『秘蔵っ子』である。

 一度教わったことは即座に会得し忘れることがないと評されるほどの秀才で、若くても英龍の右腕として頭角を現していた。

「勝様、まずはもう一度、町田と本庄が住んでいた裏長屋の家主(身元引受人)を訪ねたいのですがよろしいでしょうか?」

「分かった、行こう。」

勝と総蔵、直心影流の数人は下谷山崎町(したややまざきちょう)に向かった。


「悪いが今一度、町田が失踪した日のことをよ〜く思い出してくれねえか?」

「そう言われましても…。「正法寺(しょうほうじ)に墓参りに行く」とか言って出かけたという以上は分かりません。」

「正法寺は何度も調べたんだが…。やはりそれ以上は知らねえか。」

「ん?正法寺?違うよ、本法寺(ほんぽうじ)だよ、確か。」

 勝と家主の会話を聞いて、長屋の住人の老婆が口を挟んできた。

「本法寺?ほんとかね、たきさん?」

「ああそうだよ、確か「昔お世話になった方の墓参りに行く」って、南東の方角に行ったよ。」

「本法寺…。」

 総蔵の目の色が変わった。

 家主も戸惑いを隠せない。

「しかし本法寺は江川様の菩提寺じゃないか。江川様から逃げ回っていたはずの町田様がわざわざ見つかる危険を冒して江川様ゆかりの墓参りに行くのかい?それに町田様の『お世話になった方』といえば…。」

 総蔵を見る家主の目が気まずそうに逸らされた。


「『塔』の周りを探してください。見つけてほしいものならそれほど深くは埋めていないはずです。」

「なあ総蔵、なんで墓じゃなく『塔』なんだ?一体何があるってんだ?」

「何があるかは分かりませんが、何かあるならここだと思います。」

「何の答えにもなってねえな。」

 勝は呆れているが、総蔵にだって何があるかなど分からない。ただ、町田が『お世話になった方』に何かを託すならこの塔だと思った。

 この塔には『ある事件』で亡くなった者達が合葬されている。


「箱がありました!!」

 舎弟の言葉に勝と総蔵の全身の血がざわりと沸き立った。

 何の変哲もない、飾り気のない木地呂漆(きじろうるし)の木箱に油紙で厳重に守られた紙が入れられていた。

 勝が(頼む!何でもいいから手掛かりになるものを書き残していてくれ!)と祈りながら折り畳まれた紙を開く。


 字が巧かったというのは本当らしい。手紙には流麗な字で『白』『黒』という文字と『数字』がひたすら繰り返されている。


「これは…碁の手控えか?」

「碁…?」


 勝のつぶやきに総蔵は答えられない。答えられないほど心の中は激しく動揺していた。

英龍の右腕…柏木総蔵

英龍の左腕…松岡正平

英龍の目… 斎藤弥九郎

      大慶直胤

英龍の頭脳…渡辺崋山

      高野長英

      高島秋帆

      ジョン万次郎

      矢田部郷雲  など


英龍様がガンダムになっちゃう

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