46 大戦1
ただでさえペース遅いのにさらに遅くなるかも
手を組め宣言の後、ナギリ先生は特に何も言わず、授業を再開した。
授業中に乱入されるのも、毎年この行事の定番でもあるため慣れてしまっているのだ。
その代わり遅れた分だけ居残りが待っているため、それを知った新入生がまたガックリとうなだれるのも定番だ。
そんな授業後、クラスメイトだけで作戦会議へと移っていた。
「それでは作戦会議を始めたいと思います。」
フセルは宣言するが、ハッキリ言ってこの会議は無駄である、やることが変わらない以上決める意味も無い。
「でも、正直無駄だね、適度にサボりながら4組の指揮に従うぐらいでしょう?」
「ああ、遺憾ながら」
「そうですよ、あんな上から目線のやつらに…ありえませんわ」
全くその通りだと頷くクラスメイト。
同感だと思いながら、うとうとし始めるシエル。
「まあでも、一応しておきましょう」
そうして説明されたのは凡そ予想の範疇で、大戦中にこっそりみねうち、力を温存して最後に手ひどいしっぺ返し、子供が考える裏切りは凡そそんなものだ、それに4組が考える作戦なら、これ以上は無いだろう。
だからこちらが提案する作戦がもう少し上を行けばいい、1組は更に上の作戦を使ってくるだろう。
だけれど、それは考える必要は無い。
なにせ、『1組の生徒を引き抜く』これは実際設備の交換よりもかなりいい報酬である、将来性を考えるならば。
設備の交換を持ちかけられた2組は当然、設備なんかよりも『1組の生徒を引き抜く』表では設備の交換で納得はするけれど、本命は生徒の引き抜き、つまりこちらも裏切ると安易に予想できてしまう。
実力至上主義の学校であるため、武術剣術の才、魔法の上手さ、知能はクラスの数字が大きくなるほどそれらの能力は下を行く。
簡潔に言ってしまうと、4組と5組は馬鹿だと見下される、そのため、これ以上考える必要は無い。
と、簡単にいけばいい、だからもう1つだけ作戦を立てる、それがこの会議の本題だ。
「私達がやる唯一のクソ真面目な作戦は『水攻め』ですよ」
「「『水攻め』?」」
「『魔女狩り大戦』における選手のリタイア判定の基準は、ぶつけられた魔力量、もしくは気絶により自動的に控え室に戻されるまで、言ってる意味は分かりますか?」
「「「???」」」
「要するに、魔法で水を大量に作っちゃって、こうドパーっと!そして水は魔力で作る、それは魔力の判定、判定が出なかったとしても、気絶により強制リタイア、もうこれしかないでしょ!クソ有効な作戦!」
「「なるほど…」」
ただ、ドパーっとやる時、地形なんかの問題で出来なかったら誰がドパーっとやるの…?
そう思っているとフセルにウィンクされ、自分か…と思うシエル、凡そフセルはこう言いたいのだ。
『出来ないときは結界魔法の中に出してやるからよろしくね』
こういう意味だ。
思わずはぁ~と溜め息が漏れてしまうがそれもしょうがない。
やりすぎずやらなさすぎず、方針が決まった瞬間だった。
会議はそれきりで終わり、帰る者、お喋りする者と別れていった。
シエルはもちろん帰る者、教室を出ようとするとフセルが横にぴたっとついて来る。
この光景も最近では見慣れた光景になっている。
そんな会議とも言えない、話し合いから時間は流れ、とうとうその日がやってきた。
木々が枯れ始め、地に落ち葉が目立つ冬の季節、冷たい風が肌を撫で、思わず腕をさすって温めようとしてしまう。
日本の季節でいうところの12月中旬あたりと言えるだろう。
生徒達が集まるのは各クラスの控え室、生徒全員の胸には、1組は王冠のバッジ、2組はティアラのバッジ、3組は剣と盾を模したバッジ、4組はカウボーイハットのようなバッジ、5組はハートに鎖が巻きついたようなバッジをつけている、このバッジが砕けた時点で失格退場、元の控え室に戻される。
『さぁ、お待たせいたしました!本日晴天!大戦日和!』
実況が喋り出し、会場が熱気に包まれ、大きな歓声が響く。
会場の中心にはそれぞれの学年1〜6年の1〜5組の代表が一人ずつ縦に並んでいる、先頭は6年、最後尾は1年、大戦は学年毎に別々の会場で行われる。
『1年の大戦をご覧になりたい方は第一会場へと、2年は第二へと、3年は第三へと、4年は第四へと、5年は第五へと、6年は第六会場でご覧になれます!まずはその移動時間を設けたいと思います!では、移動してください!』
ワイワイガヤガヤと観客が移動して行く。
10分ほど時間が経過すると、代表が集まる第三会場の人数はかなり減った。
『では、魔女狩り大戦のルールを説明いたします!』
各会場の中央にモニターのような魔法で代表達を写し、司会の声を届けた。
ルールは過度な攻撃の禁止以外には特に無く、リタイア条件などが説明されていった。
全ての説明が終わったあと、司会は
『それでは!魔女狩り大戦!始め!』
各クラスの代表、生徒達が一斉に転移の魔法陣で飛ばされていった。




