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43 手を組んでくれないだろうか!

 存在Xが出てきて、一気に色々と萎えてしまったフセルは、いつも携帯している血液をちゅーちゅーと吸いながらぼけぇ~っと考える。


(存在Xは色々と言ってましたね…ずっと後悔後悔言っていた気もしますけど、一体何を後悔するんでしょう『それは友人としても、同居人としても』と言うのは分かります、だけど『この世界に住む者として、君は絶対に後悔する。』こちらの意味がまったく分かりません……でも、存在Xの言い方だと、きっと、調べたところで何も分からないんでしょうね……なんだかクソめんどくさい事を半端に知ってしまった気分……今吸ってしまえば分かるのかしら?)


 そっとシエルの近くに寄り、首筋を眺める。


(今吸ってしまえば何かを知ることが出来る……本当に?確かに相手の血を吸えば、ある程度記憶なんかを読み取ることが出来なくもない……でも…何故でしょう、シエルちゃんから吸っても知れる気がしない、何故か存在Xの時に吸わないとダメな気がする。)


 あれ?なんでそんな事がわからんでしょう?そんな事を思いながらシエルが目覚めるのを待つことにする。

 数分も眺めていると存在Xの言った通り「んっ…」と声をあげると体を起こした。

 それと同時にフセルの頭の中から存在Xの記憶が急速に失われた、まるで誰かの意志(・・・・・)のように。






「ふぁ…ふぁふ」


 欠伸をし、伸びをすると息を吐き出した、同時に翼もピンと伸びるとその後へなへなっと萎びたナスのように脱力する。

 いつもの眠そうな無表情がいつにも増してぼへーっとしているような気もしなくもない。


 寝ちゃったか…よく寝れた気もするけどどこかぼーっとしてるような…それに気持ち魔力が減っている気もする…4割ぐらいかな?……まぁいっか。


 準備運動するように翼をパタパタと羽ばたかせると、今度は自分が「ん〜っ!んん!」と蹴伸びした。

 体を起こし、立ち上がろうとするが力が入らず、ぺたんとベッドの上で目を擦った、だんだんとハッキリし始めた視界にフセルが写る、制服からは着替えていてちょっとだけじーっと見た。

 見るのをやめ、改めて立とうとするもまだ力が入らず、仕方ないので【ムーブ】の魔法で下半身を補助しながら立った。

 急に動いたことで目が冴えてきたシエルは制服を脱ぎ、翼を引っ込めると自分のクローゼットから適当に服を掴み取った。

 オシャレとかに興味のないシエルはちょっともこっとしたハーフパンツと『惰眠』と書かれた白のTシャツをパパッと着ると、フセルが何かに怒ったように


「なんですかその格好は!」


 と大声を出しながら接近してくる、何が何だかわからないシエルは何もわからずにぼーっとしていると、シエルのクローゼットをフセルは漁り始めた。

 ゴソゴソと1分ほど漁ったのち、押し付けるように服を渡した。


「とにかく!貴方は有翼人であれ令嬢!そんなダサい格好あり得ません!むしろよくそんなクソセンスで出ていこうと思いましたね!クソあり得ません!クソあり得ません!クソあり得ませんわ!」


 ものすっごく怒ってる…うぅ…。


 なんだかこれ以上怒られるのもシエルとしては嫌だった。

 手渡された服を拡げて見てみると、自分は清い乙女だと主張するような真っ白なワンピースだった。

 裾は足首より少し上まであり、肌は首から上と手足しか出ておらず、、長く着れるように配慮されたのか全体的にやったりブカブカとしているが、腰や胸元、手首にリボンの帯が付いている。

 それを着るとブカブカの手首の袖をリボンで蝶々結びした、その間に胸元のリボンの細い帯を前に、腰の太い帯は後ろにフセルによってしっかりと結ばれた。

 全体的にぽわっゆとりのある柔らかいような印象に収まったワンピースの裾を持ち上げ、少しだけくるっと周り、動きやすさを確かめた後、フセルにありがとうと頭を下げた。

 元から素材はいいことが一目でわかるシエルはどこかの姫のようになっていた。


「よし、これで行けますわ!行きましょう!夕食の時間です!」






 寮の食堂に降りると、寮に暮らす生徒たちで溢れかえっていた。

 最底辺の寮ではあるが、食事は決して質素なものではなく、ちょっと高価かな?と庶民が思うぐらいには十分な食事だった。

 メニューは卵のスープ、ドレッシングのかかったキャベツの千切りとミニトマト、コロッケ、バターロールだった。

 どれも普通に美味しく、新入生の不満の声はなかった。


 ていうかこれ、普通に美味しすぎる、見た目こそ地味かもしれないけど、味は負けてない。


 おそらく私と同じことを思っている生徒もいるようだと、シエルは思いながらも食事を終えた。


 その後はいつものように最後にお風呂に入り、ベッドの上に倒れこむと、すぐに寝息をたて始める。






 それから数ヶ月は本当に目立ったイベントは起きなかった。

 授業を受け、魔法の練習をし、クラスメイトとは……仲良くなれず、フセルとのんびり学園生活を送っている。

 だが、やはり何もないということはないのだ。

 そしてそれは唐突に始まる。


 バンッ!と勢いよく開いたクラスの扉から数人の生徒がズカズカと入ってくる。

 要件を理解したらしい担任のナギリはおとなしく場所を開け、黙って見守る姿勢を見せた。

 そして入ってきた生徒は


「我々4組と今度の魔女狩り大戦、手を組んでくれないだろうか!」


 そう言いながら頭を下げた。

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