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41 フセルと存在X 1

 シエルのベッドに歩み寄る影。

 火照った顔は淫靡で、何かに魅せられているのが誰の目にも明らかだろう。

 シエルの足元にはそんか状態になっているフセル。


「はぁ…もう…我慢できない!」

「すぅ〜…」


 バサッ!


 フセルの背中から蝙蝠のような大きな羽が生える。

 爪は少しだけ尖り、伸びた八重歯は口からはみ出ている。

 目は淡く、赤く光り、今のフセルの異常性は誰が見てもすぐにわかるだろう。


「さぁ血を、その白を赤く鮮やかに、その声、場を彩る鈴の音なり、血を啜るは己の本懐なり!」


 フセルはシエルの上にゆっくりと跨り、両手を自分の手で絡めて縫い止める。

 うつ伏せのままのシエルを動かないようにしっかりと押さえつけた。


「【チェインロック】」


 ベッドから伸びた赤黒い鎖がシエルの足に、腕に、腰に、頭に絡みつき、しっかりとベッドに縫い付けた。


「これで、逃げられない!」

「…すぅ……すぅ…」

「【ダウナーエフェクト】」


 赤黒い鎖にシエルの中から魔力が吸われていく。

 フセルはシエルが力がない事を知っている、だから魔力を吸うことにしたのだ。

 やっと吸えるという幸福感に満たされたフセルは前菜を楽しむようにシエルの体を抱きしめながら、首筋に顔を近づけ鼻をスンスンと鳴らしていく。


「すう…むにゃ…すぅ〜…」


 重さを感じているのに本人は起きない、魔力も抜けている、なんとなく嫌悪している感覚なのに。


「【ペインアブソーブ】」


 声と同時にシエルは薄く赤色に発光した。

【ペインアブソーブ】は痛覚を無くす魔法で、吸血鬼なら覚えていて当たり前の魔法。


「あはっ、もう少し♪【ブラッドシャッター】」


 シエルの目元に赤い光が集まり、目隠しのように固定された。

【ブラッドシャッター】は相手の視界を血のような赤色で覆い隠す魔法、これも吸血鬼が好んで使う魔法で、相手の不安を煽るために使う。


「あと一つ♡【フィーリングワールド】」


 シエルの体が少しだけ火照りだす。

【フィーリングワールド】は夜の営みをする人達が(ry

 な魔法である、触覚や痛覚の感覚が倍になる。


【ペインアブソーブ】は相手を辛くしないため。

【ブラッドシャッター】は【フィーリングワールド】との併用で使う、声を聞くため、悲鳴でも、喘ぎでも、それらは血を味わうさえのスパイスとなるから。


「それじゃあいただきまーす♡」

「すぅ〜…」


 ゆっくりと口が開く、唾液が口の中で糸を引き、八重歯を伝って落ちていく。

 近付くにつれ、目の光は淡い光からギラギラと怖い物へと変わっていく。

 瞳孔は縦に開ききり、興奮しているのがよくわかる。


「はぁ…はぁ、はぁ」


 同時に息も上がり、早く噛みたい、吸いたいと欲望が湧き上がる。


「すぅ…すぅ……す」


 シエルの眠りが浅くなった。

 でもまだ起きない。

 その様子に少し警戒したフセルは一瞬顔を離した。


(欲しい、飲みたい、声が聞きたい、美味しいんだろうなぁ、甘くてとろけてしまうかしら?それとも刺激的な味かしら?でも……)


 頭が少しだけ冷え、本当にいいのかと思考が固まるが、でも吸いたいと元の考えに戻ってしまった。


「それじゃあ今度こそ、いただきまーす♪」

「すぅ…………」


 はむっと噛む瞬間、フセルは一気に警戒した。

 シエルからの感じたことのない気配に全身が強張った。

 左目だけが大きく見開かれ、透明だった瞳が、中心の瞳孔に向かって紫、青、赤色の線が渦巻くように向かっていた。

 ブラックホールのようにも見えるその瞳は同時に神秘的にも見える。

 そのシエルの姿は、半分寝てて半分起きている。

 見た目に変化は無かったが、恐怖を感じるには十分だった。

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