39 ウガー!
「……?」
「???……あぁ、大丈夫?ってことね」
「……(コクコク)」
「だ、大丈夫!クソ大丈夫だから!ははっ、あははは…」
「……」
部屋に戻ってきたフセルは少し頬が紅潮しているがシエルは気にしない。
いや、気にしたら負けと割り切っている。
ちょっと表現しずらい表情をしているからだ。
「そそ、そんなことよりお風呂に行きましょう!」
「……(コクコク)」
着替えを持って部屋を出る。
移動中チラチラと首元に視線を感じるながらもシエルはやはり気が付かないふりをする。
ポンチョは脱ぎ捨ててあるが翼は引っ込めてある。
フセルはシエルが有翼人と知っているため、最後の最後で入浴するために遅めの時間に入ることにしている。
浴場で服を脱いでいる間もチラチラと視線を感じるが、今度はちょっとだけ気にしてシエルからもチラチラと視線を向ける。
そろそろ見すぎじゃないかな?
お互いにチラチラと見ていたらいずれ目が合うわけで。
悪戯心を抱いたシエルは口をパクパクと喋ろうとしたり辞めたりをして遊んでいると、フセルはまたも部屋を出て行くときと同じように顔を赤くして今度こそチラチラ見ることは無くなった。
「広くはないですね。」
「……」
「そ、その、お背中を流しっこしませんか?」
「………」
まぁそれぐらいなら…いい…のかな?
「……(コクコク)」
「本当ですか!?」
「……(コク)」
「クソありがとうございます!」
さわさわ…コシコシ…
「痒いところありますか~……じゅるり」
「……(ブンブン)!」
首を横にちょっと勢いをつけて振ってイヤイヤする。
背中をゴシゴシされるもやはり首に視線を感じる。
仕方ないから興味を引くためにとシエルは翼をファサッ!と出す。
「……ほわぁ、始めてみた」
「……」
興味引けてよかった!なんだか危ない気がするからね!
「ねぇ、これはどうやって洗えばいいの?」
「……」
『羽根に添うように手で撫でるように洗ってくれれば大丈夫だよ』と【ダーク】で答えるとすぐに撫でられるようなくすぐったいような気持ちいいような感覚が流れ込んでくる。
けど最近慣れてきたシエルは特に我慢することもなく、暫くされるがままに体を任せる。
「やっぱり翼って敏感なの?」
「………(コクリ)」
長い溜めがあったがそこは気にせずフセルは洗っていく。
お湯をかけられて泡を洗い流すとシエルの正面に移動し
「次……洗って下さい」
「…(コクリ)」
いつもクルトは手洗いだからなぁ…私もそうするべき?タオルとかあるけど……まいっか、手洗い!
シュコシュコ…シャンプーを手に広げてフセルの少しだけ癖の付いてる髪に指を通して泡立てながら梳いていく。
根元から毛先まで泡で包まれたのをうむうむとうなずいてそっと洗い流していく。
やっぱりフセルの髪綺麗だなぁ~。
「……」
「……」
ちょっとピクピクと震えているように見えるけどそこは気にせずに今度は石鹸
スンスンと匂いを嗅いでみるとどこか嗅ぎ覚えのある匂いがするけど気にせず手に広げて今度は手をフセルの体に這わせていく。
「んっ!?……あ…」
「……」
特に気にせず更に這わせていく。
それはもう全身くまなく這わせていって――……。
「ふぅ…全く、クソやりすぎだと思いませんか?」
「……??」
「なんでそんな『え?なんのこと?』とかいう顔してるんです!?しかも微塵も悪いと思ってない!」
おお、すごいよフセル、考えてることわかるなんて!でも……
「…………???」
「なんでそんなクソ真面目に首を傾げてるの!?」
「……(しゅん)」
「うぐっ…悪い意味ではないですから!落ち込まないでください!こっちまでクソ落ち込みます!(本当はあんまり…その…あれは……それにちょっと気持ちよか……)……ウガー!なんなんですの!」
ポンポン……グッ!
シエルは『ドンマイ』と言っているかのように肩を叩いて親指を立てた。
この日、5組の寮には夜遅くまで寮長さんに説教されている新入生の姿が目撃された。




