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37 これで最底辺?

「あんたらの部屋は3階の角部屋だよ…ほれ、これが鍵だ。

 家具は好きな場所に移動してもらって構わないよ。」


 と言いながらおもちゃ箱に使われるような可愛いデザインの鍵を手渡された。

 木造の寮となんか不釣り合いな気もしなくもない。


「ありがとうございます!」

「……(ぺこり)」


 二人はそのまま3階まで階段を登り、角部屋に向かった。

 他の生徒とすれ違うこともあったが、フセルは「今日からよろしくお願いします!」と挨拶をしていた為、特にこれといった問題はない。


「ここだね」

「……」

「他の部屋と特に変わった様子はないみたいだね。」

「……」


 中は大きめの丸机一つとクローゼット、ベッドが各二つずつ置いてある。

 ベッドは以外と柔らかく、倒れこんだとしても優しく受け止めてくれそうな感じがする。

 クローゼットはどこかの寮のお下がりかと思うくらいには古臭い雰囲気が漂っている。

 木の匂いが充満しているが嫌な匂いではなく、どこか落ち着くような心地のいい匂い。


 これで最底辺の扱いなんだ…十分すぎるでしょ…。


 そう思うのも無理は無かった。

 フセルも同じことを思ったようだ。


「他の部屋も少し覗かせてもらいに行きませんか?クソ興味あるんですけど?」

「……(コクコク)」

「じゃあ正面の部屋と隣の部屋を見させてもらいましょう。」

「……!」


 部屋を出てすぐ正面の扉をノックする。

 コンコンとノックすると小さくパタパタと歩いてくる音がし、扉が開くと思ったら


「ご用件はなんでしょうか?」


 と扉が開かずに声がかかった。


 一応警戒はしているんだね。


「いえ、ちょっと部屋の内装をちょこっとだけ見せていただけないかと」

「……はぁ、少しなら構いませんよ。」


 扉がゆっくりと開く。

 すると、ピョコっと特徴的な茶色い犬耳が扉から覗く、それにあわせて女の子の顔が半分だけこちらを見た。

 大丈夫だと確認できたらしく「どうぞ」と一声かけられた。

 お言葉に甘えるように少しだけ中に入って見渡すが、シエルとフセルの部屋と大差ないようだ。


「やっぱりこっちと大差ないね?」

「……(コクコク)!」

「ねえねぇ、これが5組の寮って最初思ったときどう思った?」


 フセルは犬耳の女の子に視線を移しながら聞いた。

 最初質問の意味が分からなさそうに首を傾げたが、やがて理解したらしくうんうんと唸りながら考え始めた。

 ポンっと手を叩くと


「十分すぎて逆に何かあるのかなと思いました。」

「私も同意権です。」


 それからフセルと犬耳少女――トウキ――は適当に喋ったあと、部屋を出た。

 そのままシエルとフセルの部屋の隣の扉をノックして同じように用件を伝えると扉を開けてもらえた。

 こちらも内装は二人の部屋と特に変わらず、トウキの部屋とも大差なかった。

 今度は特におしゃべりすることは無く。そのまま退室して二人は自分達の部屋に戻っていった。


「やっぱりこれぐらいがこの寮の普通なんですね。」

「……」

「1組にもなるとどんな部屋なんでしょう?」


『お菓子食べ放題とか?』と書いて見せたら


「それはそれでなかなかすばらしいですね!クソ興味湧きました!」

「……」


 お菓子食べ放題だったら結構本気で1組目指すんだけどなあ。


『一人一部屋、さらにお風呂付きとか?』と書いてみせる。


「それはそれですばらしいですね、好きなときにお風呂に入れるって言うのはなかなか贅沢ですし!」


 二人は1組の部屋はどんな部屋?と話して行くがただただ興味が湧いていくのだった。


 その夜


「あっ、そろそろヤバいですね。」

「……?」


 フセルはカバンをゴソゴソと漁ると、なにやら中が見えないように黒く加工されたボトルを取り出すと、ストローのような物を指した。

 その瞬間すこしだけ鉄のような匂いが漂う。

 だがフセルがストローをちゅーっと吸うと、フセルの目が元々赤色の瞳だったものが、更に赤くなり、淡く妖しく光った。


「まさか、吸血鬼?」


 シエルは思わず呟いてしまった。

 フセルはその声に口をポカンと開け、シエルを見つめてしまっていた。



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