36 寮長さんは〇〇〇〇
悩みに悩んだ末、筆談で済ますことにした。
『名前:シエル
何か用?』
と書いてみせると
「本当に喋らないんだね。」
「……」
「あーいや、別に悪いとかそういうことじゃないんだけど」
「……?」
「ごめん、少し話してみたかっただけなんだけど…」
「……??」
「…えっと、寮、同じ部屋だね。」
「……?」
「……??あ、本当だよ?寮の部屋も成績順だよ、最底辺の私とシエルちゃんはワースト1、2位だからね。」
「……」
「とりあえず寮に行かない?」
「……(コクコク)」
二人は教室を出る、歩いて歩いて寮に向かう、その間に目立った会話は無く、かなり静かに寮の前にやってきた。
5組の寮は『最低限体調を崩さない程度の環境』の寮となっている、1組になると『最高の環境で優雅に生活できる環境』と扱いにもそれなりに差が出ている、5組の寮は木造3階建てで、3階に1,2年、2階に3,4年、1階に5,6年が住んでいる、それでも部屋替えどころか寮から寮への引越しが年に一度あるため、ずっと同じ部屋に住むというのは実はかなり珍しかったりする。
「おおきいですね」
「……(コクコク)」
寮は少し古い感じがするが十分手入れをされていると言っていいぐらいには綺麗で、洋館っぽくなっている。
玄関を開けると外見とは違い、『よくある寮』と言った感じに仕上がっているのはむしろ凄いかもしれないとシエルは思った。
「寮長さん、いらっしゃいますか?」
「は~い」
フセルが『御用の方はお呼び下さい』と書かれた札のおいてあるカウンターのような場所で呼ぶと、かわいらしい女の子の声が聞こえてきた。
パタパタと走って、足音は止まった…が、姿が見当たらない。
「寮長さん~?」
「こっちこっち」
カウンターの下から声が聞こえてくる。
視線を向けると、身長1mぐらいの幼女が仁王立ちしていた。
「「……」」
((ちっちゃ!?))
「む、ちっちゃいとか思ったね?」
「あっいえ、そんなことクソ程思っていないです。」
「……!」
そうちっちゃいのだ、身長が、胸は大きくてむにゅっと音が出そうなほど大きいのに身長が小さいのだ。
圧倒的(胸囲の)格差!?
ちょっと大きいダメージを受けているシエルを見て何かを察したのか
「私はドワーフだからな!これ以上身長も伸びないんだ、ここは大分大きく育っちまったがね。」
と胸をふにょんと持ち上げながら少し困ったように笑った。
だけどシエルの目は胸よりも服に向けられた。
あの服…あの黒いロリロリしたドレス、特徴的なお人形デザイン、本来胸が大きかったら似合わない類の服なのに何故か似合ってしまってるこの完成度、ルルエの手作りだ!
と思っていた。
実際この女の子はかわいらしく、細くしなやかな体は美しく、燃えるような赤い髪、控えめに評価しても普通に美少女だと分かる。
そしてドワーフの少女もシエルに気が付いたらしく、お互いに服を下から上までじっくり見た後。
ガシッ!
と握手した。
実際に握手してみると、ドワーフ特有の力強さを感じ、謎の包容力がある。
そして
「あんた有翼人だろう、あんまり言いふらすんじゃないよ?」
「……!?」
「ははは、まあ長年生きていれば、そういう見分けは簡単なんだ、気にすることじゃないよ!」
「あっ、あのっ今シエルちゃんが有翼人って…本当なの!?クソ興味ある!」
「ん?…あぁ、シエルちゃんから聞いてなかったのかい、こりゃすまないことをした。」
「……(ふるふる)」
「ははっ、許してくれるかい!」
「……(コクコク)!」
寮長さんにあっさりと有翼人であることを見抜かれたのだった。




