29 お受験?3
灰色の髪の少女は自分の椅子を隣まで持ってくるとちょこんと座った。
そして
「何でちゃんと答え書かなかったの?」
そう聞いてきた。
だからと言って『お義母さんに点数取るなって言われてる』なんてバカ真面目に答えるわけにもいかない。
だから自分の無表情さを生かして少女に顔を向け
「……(こてん)???」
と、分かりませんのポーズを全力で取ることにした。
同年代の子にもバレちゃったってことは先生達にはもう気付かれちゃってるかもなぁ…。
「いや…言いたくなかったらいいんだけど…」
「……」
そう言われたら答えるつもりは無い為そっと顔をそらしてまたグデ~っとし始めることにした。
「あっ、私の名前は」
別に名前は気にならないんだけどなあ
「クララ・エンディール」
「……」
とりあえずシエルは考えた、自己紹介されたからにはしなきゃいけないのでは?と。
だが先程「言いたくなかったらいいんだけど」といわれたことを思い出し、じ~っとクララを見つめた、恥ずかしくなったのか次第に頬が赤くなってきたところでもう一度グデ~とし始めるシエルを見てクララは少し混乱し始める。
(この子なんなの!?私の顔をじ~っと見つめてきたと思ったらすぐにだらけて…なんなんでしょう…でもせめて名前を教えて欲しい!)
そして
「あの、名前を…」
「……」
シエルはダラ~っとしながらクララに顔を向けると…
「……」
何もしなかった、ただ元の姿勢に戻っただけだった。
ルルエお義母さんに「知らない人に名乗っちゃ駄目って言われてるし」と少しだけマザコンっぽい考えを頭の片隅に置いてそれを理由にしようと名乗るのを辞めた。
「あのっ……」
「……」
「えーっと…」
「……」
「すいませ~ん…」
「……」
「もしも~し…」
「……」
「……」
「……」
「名ま―――」
「それでは実技試験を始めますので付いてきて下さい。」
「「………」」
結局クララに名乗らず受験生一同は演習場に移動した。
演習場には止まった的2つ、動く的3つが20m先にあった。
「それでは何か得意な魔法であの5つの的にぶつけて下さい」
シエルは3番目。クララは2番目になった。
1番目の男の子は緊張でガチガチになっている体を動かして的の正面に立った。
「【ファイアーボール】!」
火の玉が1個ずつ順番に飛んでいく、止まっている的には当然のように当たったが動く的には1つだけカスって終わった、焦げ跡が残る程度には威力はあるが制度がイマイチといった感じだとシエルは思った。
次はクララの番、少しだけむくれてるような顔をしているが緊張はしていなさそうだ。
的の前に立つと背筋を伸ばし、気を引き締めたのがよく分かった、そして指をパチンと鳴らすと
ビュン…バキッ!
と、的が全部綺麗に真っ二つになった。
風系の魔法…オリジナルの魔法だね…目に見えないうえに的を綺麗に真っ二つ…いいねぇ…。
そう素直に思った。
先生達が的を取り替えると「再開します、3番の人お願いします!」と声がかかる。
クララが「どお?すごいでしょ???」と言いそうな雰囲気をしていたがシエルはスルーして的の前に立った。
速いの二つ遅いの一つ止まってるの二つ…距離20m、あの距離なら余裕で射程距離だね、結界魔法を飛ばす…のもアリだけどそれじゃあ面白くないしなあ…よし…【エリアニードル】と【カットスペース】っと。
そう唱えた瞬間にシエルの周りに空間が濁っているように見える場所には結界魔法で作った棘が大量に浮かんでいた、だけど既に的に当たっているため、これらの針は全て的を外すように飛んでいった。
シエルは飛んでいく針を無視して元の位置に歩いていった。
その的にはよく見ると、目を凝らさないと見えないほど小さな穴が速い的以外に開いていることにナギリしか気がつかなかった。




