25 笑顔は無意識のうちに。
「それではまずは髪から洗ってしまいましょう。」
髪をゆっくり優しく洗われていく。
撫でられているような気持ちよさで目を細めながらされるがままになる。
やっぱり洗ってもらうのは気持ちいいなぁ~
気が付いたら泡は既に洗い流され、体を洗われていた、タオルなどは使わず手で洗われていく。
クルトの柔らかい手がちょっとくすぐったい気もしなくもないがやっぱり心地いいのでされるがまま、手を持ち上げられては脇の下まで、髪を持ち上げられたと思ったら首周り、次に綺麗な白いもふもふの翼、水をかけるとペタッとなりモフモフ感が失われると骨の関節が少しだけ見えるようになる、それをなぞるように手で洗われるとなんとも言い難い感覚に襲われた、前に来たと思ったらお腹や胸、下半身は流石に自分の手で洗い、足を伸ばされ、台のような物に乗せられたら太腿から足の指の裏まできっちりと洗われる。
そしてまた気が付いたら全部洗い流されていた。
「歯磨きも」と言われた瞬間にシエルは今までに無いほど首を横に振り、強い意志を表すように翼も威嚇するように上に向き、一枚一枚の羽が開ききっていた、そんな全力拒否を披露したことで流石のクルトも「そこまで嫌なら…」と少しだけ残念そうにしながらも諦めてくれたので少しだけ安心するシエルだった。
「ふぅ〜やはりお風呂は良いものですね〜疲れが溶けていきますぅ〜」
クルトらしくないだらしない声だなぁ、ふぃ〜。
「……♪」
「ふふ、お嬢様もゆっくりとしてくださいねぇ〜」
本来使用人が主人とお風呂に入ることは無いのだが、これはルルエが「お風呂は一緒に!」とクルトにすごい勢いで詰め寄った結果、あまりの迫力にクルトは勢いで了承してしまったからである。
まぁ今となってはむしろそれが嬉しそうなんだもんなぁ〜。
そんなことを考えながら二人はゆっくりとお風呂に浸かり、時には抱きついたり抱きつかれたり、くすぐられたらくすぐり返したり、うとうとし始めてようやくお風呂から上がった。
眠気で朦朧とする意識の中、シエルは自分で着替えるという行動に出るが、服を持たずに着るというエア着替えを披露、クルトは吹き出しそうになりながらも耐えてこっそり服を代わりに着せる、服を着た感触を確かめて歩き始めるがやはりフラフラし始める、すかさずクルトは体を滑り込ませて支える、助かったと思いながら歩き始めるもやはりフラフラ。
あれ?私予想以上に眠いのかな…。
あっ…もう…だめ…。
結局シエルの部屋までお姫様抱っこで運ばれていく。
安心しきって腕の中ですやすやと眠るシエルを見ながらクルトはいたずら心が芽生えるが気持ちよさそうに眠っているその顔は正真正銘の笑顔だった。
クルトは思った。
意識はないけど…笑った…いつも表情なんて動かないのに…笑ってる…。
「んぁ…くりゅt…くsぐったiyぉ…」
綺麗な声、透き通るように、しかししっかりと響く声で確かにクルトの名前を呼んだ。
「ふふ…グスッ、どんな夢を見ているのでしょうか?グスッ…」
気が付いたらいたずら心は無くなり、ただ一途にこう思った。
この笑顔をもっと…と。




