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番外編 その頃女神2

 女神ヴィヴラは二桜と話してからなにかモヤモヤとした感情を抱きながら生活していた。

 それは声から表情、感情までもを再現させてまで二桜が【がんばれ】と言ったのか、それはどこまでの意味が含まれているのか分からなさすぎる。

 終いには自分の存在を隠蔽するように自分の死因を迷宮入りにしてくれと願ったこと、それでなぜ感謝と共に涙まで流れてしまうのか、どうしてもヴィヴラには分からなかった。


「はぁ…なんなのでしょう……【がんばれ】ですか…。」


 姿勢を崩し、椅子に浅く腰掛けるヴィヴラはだらしなかった。

 だらしない姿勢のまま薄く板のような液晶画面のついた機械のように見える物を取り出し、手をかざし、映し出された映像をじっと見つめる。


『佐倉一桜さんのお宅でよろしいでしょうか?』

『はい、どちら様でしょうか?』


 そこには佐倉一桜の死に際を看取った青年と佐倉一桜の実家から出てきた佐倉一桜の姉が映し出されていた。

 そしてこの映像は佐倉一桜が死んでから4年後の映像である。


『私(わたくし)の名前は国枝悠(くにえだゆう)と申します。』

『はぁ……その国枝さんが如何様に?』

『佐倉一桜さんの最後の言葉を伝えに』

『ッ!?』


 映像に映った青年は真剣な顔で佐倉一桜の姉は話を聞きたくないと言い表したかのように顔が強張った。


『ーー弟…一桜の…』

『はい、伝えにきました。』

『そう…帰って。』

『聞かなくていいんですか?』

『帰って…。』

『……本当にいいんですね?』

『…だから帰って!』

『…なんだよそれ…』

『……さようなら』

『だからなんだよそれって聞いてるんだ!』

『うるさい!なんでやっと吹っ切れたのにまたそんなこと聞かないといけないのよ!?…やっと…やっと立ち直れたのになんでまた…帰ってよ…お願いだから。』

『ダメです!聞いていってください!』

『嫌!聞きたくないの!』

『いい加減にしろ!』


 パシィィィン!


 国枝の手加減なしのビンタが一桜の姉の頰に見事に当たった。

 顔に綺麗な紅葉ができた一桜の姉はジンジンと痛む頰をさすりながら国枝をキッと睨む。


『なにすんのよ!』

『なにすんのよだと?テメェがふざけたこと抜かしてるからぶん殴った!何がおかしい!?』

『全部おかしいわよ!』

『おかしいのはあんただ!』

『どこがおかしいのよ!弟の死から立ち直って今はこうして普通に暮らしているじゃない!』

『そうじゃねえ!俺が言いたいのはなんで遺言を聞いてやらねえかって話だ!』

『ーーッ!?』

『テメェは本当にそれでいいのか!あの人が最後に、誰に対してでもない、死にたくないとかいう懇願でもなかった!俺はあの日初めて佐倉一桜さんに出会ったからあんまり細かいことは分からねえ!だがな、あの人が最後に言った言葉だけは伝えなくちゃいけないのだけは俺でもわかるんだよ!』

『煩い…』

『なんであんな良い人の遺言を聞いてやらねぇんだ!テメェそれでも一桜さんの家族かよ!?』

『煩い……!』

『何が受け入れただ!何が立ち直っただ!テメェのその態度を見れば誰だってわかる!』

『煩い………!』

『お前は一桜さんをーー』

『煩い煩い煩い!』

『ーーーッ!』

『じゃあどうしろっていうのよ!受け入れられる訳ないじゃない!教えてよ、ねぇ、なんで弟は死ななくt』

「ッ!」


 ヴィヴラは姉の叫びが自分に対する糾弾のように聞こえてしまい、この映像の続きを未だに見ることができなかった。

 それは罪悪感からなのか、一桜の気持ちを理解したくないからなのか自分でも分からない。

 いつもここまで見て目を背けてしまう。


「……」


 自然と苦虫を噛み潰したような表情になる、それはきっと二桜の情報隠蔽の願いと極限まで似せられた【がんばれ】の一言が大きく影響していることだろう。

 だからこそヴィヴラは先を見れなかった。

 自然と手が動き、映像の映し出されていた道具を無造作に置き、その場から去ってしまった。









 その部屋に二桜が入ってきて、無造作に置かれた道具を持ち上げ、画面に触れて続きを再生した。


『なんで弟は死ななくちゃいけなかったの!教えてよ国枝悠!』

『そんなの俺にだってわからねぇよ!あんな良い人が……俺がわかるわけないだろ!』

『じゃあもう黙っててy』

『だからこそ伝えなくちゃいけないとおもったんだ!』

『……』

『一桜さんは最後に……』

『……』

『「母ちゃん、幸せだった、ありがとう」って言ったんだ…』

『……』

『自分が死にかけてるのに、怖いはずなのに、死にたくないはずなのに、最後にそう言ったんだ!』

『……』

『なのにテメェがそれでどうするんだ!…』

『……』


 映像が停止したように静寂が流れた、先に口を開いたのは国枝だった。


『だからよぉ…伝えてやってくれねーか?』

『…はい……』


 それから一桜の姉はその場に泣き崩れ、映像は止まった。


「そうか、一桜はあの時ありがとうまで言ってたのか…よかった、本当に。」


 二桜は考える。


(でもやっはり、迷宮入りにして欲しい理由が「後腐れなく死にたいから」なんて尚更言えないよな)


 二桜はヴィヴラがいなかったこと、たまたまこの映像を見れたことを感謝しながらその場を後にした。

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