14 発声練習
シエルは今一人地下室で悩んでいた。
それは一人きりになった時流石に喋れない状態のままなのはまずいと思い声を試しに出してみようと、その悩みが新たに浮かんできた。
そろそろ声出してみようかな…。
「わ…らし、わ……しゅ…え、る……ルr…おか…、さ……の…むs、め、す。」
擦り切れたような小さく細い幼い女の子の声が地下室に消えていく。
あぁ…本当にこれはまずいかなぁ…。
「は、じゅめ…ましぃ、て……しぇ、る…れ…す。」
声を出していなかった弊害でその声は弱くどこかに消えてしまいそうな存在に感じさせてしまう物となっていた。
本当に必要な時に喋れないのはまずいからね。
「おっ…はよ……う、こ、に……ち…わぁ、こん…ば……んわ…ゲホッゲホッ……はぁ、はぁ」
喉痛い…なにこれ……喋るのが苦痛だ…息も上がるし疲れる…キツイよぉ〜。
「い゛…た゛い゛……の゛、と゛……い゛た゛い!」
まさかここまで声を出すのに苦労するなんて…もっと前から定期的に声をだしてればよかったなぁ…「はぁ」。
「わ゛、た゛し゛ば……」
駄目だ…今日はもう喋れない、喉が痛すぎる。
この日の発声練習は早々に切り上げて地下室のドアを開けると――クルトが立っていた、それも嬉しさと辛さと頑張ってという三種類の感情をごちゃ混ぜにしたような複雑な表情をしながら壁に背中を預けるように立っていた。
まさか初日にしてバレてしまうとは……不覚。
「お嬢様、なにか喉に優しいお飲み物でも用意いたしましょうか?」
笑顔を蓄えて言うクルトの尻尾は今までにないほど嬉しそうに揺れている。
こんなに嬉しそうにされると断れないじゃん……断る気はないけど。
「……(コクコク)」
おっと…そうだった
「……(クイクイッ)」
シエルはクルトの袖を引っ張り、振り向いたクルトによく見えるよう空中に【ダーク】を何十回も使って『このことは内緒ね?』と文字を書いた。
クルトは「かしこまりました」と口にすると再び振り返って歩き出した。
ふう…これでもう少し心置きなく練習できるかな。
ちなみに用意された飲み物は(すごく美味しかった)と思うシエルだった。
次の日
まだのどが痛むので無理せずに魔法の練習をしながらぼーっと過ごした。
途中アーテルときゃいきゃいと遊んだがそれ以上のことはしなかった。
この日も喉に優しい飲み物を飲んで過ごした。
その次の日
のどの痛みはまだ残ってはいるがキツくはないためとりあえず喋ってみることにした。
「わら……ぁた…わだ…わ、た…わたしぃ…わ、たし!……わ、たじ!……わたし!」
やった!噛みに噛み続けたけど何とか言えた!どんどん言ってみよう!
「なまみゅぎぃ…にゃ、みゃむ…なみゃみゅ……にゃま、にゅぎ、なみゃあぎょ、みぇえ……にゃま、たみゃご!」
バタン!「なにこれ…可愛すぎでしょ」
とか扉の向こうからクルトの声が聞こえてきたがむs--
できなかった。
カァアと顔が赤くなり小声で練習を始めた。
「ブツブツ……ごにょごにょごにょ…」
扉が僅かに開く音がし「ちゃんと声をお出しにならないと練習になりませんよ?」などとクルトのニヤケ面をしているのが丸分かりの声が聞こえてきたためシエルは腹を括って胸を針少しだけ声を張り上げて
「く、くにゅ…くりゅ…きゅる…くりゅと…くる…くるくるくる…くると…クルト!…「バタッ!」…クルトにょ、ば、きゃあーーー!」
終始噛み噛みになりながら「クルトのバカ!って言ったつもりだった。
しまった、「バカ」はまだ言えないんだった…でもこの屋敷に住んでる、クルト、ルルエ、アーテルには効果覿面だと思うから言えるように練習しとこ。
こうして会心の一撃をいつでも放てるように練習しようと心に誓うシエルだった
ちなみに喉はやっぱり痛くなった。
なぜ喋るだけで喉が痛むのかはまた別の要因があるのだが、それを知るのはまだ先の話である。
次の日
やっぱり喉が痛いまんまだった、クルトオススメの喉に優しい飲み物を飲んで過ごしている為またすぐに練習を再開できるだろう
この日は全員集合していたためリビングでダンテ含む全員でまったりと過ごして時間が過ぎていった。
途中ルルエから「なんだか辛そうだけど大丈夫?」ってシエルに言葉が向けられたが気にせずに過ごした。
まあ喉痛いだけだし辛いけど辛くないんだよね。
それから四日間ほど喉の痛みは続いていたのもあるが一人きりになれる時間がないという理由もあり発声練習をすることはなかった。
そのさらに次の日
喉が清々しいほどスッキリとよくなっていたから発声練習をするために地下室に向かった。
相変わらずクルトが扉の前で待機している。
さて…始めようかな…今日は自分の名前から。
「しいぇ、りゅ…しぇりゅ…しえりゅ…しえりゅ…しえる、しえるしえるしえる…シエル!」
うんうん、有る程度は改善されてきたね!次は自己紹介!
「わ、たしゅ、は…わた、し、は、しえりゅ、6ちゃいでしゅ「グフッ…ヤバイです貧血になりそうです」……!」
もうクルトはほっておこう。
「わたし…は、しえりゅ、6しゃいです!「バタン
……もう慣れましたよクルトさん?
「わたしは、しえる、6さいですぅ!「パチパチパチ」」
拍手が聞こえてくるがシエルは気にせずに続ける。
「わたしは、シエル、6さいです!」
おお、やっと言えた!今度はもっとハッキリと!
「私はシエル、6歳です!」
言えた!最低限の自己紹介だけど言えた!やったぁ!
「いえたよ、クりゅトー!」
この日、シエルの幼さが強く残っている産声のような声が屋敷の一部で聞こえたことにクルト以外気が付かなかった。
「所で何故声を出す練習をしておられたのですか?」
空中に『いざっていうとき困るから』と書いてシエルは答えた。
クルトは「なるほど、そうでしたか」とだけ返すのだった。
7月はがんばれそうなら毎日更新します。




