13 ハンカチ理論
この日、シエルはダンテから貰ったハンカチの魔道具に泥水を垂らし、それを観察しながら魔法の練習を始めた、それは魔法を混ぜるんじゃなくてしみこませるように重ねることだった。
よく掻き混ぜた泥水はハンカチの上に落ちると茶色のシミを作りながらも砂粒と水になってハンカチの上に残り、それをハンカチ自身が綺麗に真っ白に戻す。
これを見てシエルは閃いた。
んんん……こう!
シエルの両手には【ライト】と【ファイア】が両方ふよふよと漂っていた、同時に使うのは今まででも出来ていたので難しいことではない。
その二つをゆっくり混ぜるように重ねていく、次第に太陽光のように熱を帯びた光を発する黄色がかった球体が完成した、よく見ると表面は火を纏っているようにも見える。
それをみて
成功だ!
【ライト】と【ファイア】を維持するために流している魔力をゆっくり流したり速く流したりしながら魔力を重ね、有る程度落ち着いたら一気にかき混ぜる、という方法だった、なぜハンカチをみて思いついたのかというと、ハンカチという魔力に泥水という魔力をしみこませるイメージが頭の中で完成したからだ、そして土と水は掻き混ぜることで泥水として完成する。
その様子を思い出したら成功したのだった。
名付けてハンカチ理論だね!ま、ハンカチを見て閃いただけなんだけど。
それから色々混ぜながら結界魔法を使っていく。
火と結界を混ぜる→伸縮自在の柔らかい結界になった。
水と結界を混ぜる→スライムみたいにドロドロの粘着質のある結界になった。
風と結界を混ぜる→元の結界よりもさらに薄く作ることができるようになった。
雷と結界を混ぜる→より硬くなった。
土と結界を混ぜる→粘土のようにこねくり回す事ができるようになった。
無と結界を混ぜる→結界に命令を与えて動かせるようになるのと無色透明になる。
光と結界を混ぜる→なんか神聖な感じになった。
闇と結界を混ぜる→真っ黒なちょっと怖い結界になった。
と、色々と結果がよく分からないことになっていた。
これが分かるまでおよそ1ヶ月ほどの時間が経過した。
そして次は本題の運動オンチを少しでも解消する使い方、真っ先に試したのは無属性と混ぜて足の下に結界をつくって動く……失敗、足の下からにゅるっと出てきてしまった。
普通の結界の下に作る……三割成功するがちょっと動けただけでまたすぐににゅるっと出てきてしまう。
風と混ぜて一枚の薄い板のような結界を作りその下に無と混ぜた命令で動く結界を作る…同じく三割ほど成功するがにゅるっと出てきてしまう。
n←こんな感じのくぼみをつけた普通の結界を作り出し、そのくぼみに少しだけはみ出るくらいの丸い無属性と雷属性を混ぜた結界をつくってころころと回転するように動くよう命令する……七割成功するがものすごく動くのが遅い。
初心にもどって無属性だけで土台を作って『速く動け』と命令を伝えて四角い台車のようなものを作る……九割成功、シエルは今までの試行錯誤はなんだったんだと後悔する。
九割成功を元にあれこれ形をいじりまくる……足に纏わせる形で動けと命令したら完成した。
傍目から見ると中にうきながらすべるように動いているように見えるだろう、その実目に見えない結界の台車で動いているだけ。
問題は魔力の消費速度かと思われたがシエルの保有量の前では雀の涙だ。
やっと…これで立ってるだけで移動が出来るようになったよ!
シエルは起動ワードを【ムーブ】と名付けた。
ただ目的がそれだっただけで単調な名前である。
【ムーブ】!うおぉぉぉお!
唱えた瞬間足を透明な何かが覆い頭の中で『前に進め』とか『もっと速く』とか命令すると想像通りに動くことが出来た。
とりあえずこれで目的達成だね!
シエルは嬉々としてアーテルの元に急行した、もちろん【ムーブ】を使って。
屋敷の廊下をスイ~ススイ~ススススイ~と滑るように。
そうしてやってきたアーテルの目の前。
スイ~っと移動して目の前まで来たシエルに目を見開いて驚くアーテル、それはもう知的好奇心をくすぐられた子供のように。
「シエル、シエルよ!完成したのだな!そうなのだな!?!?」
「……(コクコク)!」
そうなんだよ完成したんだよ!ほら【ムーブ】!
アーテルは広い部屋を時々宙を舞うように縦横無尽に高速で滑るように移動する、それはもう気持ち悪いとしか表現できないほどすい~っと。
一通り見せた後シエルは「フンス」と聞こえてきそうなほど胸を張ってサムズアップ。
「すごい!すごいのだが…動きがへ…ゲフンゲフン、変わっとるな。」
「……(じ~…)」
今間違いなく動きが変態的とか言おうとしたでしょ?ねえそうなんでしょ!?!?ねえ!
「運動オンチは解決できたかもしれんが…体力の無さはどうにもならんようだな」
「……(しゅん)」
それもそうなんだよね…それはもう諦めてるよ…。
「あぁそんなに落ち込むでない!先程の魔法があれば関係なくなるだろう!?」
「……(ふるふる)」
慌てるアーテルを他所にシエルは首を横に振り、いつもの『思考を呼んで』のサインをして考えてることを説明した。
「なるほど、【ムーブ】は楽すぎるから余計に運動が出来なくなると」
「……(コクコク)」
だって魔力不足による倦怠感とか無いし…きっと消費量は多いんだろうけどね?
実際少し命令してシエル感覚の少しの消費で高速で移動できるならただ立っているだけになるために実際楽だったのだ、それこそエスカレーターもしくはバイクを常によろしくしている状態になっている。
それが楽じゃないはずがない。
つまり運動が疎かになって余計に動けなくなるために普段は使えないことになる。
はぁ…結局はある程度自分で頑張って動かないといけないんだよね…はぁ…。
こうしてひとまず魔法の練習は終わった。




