12 ハンカチの魔道具
結界魔法の本を読み、早速練習を始めるシエル。
まずは掌に小さな四角い棒の形で結界を作った。
そこに土属性の魔力を流し込む、本によると起動ワード(他でいう【ファイアー】や【ライト】)は自分で決められるらしい、ワード無しでも感覚さえ覚えれば出せる。
だが問題がある。
……魔力操作ってどうやるんだろう?
今までは頭の中で【ライト】とか唱えて強弱を意識すればある程度勝手に使えたのだが勝手が違い、自分で直接操作しなければならない。
こういうのってどうやるんだろう?……誰がわかるかな?
暫く頭を回転させて思い至ったのはルルエとアーテルだった。
でもお義母さんは忙しいから聞きようもないしなあ…やっぱりテルさんだよね…。
そう決めて屋敷を暫くゆっくりととぼとぼ歩き回――
「あれ?シエルお嬢様どうしたんですか?」
クルトと遭遇した。
エプロンドレスを揺らし、屈んでシエルの顔を覗き込むように聞いてくる。
「……」
「……?」
どうしよう?どうやって要件を伝えよう?声は…使ってない所為で色々とやばいし…。
暫くボーッとお互いに見つめあいながらもシエルは考え、やがて方法をひらめいてくるりと180度回転し、指でその空間をなぞるように動かしながら【ダーク】の魔法を何回も使って文字を書いていく。
そうして書かれた文字は黒い光を僅かに放ちながらも文字としてしっかり機能した。
「えっと…『アーテルさんを捜してます』ですか…それでしたら私がお連れ致します。」
「……(コクコク)」
クルトに手を引かれながら屋敷の中を歩くこと数分
「こちらでございます、先程寛いでいらっしゃいましたから今のうちに」
クルトはそう言いながらノックをし、返事を待たずにトビラを開け、クルトはトビラの後ろに隠れるようにしてシエルが部屋に入ってからすぐに閉めた。
シエルは部屋の中に足を踏み入れ、きょろきょろと見回した後、うとうとしているアーテルに近付き、服の袖をクイクイとひっぱり、アーテルの意識を引き戻した。
「んゃ?」とか言ってたのは内緒にして。
「む、妾に何か用か?」
「……(コクコク)」
シエルは魔力操作の悩みを一通り相談した。
「なるほど、ならばとりあえず…」
「ということだ、良いか?妾が出した結論で言うとここからが魔法の本番のようなものだ」
「……(コクコク)」
「そして先程言った方法を試しながらゆっくりと操作を覚える」
「……(コクコク)」
「よし、ならば頑張るのだぞシエル」
「……(コクコク!)」
アーテルから聞いた方法は【ライト】を唱えたときに体の中から魔力が抜け落ちる感覚を覚えて操作できるようにするというものだった。
この日からシエルはまた魔法の練習に明け暮れる日々が続く。
数日後のある日
「お嬢様、よろしいですか?」
ダンテに廊下で話しかけられた。
相変わらず巻き角は綺麗に磨かれて上を向いている。
カッコイイ
「こちらを」
ダンテは懐からスッと掌ほどの大きさの四角い箱を取り出した、やや平べったい。
「……(こてん)?」
なんなんだろうこの箱?
「こちらハンカチの魔道具でございます、汚れた箇所、主に服や肌に付いた汚れを綺麗にふき取ることができます、そしてそれを拭いたそのハンカチも自分で自分を綺麗に保つことが可能となっております。」
本当!?だとしたらすっごい……!でもなんで突然?
「何故、ですか?」
「……(コクコク)」
「それはですね、お嬢様はよくお洋服を汚されるのでシミとして残ってしまう前にふき取っていただこうと思いまして、それに私は執事ではありますがやはりお嬢様のお体に勝手に触れてはいけないとルルエ様に言われております、故にクルトが間に合わなかった場面ももちろん起こりうるでしょう?ですからその前にご自分でと言うわけでございます」
そっか…まあ確かに、服汚しちゃってるしなあ…最近魔法の練習も多くしてるから湿ってたりするし…そういうことなら受け取っておこう!
「それに…せっかくお義母様にが作って下さいましたお洋服、お嬢様は汚されたくないでしょう?」
「……(コクコク)ペコリ。」
ダンテからハンカチの魔道具をもらったシエル、相変わらず無表情ながらもかなりのルンルン気分でいつもの日課へと戻っていった。
シエルの部屋
箱を開けてみると白い生地で作られた綺麗なハンカチ、広げるとシエルの顔を覆い隠せそうなぐらいの大きさだった、試しに汗などを拭ってみると汗をすぐに吸い込むのにハンカチは開けた時と同じ状態で汗を吸った箇所もそんな痕跡一つ残ってなどいなかった。
そのハンカチを見てシエルは
……これじゃん!
と何か閃いたのだった。




