番外編 その頃女神1
番外編 女神です。
ちょっとだけシリアス
女神ヴィヴラは今佐倉一桜の預かっている記憶を元に作り出した男型の佐倉一桜そっくりの自動人形に植えつけて雑談に耽っていた。
あくまでその自動人形は偽者であって佐倉一桜本人ではない、ただの擬似人格でしかない、ヴィヴラはだからこそ緊張せずにいつも通りの口調で話すことが出来ていた。
「二桜さん……シエルさんの様子はいかがですか?自分の元となった存在がかわいらしく生きている様子は」
二桜とはヴィヴラのネーミングセンスでつけた適当にも程がある名前だが二桜は全く気にせず
「そうだな~……なんというか…自分が作った設定だからかあまり羨ましくは無いな、翼があっても飛べないし運動オンチだし体力ないし…でもよく見ると美少女だけど記憶を持って転生すると考えるとこれはこれで良かったかもとか…いやでも成長すればお酒も飲めるし食べ物とかも食べれるし…ちょっと羨ましいかな?でもでも女の子の体だとあんまり食べられないし…そう考えると男として転生したなら最高の気分かもしれない…でもでも………」
「あーすとっぷ!すとーーーっぷ!」
ヴィヴラは自分の率直な感想だけを長々と喋りだす二桜を慌てて止めて「ふぅ」と一息吐く。
それと同時に床から生えるように出てきた白い椅子に腰を下ろしてもう一度「シエルさんの様子はいかがですか?」と再度口を開いた。
それに「承知いたしました、失礼致しますマスター」と一声かけたところでもう一度喋りだす。
「一桜さんの性格やこの記憶を元に推測しますと恐らく彼は一言こう言うでしょう『がんばれ』と」
「そう…なんだか複雑な気分になってきちゃった」
「……そうですか」
二桜が『がんばれ』と言ったときに声や喋り方、何か遠くを見つめるように、謝罪するようにつぶやいた言葉は一桜本人の影が重く、本人が言っているような実感と陰が重なったような気がしたヴィヴラはその先を聞きたくなくなったのか続きは聞かないように話を切った。
数分の時間が流れ、ヴィヴラはパンと小さく手を打って話を切り替える。
「あっそういえば」
手を適当にかざし、下に向けてスライドされると大きなモニターが上から降りてくる。
そこに映ってるのは
『先日マンションの最上階から落下した植木鉢の事故によって死亡した「佐倉一桜」さん。
警察は事故と殺人の両方を検討して捜査を続けております。
しかし植木鉢の置いてあったはずの部屋には最初から誰も住んでおらず「佐倉一桜」さんの上に植木鉢が落ちてきたのが………』
急にニュースキャスターの男性…とその周りの人達は目の光が一瞬無くなり、ハッとしたニュースキャスターはすぐに口を開いた。
『失礼致しました、「----」さん……の上に落ちてきたーーー……あれ?』
再び目の光が消える現象がおき。もう一度ニュースキャスターが口を開いたが…
『………あれ?すいません、この現場でなにかありましたか?』
記憶が消えていた。
その様子を見た二桜は
「マスター……いやヴィヴラ、お願いがある」
突如豹変した二桜を見ていたヴィヴラは佐倉一桜の姿を重ねてしまい、少し怯えながらも「な、なんでしょうか?」と聞くことが出来た。
「ヴィヴラ…事件は迷宮入りにしてもいい、ただ俺が死んだ事実だけは隠さないでくれないか?」
二桜は「頼む」と地面を床に擦りつけるようにただただ綺麗に丁寧にみっともなく土下座をしていた。
ヴィヴラはその真剣そのものな姿が異様に頭に酷く焼きついた気がして無意識のうちにモニターに向けて手を翳し
『あれ?……あっ!そうだった!「佐倉一桜」さんの死因は植木鉢が頭部に当たったことによる事故死
とされていますが依然真相は明らかになっておりません。
植木鉢が置いてあったはずの部屋には最初から誰も住んでおらず、手がかりなども発見されておりません』
ニュースキャスターの言っていることがあやふやになっているが二桜の願い事が叶ったことだけはすぐに確認することが出来た。
二桜は元の状態よりも酷い結果になったはずなのに自動人形の体でポロポロと涙を流しながら「ありがとう」と言って再び土下座を始めた。
その様子にヴィヴラは訳が分からなくなり慌てて手をワタワタさせながら頭を上げるようにお願いをし始める。
涙で崩れた顔を上げた二桜は不思議なほど佐倉一桜本人にしか見えなかった。
その姿に、本人にしかわからない考えなのは分かっているのにヴィヴラは「理由をお聞きしても?」と聞き返してしまった。
「理由……ですか」
「はい、よければですけど」
「俺は…いえ一桜は………やめておきましょう、俺…私は所詮マスターに作られた擬似人格を宿した自動人形、話を聞くのなら本人に聞くべきでしょう、そしてそれは…絶対に教えてはくれないと思います、ですからやめておきましょう。」
ヴィヴラは何とも言えない居心地の悪い感覚に眉を顰めるが自分達の所為で死んでしまった負い目もあってそれ以上聞くことが出来なかった。
これはきっと聞くべき事ではないですね…。
そう思いながら自分は見ることが出来ない世界を映したモニターを二桜の部屋に出したヴィヴラはその部屋から忽然と姿を消した。
「言えるわけ無いよな…」
二桜の呟きは静かに部屋の中へと溶けていった。




