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覚えていること

いつものように日常を過ごしていた愁。しかし、気が付けば見知らぬ場所にいた。

しかし、愁はその場所に覚えがあり、さらに、声をかけてきた二人の少女の名前を知っていた。

混乱する愁は、二人の案内に従い、とある屋敷へ向かった。そこで愁は問われた。何を覚えているのかと。

……何を覚えているか……か。この屋敷に来るまで、多少の時間があったから、考えを整理することが出来た。落ち着いて考えていれば、なぜ自分がここにいるのか、なぜ少女の名前が分かったのかを理解することが出来た。……いや、思い出せたという方が正しいか。


「……俺は、お前らに呼ばれた存在だ。召喚の魔法というものがあって、それを使って呼ばれた。呼ばれた理由は、力を持つ代表の存在が必要だったため」


思い出せたことをすらすらと述べていく。ヴェルストは、そんな俺を無言で見つめている。


「……で、俺がこんなことをぺらぺらといえる理由だ。答えは簡単、召喚の魔法に使われた生贄の記憶を引き継いでいるから」


そもそも召喚の魔法とは、ただ強い存在を呼び出すというものではない。どこからか器を取り寄せて、その器に能力の水をためていくというのがわかりやすい例だろう。その能力の水の出どころは、生きている生物。そして、その能力とともに、記憶も引き継いでしまうらしい。

満足か? という視線を向ければ、ヴェルストは頷く。


「あぁ、その通りだ。君には、『剣王』ルイードと『賢王』アルマ、二人の能力の器となってもらった。その理由は我々……人間たちには魔族とひとくくりにされている亜人たちをまとめる存在が必要だったからだ」


この世界で、人間たちは自分たちが最も尊い種だと考えている。そして、エルフや獣人などは紛い物、魔族と呼ばれ迫害を受けていた。人間たちが住む大陸の片隅に存在する島に追いやられた彼らは、それぞれの種で島を分割して暮らすようになった。……しばらくはそのままでよかった。しかし、人間たちは魔族たちから略奪を始めた。島が豊かになるころを見計らって召喚の魔法を行い、呼ばれた者たちを勇者とよび、魔族たちを悪だと教えて攻めさせた。……ここで呼ばれた者たちというのは、おそらく俺のクラスメイトのことだろう。そして、召喚の魔法に使われた生贄は、魔族の奴隷。人間たちは、魔法を改変し、クラスメイト達に奴隷の記憶を引き継がせ、無意識のうちに言うことを聞くようにされてしまっているらしい。


「エルフや獣人、その他の種族も戦ってはいるが、それぞれがバラバラになってしまっている。だから、彼らをまとめる存在が必要になったんだ」


つまり俺は……魔族の王、魔王になるために呼ばれた。

アオイです。

はい、前話に比べて短いですね。もうしわけありません。キリの良いところで区切ったらこうなってしまったんです。

これからもかなりあやふやな文字数になってしまいます。もうしわけありません。

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