あぶれたら……
ーー昼休み、昼食を食べるために、いつものメンツで机を囲む。さぁ食べようというところで、飲み物を買っておくことを忘れていたことを思い出す。
「よっしゃジャンケンするか」
こんな時、ジャンケンで負けたやつがいくことは、俺たちの中でお決まりのルールだった。しかし、その中の一人が、こんなことを言い出した。
「たまにはひとりもんでやろうぜ」
ひとりもんというのは、全員でジャンケンをし、一人だけになったものが負けというルールだ。俺としても異論はなく、そのままひとりもんでやることになった。
「それじゃいくぞー。ジャンケンポン」
俺:グー。その他:グー。
「綺麗にそろったなぁ……もっかい行くぞー、ジャンケンポン」
俺:グー。その他:グー。
……ん?
「またそろったか……まぁそんなときもあるよな、それじゃ、ジャンケンポン」
俺:パー。その他:グー。
「謀ったな貴様らぁあああああああああああああああああああ!」
「騙されるお前が悪いんだよ。あ、俺天然ミネラルウーロン茶な」
「俺はおーい粗茶」
「ヘルアシで」
自分の注文を言って金を渡して来るクズ共。しかしそこは優しい俺、勝負は勝負とあきらめ、学校に設置されている自動販売機へ向かうことに。
「……見てろよあいつら、今度は俺がだましてやるからな」
「あ、御園洲君。ちょっとまって」
そんな悪だくみをしながら、教室から出ようとしていると、呼び止められた。ちなみに御園洲というのは俺の名前だ。御園洲 愁。それで、呼び止めてきた彼女は八重樫 詩織、クラス委員をやっているかなりの美少女だ。
「八重樫か。どうした?」
「え、えっとね……」
呼び止められた理由を尋ねると、彼女は顔を赤くしながらうつむいてしまう。……ははぁ、なるほど。
「私と一緒にお弁当たべなーー」
「ーーいいよ。ついでに買ってきてやる。何買ってくればいい?」
「ーーえ?」
おっと、言葉をさえぎってしまった。まぁ、ついでに飲み物買って来てっていう内容だったんだろ。
「あ、うん……それじゃ、緑茶をお願い」
「あいあい了解」
彼女からも金を受け取り、教室を出る。えっと、天然ミネラルウーロン茶と……
注文されたものを思い出していた俺は、背後の教室から強烈な光が出ていたことに気が付かなかった。
ーーーーー
自動販売機で買い物を終えた俺は、両手いっぱいに注文された飲み物を持ち、教室の前へと来ていた。両手がふさがっておりドアを開けることが出来ないのでドアをノックし、誰かに開けてもらおうとした……が、
「……だれもでねぇし」
なんという不親切なクラスメイトだ。訴訟。仕方なく、足を使ってドアをあけ、手近な机に飲み物を置かせてもらい、一息つく。
「ふぅ……あれ?」
一息ついたところで、異変に気付く。
「……なんでだれもいないんだ?」
教室は、もぬけの殻だった。机の上には弁当がそのまま放置されており、ほんの少し前までそこにいたような形跡もある。
「……なにこれ怖い」
そんな状態に、底知れない恐怖を感じる。
「と、とりあえず先生に……っ!」
教師を呼ぼうとクラスを出ようとしたとき、いきなり俺の足元が発光する。その光はすさまじいもので、そのまま俺の視界は白く染まった。
ーーーーー
……彼は獅子の獣人だった。幼いころから親に戦いを教えられ、物心ついたころには大の大人にも負けないくらいの力を身に付けていた。それから彼は剣を学び、数々の戦場で戦い、生き残った。いつの間にか、彼は『剣王』と呼ばれるようになった。そして、妻ができ、娘ができ、守るべきものが多くできた。その守るべき者のために、年老いた彼はとある場所へ向かった。そして……。
……彼はエルフの男だった。彼は頭がよく、幼いころから魔法に興味を持ち、名のある魔法使いに弟子入りし、たくさんのことを学んだ。師匠のモテルすべてを教わったあと彼は、独学で魔法を極めた。そして、彼はいつの日か『賢王』と呼ばれるようになった。そして彼にも家族ができ、守るべきものができた。彼らのために、もう力もほとんど残っていない彼はとある場所へ向かった。そして……。
ーーーーー
「……っ!」
目が覚め、飛び起きた俺の目の前に広がったのは、石造りの建物だった。周りが柱で覆われ、天井には穴が開いていて、青空が見える。
「ここは……」
知らない場所……いや、俺はここを知っている。
「どうなってんだ……」
「……目が覚めましたか」
「……っ!」
いきなり声を掛けられ、バッと聞こえた方を向けば、そこには二人の少女が立っていた。俺と同じくらいの年齢だろうか。一人は長い耳に金髪、青い目と整った顔をしていた。もう一人は栗色の髪に、頭のてっぺんに猫のような耳が生えているこちらも美少女だ。
「シェリア……ミカナ……っ!?」
自然と出てきた言葉に驚愕する。今のは何だ? 今のは……彼女たちの名前だ。なんで俺が知っている?
「とりあえず、ついてきてもらえますか」
混乱している俺に、金髪の少女ーーシェリアがそう伝える。彼女を見てみれば、いや、シェリアだけではない。ミカナもだ。二人とも、泣きそうな顔をしていた。
「あ、あぁ。わかった」
そんな様子に、俺は何も言えず、ただ二人に従ってついていくことにした。
ーーーーー
連れてこられた場所は、大きな屋敷だった。そのまま二人に連れられ、とある一室に入る。中は執務室のようになっていて、一人の男性が立っていた。ヴェルスト……そんな単語が頭に浮かんだ。
「シェリア、ミカナ……成功したのか」
「……はい」
「……えぇ」
男性ーーヴェルストの言葉に、二人が頷く。そんな二人に彼は、あとは任せて休めと伝え、二人を下がらせた。二人が部屋から出た後、俺はソファに通され、彼と向かい合うように座る。
「……君の名前を聞いていいかな?」
「……御園洲 愁……いや、シュウ・ミソシマだ。シュウでいい」
名乗ったあと、こういい直した方がいいと思い、伝え直す。
「そうか、ではシュウ、一つ聞きたい」
「……」
ヴェルストはまっすぐに俺を見つめ、こう尋ねてくる。
「……どれだけ知っている。いや、どれだけ覚えている?」
アオイです。
せっかくの夏休みなので、不定期ですがちょっとした連載というか、長めの短編を書こうと思います。
いつ終わるかは未定ですが「あぶれたので魔王やります」楽しんでいただけたら幸いです。




