逃げられましたわ
「私が大聖女様にならないと駄目なのかしら?バルは聖女様のままだとまずい事になるのですか?」
私は剣から光の刃輪を出し男に攻撃しながら質問しましたわ。男は光の刃輪を剣で散らしながら答えました。
「だから、バルトカピ様な!愛称で呼ぶなよ!俺もつい愛称で呼びたくなるだろうが!普通の聖女がバルトカピ様になった例は過去にもあるわけ。俺はそれを超えたい」
「私は貴方の希望を叶える為に大聖女様にはなりたくありませんわ」
「まー、お前の今世での目標は目立たなく生きて生きたい、だったけ?それは無理な話だ。前の人生で大聖女にならなかったから今世では『運命』が無理矢理でもお前を大聖女にするぞ?」
男はニヤリと笑いながら剣で攻撃してきましたわ。私も男の剣を自分の剣で受け止めましたがかなり力が強く吹っ飛ばされました。空中でクルクル回り体制を立て直します。
「何故貴方が私の前の人生の事を知っているのですか?」
「うーん。それはミカエルに聞け」
そうですわね。何だかミカエル様に訊けば大体の事が分かるような気がしてきましたわ。
「私、教会に入る前の日に大聖女様になろうと決心してきましたわ」
「こんなに大聖女になるのを嫌がってるお前が?まさか~」
「ええ。色々ありましてなろうと思いました......が、なるにはなりますが貴方を倒してからにします」
「はぁ~?何でだ?」
「それは、貴方への嫌がらせに決まっているではないですか。私の2回目の人生に勝手に関わってきて。貴方のせいで私の計画がどんどん狂ってきますの」
「あ?そっちこそ俺が楽しんでやってる事に首突っ込んでくるだろう?お前のせいで毎回中途半端な終わり方をするんだ。色々と金かけて仕込んでも全て変になるこっちの身にもなってくれよな~」
私達はそんな会話をしながらも戦い続けていますわ。少し離れた所でもう1人の男とミカエル様も戦っているので食堂の壁やら床やらが激しく壊れていきます。天井まてヒビが入ってきたところで男がピタリと攻撃を止めました。
「祝いはここまでだな。お前の力も大体分かった。お前......本気出してないだろう......。ムカつくわ~。じゃーな。またな!」
突然男が消えましたわ。
「あっ!ちょっと!逃げる気ですの!?こんな中途半端でよろしいの?」
私は空中から床に降りました。するとミカエル様も私の横に降りてきましたわ。
シールドで守っていたアレイ様も下に降ろして素早く足の怪我を治していきます。
「アレイ様?あの男と私の会話は聞こえていましたか?」
治療しながらさりげなく質問しました。
「いえ。シールド内に居たので音は勿論会話などは一切聞こえませんでしたよ?」
「そうですか......」
男が張っていた食堂の外側のシールドが解除されたようで聖騎士達がなだれ込んできましたわ。
お父様とお兄様も直ぐに私の元へ走って来てくれました。
「アイラ!怪我は?怪我はないか?」
お父様が焦っていますわ。珍しいです。
「大丈夫ですわ。あの男も本気は出していませんでしたので」
お父様が泣きそうなお顔で私を抱き締めてきました。その横でお兄様が羨ましそうな目で見ています。何か違うと思いますわ。ね?お父様はお兄様と違う意味で抱き締めてくれていますのよ?流石真の変態はこのような状況でもブレないのですのね。ある意味尊敬しますわ。
「ミカエルもあの男と互角に戦えるとは驚いたぞ。あの男が仕掛けていた攻撃はかなりの技だった。それを簡単に躱して同じぐらいの攻撃をかけるとは......」
お父様が私を腕から離しミカエル様に向き合いましたわ。その隙を狙ってお兄様が私の腕を掴もうとしました。ですが、お父様と話しながらもミカエル様の手がお兄様を阻止していますわ。
ミカエル様、ありがとうございます。感謝しますけれどお父様の言葉は聞き捨てならないですわ。あの男、私には手を抜いてミカエル様には本気を出していたって事ですわよね!?
お互いに本気では戦っていなかったという事でしたのね。でもミカエル様には......。と、いう事はミカエル様のことは確実に殺したかったのですね。
これは後から話を訊かなくてはなりませんね。
そんな私の目線に気がついたのかミカエル様が小さく頷きましたわ。
「アイラ!!怪我は無い!?」
ルカさんが走って来ましたわ。
私の体を上から下まで確認してぎゅーと抱き締めてきました。
「なっ!私は阻止されたのにこの男はいいとは何事だ!」
お兄様がギャンギャン隣で叫んでいますわ。うるさいです。
ルカさんの横には神官様も来ていました。
「凄い戦いを見せてもらったよ!やはりアイラ聖女は大聖女様になるべき方だ!あんなに綺麗な聖力は見た事がない!」
大聖女マニアの神官様は大興奮ですわ。
そんな神官様は食堂をぐるりと見渡して
「とりあえず今はこの破壊された食堂を修理しないとね」
小さくため息混じりに呟きました。ご、ごめんなさい。私もお手伝いしますわね。あんなに綺麗だった食堂が足の踏み場もないぐらい瓦礫の山になっていますもの。




