アトラシア第19章 開かれし水門
この水門が、世界の運命を変える。
第19章 開かれし水門
冥府は、厄災の渦中にあった。
暴走した冥術ウイルスにより、ミイラたちは蘇り、無数の屍が蠢いている。
その中を、巨大な黄金のスフィンクス——変貌したパトラが、狂気の咆哮と共に追いすがってきた。
ソウタはナギを抱き、サナと共に必死に走った。
冥府の奥深くに設けられた巨大な水門——かつて冥府を守るために作られた防衛施設。
それこそが、脱出の唯一の道だった。
だが、道はすでにミイラたちで埋め尽くされている。
絶体絶命のその時——ソウタに、再びモリヤの声が届いた。
『水門を開け。流れに乗れ』
指示は簡潔だった。
ソウタは筆を握りしめ、壁面に刻まれた術式の制御回路へ駆け寄った。 だが、制御回路のセキュリティは強固で、モリヤの力でも手に負えなかった。
そのとき、ナギがそっと囁いた。
「ここ、私が……少し細工しておいたんだ。」
ナギは、冥府に囚われていた間、密かに水門の制御回路に干渉していたのだ。 ソウタが筆を添えると、ナギの施した補助回路が反応し、解除された。
轟音と共に、巨大な水門が開き、濁流が押し寄せた。
スフィンクスと化したパトラとミイラの群れを巻き込み、凄まじい勢いで流れて行く。
ソウタはナギを抱え、サナと共に、奔流に足を取られながらも必死にしがみついた。
押し流される寸前、必死に石橋に飛び移り、なんとか脱出路へとたどり着く。
背後で、パトラの悲しげな咆哮が響いた。
そして、冥府は、濁流に沈んでいった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
どうぞ、続きを楽しみにしていてください。




