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アトラシア第18章 冥府の厄災

すべてが崩れゆく。

  それでも、少年は妹を抱きしめる。

第18章 冥府の厄災


 無数の傀儡と合成獣のネクロスファングたちがソウタたちを取り囲み、逃げ場はどこにもなかった。


 ソウタは腰に筆と背に回転ノコギリを背負っている。サナは背に火縄銃を背負い、手には槌を握っている。


 二人は視線を交わし、装備に手をかけた。


 その攻撃は苛烈だった。傀儡たちは剣を抜き一糸乱れぬ動きで斬りかかり、ネクロスファングは煙をまき散らして視界を遮りながら跳びかかってくる。


 サナの火縄銃は煙に乱され、狙いが定まらない。ソウタも理術の描写を妨げられる。


「くっ……多勢に無勢、か……!」


「ソウタ、こっちも囲まれてる!」


 そのとき——。


『ソウタとサナよ。力を貸そう』


 モリヤの声だ。


 次の瞬間、ソウタの体を駆け巡る衝撃。新たな回路が開かれる感覚。


 隣にいたサナもまた、槌が火焔を纏い、焔匠としての力が、みなぎっていた。


「サナ、行こう!」


「うん!」


 二人は同時に駆け出した。ソウタは理術で重力を操り、傀儡たちを次々と弾き飛ばす。サナは火焔を纏った槌で炎の刃を生み出し、煙を吹き飛ばしながらネクロスファングに立ち向かう。


 ネクロスファングの一体が跳びかかる。サナが爆風で煙を散らし、ソウタがその隙に筆で描いた重力陣で動きを封じ、回転ノコギリで真っ二つにした。


「再生してる!? 厄介な……!」


 もう一体、再構成された骨の獣が飛びかかってきたが、サナの炎の刃がそれを両断した。


 バタバタと、敵は倒れていった。


 敵の動きが止まった隙を突き、ソウタは一目散に広間の奥へ駆けた。


 そこには、半透明の術式に包まれた棺の中で眠るナギの姿があった。


「ナギ!」


 ソウタは筆で術陣を描き、棺を封じる術式の回路を解析していく。モリヤから授かった新たな理術の力が、彼の指先に確かな道筋を示していた。


 封印は解除され、棺の蓋が開いた。


 ナギは静かに目を開け、ソウタを見つめた。


「……お兄ちゃん……?」


 その声に、ソウタの胸が熱くなる。


「ナギ、迎えに来た。もう大丈夫だ」


 ナギをそっと抱きかかえたソウタは、サナと目を合わせ、うなずき合った。


 追い詰められたパトラは、黒銀の柄杓を静かに振り、空中に水が滲み出し、ゆらめく水滴で術陣を描いた。


「……ここまで来たなら、あなたたちも見届けてくださいね」


 そう優しく微笑むと、胸元から紫色に輝く小瓶と注射器を取り出し、中身を自らに注入した。


 パトラの体が、ゆっくりと変貌を始める。


 白い肌は黄金色に染まり、四肢はしなやかに伸び、背には巨大な翼のような装甲が形成された。姿はまるで、神話に登場するスフィンクスのよう。


「これが……私の、答えです」


 完全に合成獣のスフィンクスとなったパトラは言葉を失った。


 それでも瞳には、底知れぬ狂気と哀しみが宿っていた。


 パトラが描いた術陣は淡い光を帯びた水の軌跡になり広間を走り、棺に眠るミイラたちの足元へと到達する。


 術陣が発光し、パトラの術式が冥府中に作用した。


 棺に眠っていた無数のミイラたちが、一斉に起き上がる。


 冥術で作られたウィルスが制御不能になり、冥府全域が厄災に呑まれていく——。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

どうぞ、続きを楽しみにしていてください。

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