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アトラシア第17章 冥府の対話

死を越える術を求める者と、妹を守ろうとする者が、ついに対峙する。

冥府の深奥で交わされる言葉は、冷たく、そして静かだった。

第17章 冥府の対話


冥府の大門は静かに開かれた。その奥に広がるのは、黄金と黒で飾られた静謐な回廊。理術士見習いとしての正式な外套を羽織ったソウタは、焔匠見習いのサナとともに、神殿の奥へと足を進めていく。


これまで幾度も命の危機をくぐり抜けてきた。ようやく、ナギに会えるかもしれない——そんな予感が、緊張とともに胸を締め付けた。


玉座の間に、パトラが座していた。艶やかな黒髪、透き通るような白い肌、吸い込まれるような青い目、いかにも冥府セムカトラの女王と言うような黄金の装飾を纏っている。


「ようこそお越しくださいました、ソウタさん。……そして、サナさんも。おふたりにこうしてお会いするのは、初めてですね。ずっとお話したいと思っていました」


その声は、澄んだ鈴のように柔らかく、丁寧で、どこか無垢な印象さえ与える。まるで少女のような雰囲気に、サナが少し目を見開いた。


「パトラ。ナギを、返してもらいに来た」


真正面から切り出したソウタに、パトラはほんの少しだけ困ったように微笑む。


「……申し訳ありません。でも、それは少し難しいお願いなのです。私たちは、不老不死という未踏の理に挑んでいます。ナギさんは、その可能性を秘めた存在でどうしても必要なのです」


「それは、君の都合だ。ナギは君の所有物でも、実験体でもない」


「ええ、仰るとおりです。……とても大切な人なのでしょうね。でも、どうしても“死”を超える術を見つけなければならないのです」


ソウタはパトラの目をじっと見つめた。恐怖も怒りも感じさせない、ただただ静かで、澄み切った意志を宿す瞳。


彼女は冥術を駆使して何百年も生きているのだろう。死が怖いに違いない。けれど、ナギを犠牲にするわけにはいかない。


「……ナギはまだ10歳だ。いったい何年生きたら満足するんだ?」


広間の奥、半透明の術式に覆われた棺の中で、眠るナギの姿が見える。


パトラは黙していた。しばらくして、少しだけ寂しげに微笑む。


「そうですね……。私たち半神には“満足”という感情はありません」


扉が静かに開き、傀儡と合成獣の群が現れた。


骨と煙が混ざり合った獣たち——冥府が生み出した合成獣「ネクロスファング」。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

どうぞ、続きを楽しみにしていてください。

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