表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

アトラシア第16章 冷たい夜風

問いは風に揺れ、答えはまだ遠い。

第16章 冷たい夜風


 森を抜け、術式荷車が乾いた地面を進んでいる。風が吹き木々がざわめいている。


 グリュムナが立ち止まり、鼻を鳴らす。疲れか、それとも何かの気配かとソウタは身構えた、しかしグリュムナは再び歩き始めた。


「……今日はここで休もう」

 ソウタの言葉に、サナがうなずき、荷車の展開術式を起動した。車体が変形し、天蓋と小さな囲いが現れる。旅の仮宿があっという間にできあがる。


 夜風はやや冷たく、サナは焔術で小さな火を灯した。焼き干し肉を温め、干し果物を煮て甘い香りを広げる。焔術と調理器具の相性は良く、手早く簡素な夕食が整う。


 ふたりと一体は、簡易ベンチに並んで座り、湯気の立つ器を手に取った。


「……あの神殿、きっと他にもあるんだろうね」

 サナの言葉に、ソウタは頷くでも否定するでもなく、火を見つめた。


   翌日、ふたりは交易都市へ入った。小さな宿場町ながら、冥府とウルクの交易線に位置するため、人も品も多い。


 市場では焔術式の鍛冶工房や、冥術式の保存棚が並び、理術の古書を扱う屋台もちらほら見える。ソウタは興味深そうに、複雑な折符の一節を読み解こうとしていた。


 一方、サナは飾り細工のついた火打石に目を止め、思わず立ち止まる。

「ねえ、これ……かわいくない?」


「焔術の起爆式にしては、装飾が過ぎるな」

「そこがいいの」


 ふたりのやりとりに、店主の老女が笑う。 「あんたたち、旅の途中かい?」 「まぁ、そんなところです」  サナが苦笑いで答えると、老女は少し真顔になって呟く。


「最近このあたりでね、冥府の傀儡を見たって噂があるのさ。厄介事はごめんだね」


 ふたりの表情がわずかに硬くなる。


 その夜、仮宿の窓辺にて。  焔術式の小型灯火が、ゆらりと揺れていた。


「神を信仰するって、どういうことなんだろうね」  サナの問いに、ソウタは窓の外の星を見て答えた。


「……運命を受け入れること……なのかも知れないな」


サナの問いが続く


「でも冥府のパトラもウルクのギル=メシュも運命なんて信じるとは思えないよ?」


ソウタは何も答えられなかった。


 風が冷たい夜だった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

どうぞ、続きを楽しみにしていてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ