アトラシア第14章 森に潜む合成獣
静かな森に現れた、異形の咆哮。それは、古の記憶を呼び覚ます導きだった。
第14章 森に潜む合成獣
午後、ふたりと一体は、丘陵を抜けてゆるやかな森道を進んでいた。このあたりは地図にも「獣注意」と書かれた区域であり、ソウタは地図の位置を確認しながら慎重に荷車を進めていた。陽が傾き、森は暗く、静かになっていく。
そのとき、グリュムナが足を止めた。「……何か来る」サナが槌を構える。そして森の奥、倒木の向こうから、黒い毛並みと蛇のようにのたうつ尾を持つ合成獣が姿を現した。イノシシの頭部に無数の目を持ち、皮膚の一部は樹皮のように硬化している。種族名はバロクスと言う。
「来るぞ!」ソウタは、回転ノコギリを起動する。グリュムナが一歩前に出て牙を剥き、唸り声をあげると、バロクスはそれに反応して突進を始めた。
バロクスの咆哮に、周囲の鳥が一斉に飛び立った。
「撃つよ!」
サナが火縄銃の導火線に火を灯し、引き金を引く。乾いた音と共に弾丸がバロクスの肩をかすめた。
それが合図だった。
ソウタは筆を素早く走らせ、バロクスの足元に防御と足止めの術陣を展開する。
「止まった! 今だ、サナ!」
サナは腰に提げた煙管を手に取り、素早く煙で術陣を描いた。
「炎、纏って!」
槌が術陣の中心を通過した瞬間、赤く輝きながら火を纏った。
サナの槌が火を纏いながら振り下ろされ、バロクスの前脚に衝撃を与える。だが、獣はしぶとく咆哮し、再び跳躍して突進してくる。
グリュムナが咄嗟に横から突っ込み、獣の軌道を逸らす。
「トドメ!」
ソウタは回転ノコギリを握り直し、理術で加速をかけながらバロクスの胴体を横に走らせた。
骨を断ち切る音とともに、バロクスの動きが止まった。
息をつく暇もなく、あたりを警戒するふたり。だが、他の合成獣の気配はなかった。
「なぜこんな場所にバロクスなんているんだろう?……」サナが呟いた。
ふとソウタが目を上げると、倒れたバロクスの奥──木々の切れ間の向こうに、苔むした石造りの門が見えた。森の奥に隠れるように存在する、それは神殿の遺跡のように見えた。
「サナ。あれ……見えるか?」「……うん。遺跡だね、調査しよう」
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