アトラシア第13章 旅路の始まり
道はまだ優しい。けれど、その先には冥府が待つ。
第13章 旅路の始まり
理術士見習いのソウタと焔匠見習いのサナ、そして彼らの旅の相棒である合成獣グリュムナは、ウルクの街を後にした。早朝の市門を抜けると、石畳の道はすぐに土と草の混ざった土道に変わり、都市の喧騒はゆっくりと後方に遠ざかっていく。
グリュムナが引く術式荷車の車輪は、衝撃吸収の術式によって静かに回り、荷車の内部では軽く調整された寝具や保存食、焔術式の簡易調理具が整然と収まっていた。旅はまだ始まったばかりだが、ふたりはすでにこの生活にある程度の馴染みを見せていた。
「……この先、本当にナギの手がかりが見つかるのかな」
サナが、荷車の縁に腰掛けながらぽつりと呟く。
「情報があるって言ってたのはケイノだ。嘘を言うとは思えない」
ソウタはグリュムナの背に軽く手を置きながら答える。
空はまだ薄暗く、遠くの丘陵地帯には朝靄が漂っている。道の脇には古い祠や、崩れかけた石塔が点在しており、アトラシアの歴史の深さを静かに語っていた。祠には「神に背いた都市が、術式爆弾によって消炭にされた」と言う伝承が刻まれているが、足を止めるものはいない。
陽が昇るにつれて気温は上がり始め、ふたりは荷車を止めて休憩を取ることにした。荷車の天蓋を展開すると、薄い布の影がちょうど良い日除けとなり、風が抜けていく。
サナは荷台から果物を取り出し、簡単な朝食を用意する。ソウタは道具袋を開いて地図とコンパスを広げ、現在地の確認を行った。
旅はまだ穏やかで危険も少ない。しかし、彼らの進む先には冥府の影があり、ナギが助けを待っている。
旅は、始まったばかりだった。
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