↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/330

第八十二章 次に開く扉

月曜日の放課後。


悠真は帰宅すると、学校から持ち帰ったプリントを机に並べた。


週末にたくさん遊んだせいか、今日は少し眠かった。


それでも、宿題を後回しにするつもりはなかった。


問題を一つずつ解き、最後に答えを確認する。


全部終わったところで、悠真は椅子の背にもたれた。


「終わった……」


母親が部屋の入口から顔をのぞかせた。


「今日は疲れているみたいね」


「ちょっとだけ。でも、宿題は終わったよ」


「そう。無理しないでね」


母親はそれだけ言って、部屋を出ていった。


悠真は少し休んでから、クロスギアを起動した。


【メインロビー接続中】


【現在のオンライン人数:209,572】


週末に比べると、ロビーは落ち着いていた。


悠真はフレンド一覧を確認した。


KAIはオンライン。


RIONは、まだ接続していなかった。


悠真がKAIにメッセージを送ると、すぐに返事が来た。


《旧輸送路、今日も見に行くのか?》


《うん。でも、まだ通れないかもしれない》


《じゃあ、先に別の任務をやろうぜ》


悠真は少し考えてから返事をした。


《分かった。終わったら見に行こう》


二人は通常任務を選択した。


          *


任務は、山間部の整備拠点へ交換部品を届けるものだった。


戦闘は少なかったが、輸送経路の途中には細い橋があった。


橋の上では、二台のNPC輸送車両が向かい合って停止していた。


どちらも通行しようとして、道を譲れなくなっているらしい。


「どうするんだ、これ」


KAIが言った。


悠真が近づくと、輸送車両の運転手が説明した。


「先に進みたいのだが、車両が大きすぎてすれ違えない。後方の車両を退避させる必要がある」


悠真たちは周囲を確認した。


橋の手前には、小さな退避スペースがある。


しかし、そこへ入るには、手前に積まれた資材箱を移動させなければならなかった。


「箱をどかせば、後ろの車両を下げられるんじゃないかな」


悠真が言った。


KAIと協力して資材箱を移動させると、NPCの運転手が車両をゆっくり後退させた。


先に進む車両が橋を渡り、続いて後方の車両も動き始める。


数分後、道は再び通行可能になった。


【輸送経路:確保】


【任務進行:再開】


「よし、これで先へ進めるな」


KAIが言った。


悠真は笑った。


「敵を倒すだけじゃない任務も、意外と時間がかかるね」


「でも、こういうのも悪くない」


二人は整備拠点へ部品を届け、任務を完了した。


ロビーへ戻ると、RIONがオンラインになっていた。


悠真は、旧輸送路の状況を確認するために合流を呼びかけた。


          *


森林集落へ到着すると、入口付近の景色がまた変わっていた。


以前は通行止めだった区間に、簡易の通行案内が設置されている。


作業員たちは、崩れた斜面の補強を終えたらしい。


ただし、道の奥にはまだ柵が残っていた。


悠真が作業担当のNPCに話しかける。


「今日は先まで行けますか?」


「保守所までは問題ない。だが、その先はまだ確認が終わっていない。今朝、別の作業班が進んだが、途中で地面の崩落を見つけた」


「崩落ですか?」


「ああ。通路の一部が地下へ落ち込んでいる。周囲の安全を確認するまで、通行は許可できない」


悠真は柵の向こうを見た。


ここからでは、崩落した場所は見えない。


「いつ通れるようになりますか?」


「まだ分からない。補強だけで済むか、別の経路を探す必要があるかも、調査してみないと判断できない」


NPCは作業端末を確認し、別の場所へ歩いていった。


「また待ちか」


KAIが言った。


「仕方ないよ。危ないところを無理に進んでも、何もできないし」


RIONは地図を開いた。


「昨日の地図だと、この先で道が南に曲がっている。崩落しているのがその手前なら、迂回路があるかもしれない」


悠真は旧地図を確認した。


確かに、保守所から先には二つの経路が描かれている。


一つは南へ向かう道。


もう一つは、東側の斜面に沿って伸びる細い道だった。


ただし、東側の道には途中で線が途切れている部分がある。


「こっちも調べてみようか」


悠真が言った。


三人は、通行が許可されている範囲内で、東側の道の入口を探すことにした。


          *


道の入口は、保守所から少し戻った場所にあった。


草木の間に、古い石段が残っている。


入口には標識があったが、文字はほとんど読めなかった。


RIONが周囲を確認する。


「地図にある道と位置は合っている。ただ、現在の通行可能区域には含まれていないね」


KAIは石段の先を見た。


「入れないのか?」


悠真が近づくと、画面に表示が出た。


【未開放区域】


【通行状態:調査待ち】


【現在の進入:不可】


「やっぱり駄目みたい」


悠真は残念そうに言った。


だが、すぐに画面の下に別の項目があることに気づいた。


【区域情報:部分確認】


悠真が選択すると、短い説明が表示された。


【旧設備管理路】


【用途:不明】


【管理記録:未確認】


「設備管理路……」


RIONが読み上げた。


「旧輸送路とは別の道かもしれないね」


KAIが言った。


「あるいは、輸送路の設備を管理するための道かもしれない」


悠真は表示を保存した。


【旧設備管理路:存在確認】


【通行状態:未開放】


【用途:未特定】


新しい道は見つかった。


しかし、そこへ進むことはできなかった。


三人は無理に突破しようとはせず、保守所まで戻ることにした。


          *


帰り道、悠真は保守所の周囲をもう一度見回した。


NPCの整備士が、建物の外に新しい部品箱を並べていた。


「こんにちは」


悠真が声をかける。


「また来たのか。今日は通路の先へ行けなかったようだな」


「崩落しているって聞きました」


「ああ。こちらでも、迂回路がないか調べる予定だ。古い地図には、今は使われていない道がいくつか描かれているからな」


悠真は、先ほど見つけた旧設備管理路のことを伝えた。


整備士は少し考えた。


「管理路か。確かに、そういう道があってもおかしくはない。ただ、今の段階では安全に通れるかどうかも分からない」


「調査するんですか?」


「修復班と相談してみる。通れる見込みがあれば、入口から確認することになるだろう」


整備士は部品箱を持ち上げ、建物の中へ運んでいった。


悠真はその後ろ姿を見送った。


自分たちが見つけた道を、NPCたちも調査するかもしれない。


だが、いつ調査が始まるかは分からない。


それに、調査の結果、道が通れないと判断される可能性もある。


悠真は地図を保存し、メインロビーへ戻った。


          *


その夜、運営施設では旧輸送路の進行状況が確認されていた。


【旧輸送路】


【保守所までの通行:可能】


【前方区間:崩落確認】


【迂回路:未確認】


【旧設備管理路:入口確認】


担当者が報告した。


「プレイヤーが旧設備管理路の入口を発見しました。ただし、区域は未開放で、進入はできません」


責任者は地図を確認した。


「旧地図との照合は?」


「位置はおおむね一致しています。用途については、現時点では判断できません」


「修復班の作業は続けていい。ただし、プレイヤーが発見したという理由だけで区域を開放する必要はない。安全確認と地形調査を優先してくれ」


「了解しました」


画面には、旧輸送路の周辺地図が表示されていた。


保守所から南へ向かう道。


東側へ延びる旧設備管理路。


その先には、まだ確認されていない区域が残っている。


責任者は、別の画面に目を向けた。


旧型通信設備の調査記録は、相変わらず断片的だった。


新しい通信先は見つかっていない。


旧設備管理路が通信設備と関係している証拠もない。


「こちらは引き続き別系統で調べよう」


担当者が記録を更新した。


【旧型通信設備の照合:継続】


【旧輸送路の修復:継続】


【旧設備管理路との関連性:未確認】


二つの調査は、まだ別々に進んでいた。


悠真たちが次にログインするまでにも、NPCたちは道路の補強を続け、設備を点検し、必要な資材を運ぶだろう。


そして、次に通れるようになる道がどこなのかは、まだ誰にも分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。