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《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


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第四十二章 失敗した動き

予測表示が消えた。


ほんの一瞬だった。


けれど、悠真には十分だった。


「今だ!」


機体を前へ出す。


大型機体も反応する。


しかし、いつものように先回りしてこない。


悠真はそのまま接近した。


そして、これまで一度も成功したことのない操作を使った。


急停止。


反転。


逆方向へのブースト。


さらに、攻撃操作を途中でキャンセルする。


機体が大きく揺れた。


「うわっ……!」


操作を間違えたときと同じような、不格好な動きだった。


大型機体の攻撃が空を切る。


【予測対象外】


また表示された。


悠真は驚いた。


「通った……」


KAIが叫ぶ。


「今の何だ?」


「昔、一回だけ試した」


「なんで使わなかった?」


「失敗したから」


悠真は答えた。


その操作は、以前の戦闘で何度か試していた。


機体の姿勢が崩れる。


速度も落ちる。


普通に考えれば、使う意味がない。


だから、いつの間にか使わなくなっていた。


けれど。


今は、その失敗が役に立った。


「もう一回!」


KAIが前へ出る。


大型機体がKAIへ向かう。


KAIは攻撃を途中でやめた。


敵が反応する。


その瞬間、RIONが射撃する。


大型機体が回避する。


そこへ悠真が入る。


今度はさっきと違う動きをした。


一度、前へ出る。


止まる。


少し下がる。


そして、何もしない。


敵の攻撃が空を切った。


【予測対象外】


「まただ!」


RIONが声を上げる。


大型機体の動きが一瞬だけ止まる。


「今!」


三人が攻撃する。


敵の装甲が大きく砕けた。


【耐久値:7%】


しかし、まだ倒れない。


大型機体が後退する。


その動きは、これまでより不自然だった。


「逃げた?」


RIONが言う。


悠真は首を振った。


「違うと思う」


「じゃあ何?」


「次の動きを考えてる」


大型機体が停止した。


その周囲に、また大量のデータが浮かび始める。


【新規行動パターン】


【未登録操作】


【予測不能行動】


【再解析】


「こいつ、まだ学習するのか……」


KAIが呟く。


悠真は画面を見た。


「たぶん」


「じゃあ、さっきの動きももう通じない?」


「そうかもしれない」


「じゃあ、どうする?」


悠真は少し考えた。


「また違うことをする」


「そんな簡単に言うけどな」


KAIが笑う。


「こっちは一回しか使えない技ばかりじゃないぞ」


「うん」


悠真も笑った。


「だから、三人で違うことをすればいい」


三人は互いに顔を見た。


同じ戦い方をしなくてもいい。


同じ動きをしなくてもいい。


むしろ、違う方がいい。


KAIは近距離。


RIONは遠距離。


悠真はその間を動く。


それぞれが別の判断をする。


大型機体は三人の過去のデータを持っている。


けれど、三人が今この瞬間に何を考えているかまでは分からない。


「行くぞ」


KAIが突っ込んだ。


敵が反応する。


KAIは途中で攻撃を変えた。


RIONが反対側から射撃。


敵がRIONへ向く。


その瞬間、悠真が敵の背後へ回る。


攻撃。


【耐久値:5%】


大型機体が振り向く。


悠真は逃げる。


敵が追う。


しかし、悠真は突然止まった。


敵も止まる。


「……」


一秒。


二秒。


悠真は何もしない。


大型機体が攻撃を放つ。


悠真は直前で横へ移動する。


そして、敵の腕が壁に突き刺さった。


「今!」


KAIが攻撃する。


RIONも続く。


大型機体の装甲がさらに崩れる。


【耐久値:2%】


あと少し。


悠真は武器を構えた。


敵がこちらを見る。


赤い光が、まっすぐ悠真を捉える。


【YUMA行動予測:48%】


数字が表示される。


悠真はその数字を見て、少しだけ笑った。


最初は89%だった。


それが、今は半分以下。


「まだ読めてない」


大型機体が動く。


悠真は前へ出る。


敵も前へ。


悠真は攻撃する。


途中でやめる。


敵が反応する。


その瞬間、悠真は逆方向へ移動した。


【予測対象外】


敵の動きが一瞬止まった。


悠真は迷わなかった。


「これで終わり!」


最後の一撃。


大型機体の胸部に攻撃が入る。


巨大な亀裂が走った。


【耐久値:0%】


大型機体が停止する。


しばらく何も起こらない。


そして――


【戦闘終了】


【未知の大型機体:撃破】


三人の画面に結果が表示された。


RIONが息を吐く。


「……終わった」


KAIも武器を下ろした。


「長かったな」


悠真は結果画面を見た。


【総合評価:S+】


【共同戦闘評価:S+】


【特殊任務進行率:67%】


「……67%?」


悠真が呟いた。


「え?」


RIONも画面を確認する。


「まだ終わってない」


KAIが眉を寄せた。


【特殊任務:北方鉱山・深層探索】


【進行率:67%】


【次のエリアを解放します】


「次があるのか」


三人が同時に奥を見る。


さっきまで大型機体が立っていた場所。


そこに、新しい通路が開いていた。


その先には、光がない。


ただ、暗い。


そして、中央に小さな表示が浮かんでいる。


【深層第二区画】


【推奨参加人数:表示不能】


【帰還地点:未設定】


【特殊任務継続中】


悠真は少し黙った。


「……行く?」


KAIが聞いた。


悠真は時計を見た。


もうかなり時間が経っている。


「今日は、ここまでにする」


「え?」


RIONが驚く。


「まだ時間あるぞ」


「うん。でも、明日学校だから」


KAIが笑った。


「そういうところは普通だな」


「普通だよ」


悠真は答えた。


「ゲームは明日もできるから」


三人はそこで別れた。


悠真はログアウトした。


画面が暗くなる。


部屋の外から母親の声が聞こえた。


「悠真、もう終わった?」


「うん」


「お風呂入って、早く寝なさい」


「分かった」


悠真は椅子から立ち上がった。


その日の夜。


クロスギアの内部では、三人が去ったあとも北方鉱山の深層部だけが静かに稼働していた。


誰も操作していない。


それでも、システムは動いている。


【戦闘データ保存】


【未知の操作データ保存】


【YUMA:新規行動パターン登録】


そして、そのさらに下。


通常のプレイヤーには表示されない領域に、一つの処理が残っていた。


【最適戦闘者生成計画】


【データ収集率:67%】


【不足データ:33%】


【収集を継続します】


画面は静かに消えた。


まだ誰も、その表示を見ていなかった。

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