↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/330

第三十八章 深層の入口

放課後。


悠真は家に帰ると、ランドセルを机の横に置いた。


「ただいま」


「おかえり。今日は早いね」


「うん」


母親が時計を見る。


「宿題は?」


「今からやる」


「じゃあ、先に終わらせちゃいなさい」


「分かった」


昨日と同じだった。


算数。


国語。


明日の準備。


悠真は一つずつ終わらせていった。


途中で一度だけ、昨日の北方鉱山のことを思い出した。


深層部。


表示されなかった推奨人数。


未知の大型反応。


それから、解析途中の未知の鉱石。


早く続きを見たい。


けれど、宿題を残したままゲームを始める気にはならなかった。


全部終わってから、パソコンを起動する。


「終わった?」


母親が部屋の入口から聞いた。


「うん」


「じゃあ、今日は何時まで?」


悠真は少し考えた。


「九時半まで」


「昨日と同じね」


「うん」


「分かった」


母親はそれ以上何も言わなかった。


ゲームが始まる。


【クロスギア】


【現在オンライン:241,982】


昨日よりさらに減っている。


悠真は少しだけ数字を見た。


そして、すぐに北方鉱山へ向かった。


メインロビーにはKAIとRIONもいた。


「来たか」


KAIが言う。


「うん」


「深層部の更新、見た?」


「見た」


RIONが通信に入ってきた。


「昨日より明らかにおかしい」


「何が?」


「敵のデータが、途中から全部空白なんだ」


悠真も確認する。


確かにそうだった。


【敵名称:未登録】


【属性:未登録】


【戦闘能力:解析中】


【行動パターン:解析中】


通常の敵なら、少なくとも名前と基本情報くらいは表示される。


今回は何もない。


「バグかな?」


悠真が言う。


「運営に問い合わせた」


KAIが答えた。


「返事は?」


「調査中だって」


「じゃあ、まだ分からないんだ」


「そういうこと」


三人はしばらく黙った。


やがてKAIが言った。


「とりあえず行こう」


「うん」


三機が転送される。


昨日までの北方鉱山とは違った。


雪は降っていない。


空気も静かだった。


入口に立った瞬間、システム表示が出る。


【深層部】


【現在地図情報:不完全】


【通信状態:不安定】


【帰還地点:未設定】


悠真は眉を寄せた。


「帰還地点がない」


RIONが答える。


「俺も見えてる」


KAIが前へ進む。


「行けるところまで行こう」


三人は歩き始めた。


最初の十分ほどは、敵が出なかった。


何もない。


ただ、暗い鉱山が続いている。


「静かすぎるな」


RIONが言った。


「うん」


悠真も同じことを感じていた。


普通のゲームなら、深い場所へ行くほど敵は強くなる。


けれど、ここには敵がいない。


代わりに、壁の奥から微かな音が聞こえていた。


カチ。


カチ。


一定の間隔。


悠真は立ち止まった。


「何?」


KAIが振り返る。


「音がする」


「どこから?」


悠真は壁に近づいた。


機体を止める。


耳を澄ます。


カチ。


カチ。


カチ。


「向こう側」


「壁?」


「たぶん」


悠真は装備画面を開いた。


昨日手に入れた未知の鉱石。


特殊反応。


それを選択する。


【特殊鉱石】


【反応対象:近距離】


「これ、使えるかも」


「どうする?」


RIONが聞く。


悠真は壁の一部分を調べた。


微弱な反応がある。


「ここ」


攻撃する。


一度。


二度。


三度。


壁に亀裂が入った。


そして――


崩れた。


その向こうに、小さな空間が現れた。


中央には、巨大な機械が置かれていた。


採掘装置に見える。


けれど、普通の採掘装置とは違う。


機械の中心に、青白い光が浮かんでいた。


「何だ、これ」


RIONが近づく。


その瞬間。


【特殊装置を確認】


【名称:――】


【名称:未登録】


【状態:稼働中】


悠真は画面を見つめた。


「稼働中……?」


ゲームの中の装置なら、それほど珍しくない。


けれど、この装置には奇妙なところがあった。


誰が作ったのか。


何のためにあるのか。


どのクエストに関係しているのか。


何も表示されない。


KAIが装置の周囲を確認する。


「触らない方がいいか?」


悠真は少し考えた。


「……分からない」


「珍しいな。お前が分からないって言うの」


「だって、本当に分からないから」


そのとき。


装置の中央に浮いていた光が、突然大きくなった。


三人の機体が同時に警戒態勢に入る。


【異常反応】


【データ同期を開始】


「同期?」


悠真が画面を見る。


次々と文字が流れていく。


【戦闘データ】


【プレイヤー行動データ】


【NPC行動データ】


【装備データ】


【ワールドイベントデータ】


【PVPデータ】


「……何だこれ」


RIONが呟いた。


悠真は画面を見つめた。


見覚えのある言葉が並んでいる。


戦闘データ。


装備データ。


ワールドイベント。


PVP。


そして、その一番下。


【プレイヤー個別データ】


その横に、三人の名前が表示された。


【KAI】


【RION】


【YUMA】


「俺たちのデータ……?」


KAIが一歩下がった。


その瞬間、画面が切り替わった。


【データ取得完了】


【深層探索者を確認】


【戦闘能力測定を開始します】


「待って」


悠真が言った。


「これ、任務なの?」


誰も答えない。


システムからも返事はない。


ただ、機械の奥から低い音が響いた。


ゴウン――。


鉱山全体が震えた。


壁から砂が落ちる。


「来るぞ!」


KAIが叫ぶ。


三人が武器を構える。


暗闇の奥。


何かが動いた。


巨大だった。


昨日戦った敵とは比べものにならない。


しかし、姿はまだ見えない。


赤い光だけが、暗闇の中に浮かんでいる。


一つ。


二つ。


そして、三つ。


悠真は武器を構えながら、相手を見た。


「……三つ?」


その瞬間、システム表示が出た。


【未知の大型機体を確認】


【解析率:0%】


【戦闘データ取得を開始】


悠真の表情が変わった。


「これ……」


ただの敵ではない。


何かを測るために、用意されたように見えた。


次の瞬間。


大型機体が動いた。


床が大きく揺れる。


KAIが前へ出る。


「来るぞ!」


三人の機体が同時に散開した。


最初の一撃が、中央の床を砕いた。


悠真は横へ飛びながら、敵の動きを見る。


まだ分からない。


攻撃速度。


射程。


死角。


弱点。


何も知らない。


だからこそ――


「まず、見る」


悠真は武器を構えた。


そして、未知の敵との戦闘が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。