↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/320

第二十二章 外の世界の反応

 それから一週間。


 《クロスギア》の名前は、ゲームをしない人たちにも知られるようになっていた。


 ニュース番組では、現実世界に突然現れる機械の映像について連日報道されている。


 専門家が原因を推測する。


 映像技術の専門家。


 通信技術の研究者。


 ゲーム開発者。


 物理学者。


 それぞれ違う説明をする。


「高精度なホログラムではないか」


「既存の通信技術では説明できません」


「複数地点で同時に観測されている以上、単純な映像投影とは考えにくい」


「現時点では、物理的な干渉は確認されていません」


 結論は出なかった。


 ただ、一つだけ共通していることがあった。


 誰も、その現象を無視できなくなっていた。


 悠真も、学校で何度も聞かれた。


「悠真、《クロスギア》やってるんだよね?」


「うん」


「昨日のニュース見た?」


「見た」


「ゲームの中でも何か起きてる?」


 悠真は少し考えた。


「起きてる」


「やっぱり?」


「でも、何なのかは分からない」


「運営は?」


「分からない」


 友達は少し残念そうな顔をした。


「YUMAなら知ってると思った」


「僕はただのプレイヤーだよ」


「でも一位じゃん」


「それと関係ないよ」


 昼休み。


 教室のテレビでは、また現実世界の映像が流れていた。


 今度は以前よりはっきりしている。


 巨大な機体がビルの上空に浮かんでいる。


 輪郭が見える。


 腕も見える。


 顔もある。


 だが、建物には触れていない。


 車も、人も、何も壊していない。


 数十秒後。


 消えた。


 教室から声が上がった。


「すげえ……」


「本当にゲームみたい」


「これ、いつか触れるようになるのかな」


 悠真は黙って画面を見ていた。


 昨日、ゲームの中で聞いた声を思い出す。


 ――ここは、どこだ?


 あの存在は、現実世界にいるのか。


 それとも。


 ただゲームの中から投影されているだけなのか。


 悠真には判断できなかった。


 その日の夜。


 ログインすると、メインロビーの雰囲気が以前と少し違っていた。


 人が減っている。


【オンラインプレイヤー:319,806】


 十万人近く減っているわけではない。


 だが、数週間前と比べれば明らかだった。


 チャットも静かだった。


『最近、怖くなってきた』


『俺はもうログインしない』


『ゲームは好きだけど、現実で何が起きるか分からない』


『逆に今しか見られないイベントだと思ってる』


『俺も続ける』


『人それぞれだな』


 悠真はその会話を眺めていた。


 そして、ふと思った。


 ゲームをやめる理由も。


 続ける理由も。


 人によって違う。


 誰かにとっては、怖い。


 誰かにとっては、面白い。


 誰かにとっては、ただのゲーム。


 誰かにとっては、毎日の生活の一部。


 悠真にとっては。


 まだ、好きなゲームだった。


「今日もやろう」


 普通の任務を選ぶ。


 任務開始。


 敵を倒す。


 次の敵。


 また倒す。


 いつものゲームだった。


 その途中。


 突然、NPCが話しかけてきた。


「おい」


「ん?」


「最近、外から来る奴が減ったな」


 悠真は少し驚いた。


「分かるの?」


「分かるさ」


 NPCは周囲を見る。


「街が静かになった」


「……そうだね」


「何かあったのか?」


「分からない」


「そうか」


 NPCはそれ以上聞かなかった。


 任務終了。


 悠真は街へ戻った。


 そこには、以前より少ないプレイヤーしかいなかった。


 しかし、NPCたちは普通に暮らしている。


 商店は開いている。


 工場は動いている。


 学校らしい建物から子供たちが出てくる。


 夕方になる。


 街灯が点く。


 悠真は、その様子をしばらく見ていた。


 ゲームの外では。


 この世界がニュースになっている。


 研究されている。


 政府にも注目されている。


 しかし、この街の人たちは知らない。


 自分たちが観測されていることも。


 自分たちの世界が、別の世界から見られていることも。


 そして。


 悠真自身も、まだ完全には理解していなかった。


 その頃。


 運営会社の会議室。


 研究員が資料を配っていた。


「現実側での投影現象は、現在までに二百八十三件確認されています」


「物理的被害は?」


「ゼロです」


「人的被害は?」


「ゼロです」


「通信インフラへの影響は?」


「一部の観測機器に軽微なノイズが発生していますが、日常生活への影響はありません」


「ゲーム側は?」


「通常運営を継続しています」


「プレイヤー数は?」


「減少しています」


 画面にグラフが表示された。


 下降線。


 以前より急になっている。


 研究員が続ける。


「現実世界での報道が増えるほど、離脱率も上昇しています」


「逆に残っているプレイヤーは?」


「ログイン頻度が高くなっています」


「どういうことだ?」


「離脱した人の分だけ、残ったプレイヤーの平均プレイ時間が増えています」


 責任者は画面を見る。


「つまり?」


「プレイヤーの数は減っていますが、戦闘データの密度は上がっています」


 別の研究員が続ける。


「特にYUMAです」


 画面に名前が表示される。


【YUMA】


【ログイン頻度:高】


【平均プレイ時間:高】


【戦闘参加率:極高】


【世界Boss参加率:極高】


【高難度任務:高】


【PVP:高】


【協調行動:高】


「彼はまだ辞めていません」


「そうか」


「むしろ、以前より多くのデータを残しています」


 責任者はしばらく画面を見た。


 そして、小さく言った。


「だから、モデルが成長している」


 研究員は頷いた。


 プレイヤーは減っている。


 しかし。


 残ったプレイヤーのデータは、より濃くなっている。


 そして、その中心には。


 一人の少年がいた。


 まだ本人は、それを知らない。


 悠真はその夜も、普通にゲームを続けていた。


 世界が変わり始めていることを感じながら。


 それでも。


 ゲームをやめる理由は、まだなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。