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《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


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第百八十一章 先に届いた荷物

 木曜日。


 悠真は学校から帰り、宿題を終えてから《クロスギア》にログインした。


 ロビーでは、北部資源輸送路の護衛任務が募集されていた。


 主催者はSORAだった。


 悠真が参加を申し込むと、すぐに承認された。


 転送先には、輸送車両が二台並んでいた。


「今日は二台なの?」


 悠真が尋ねると、SORAは車両の一覧を開いた。


「そうらしい。荷物の届け先が二か所ある」


「別々に運ぶの?」


「途中までは同じ道だ。分岐点で分かれる予定になってる」


 参加者は四人。


 SORAと悠真のほかに、以前も護衛任務で一緒になったプレイヤーが二人いた。


 出発前、NPCの輸送担当者が荷物の番号を確認していた。


 一台目には八個、二台目には六個。


 荷物の固定状態に異常はなく、車両の点検も終わっていた。


「出発していいのか?」


 SORAが尋ねる。


「一台目は準備完了。二台目は、まだだ」


 担当者が答えた。


 悠真は二台目を見た。


 車両の横では、別のNPCが端末を操作している。


「何か問題があるんですか?」


「積載記録と受け取り先の記録を照合している」


「荷物は全部そろってるよね?」


「荷物の数は一致している。記録の確認が残っている」


 担当者はそれ以上説明せず、端末の操作を続けた。


 しばらくすると、一台目の車両が動き始めた。


 もう一台は、出発位置に残っている。


 SORAは先行する車両を見送ったあと、参加者に声をかけた。


「俺たちは二台目を待とう。任務は二台とも届けることになってる」


 悠真たちは車両の周囲で待機した。


 先行車両が遠ざかる。


 NPCの担当者は、荷物の番号をもう一度照合した。


 数分後、端末の表示が変わった。


【積載記録:一致】


【受取先記録:確認完了】


「準備ができた。出発する」


 二台目の車両が動き出した。


 悠真たちは車両の左右と後方を警戒しながら進んだ。


 途中、分岐点に到着した。


 一台目の車両は、すでに左側の道へ入ったあとだった。


 二台目は右側へ進む。


 道路は狭くなり、周囲には岩場が増えた。


 しばらく進んだところで、前方に小型の機械獣が三体現れた。


「前方、三体!」


 先頭を走っていたプレイヤーが報告した。


 SORAが車両の前へ出る。


 悠真は右側へ回り込み、機械獣の進路を確認した。


 一体が車両へ向かおうとしたため、悠真は攻撃を加えて注意を引いた。


 その間に、SORAが正面から一体を押し返す。


 残る一体は側面から接近してきたが、後方のプレイヤーが攻撃を止めた。


 三体目が動きを止めるまで、長くはかからなかった。


【護衛対象:損傷なし】


【戦闘評価:A】


「先へ進もう」


 SORAが車両を確認した。


 その後は、敵に遭遇することなく受取先へ到着した。


 NPCの担当者が車両から荷物を降ろし、番号を確認していく。


 八個すべての照合が終わると、受取記録が更新された。


【一台目:輸送完了】


 少し遅れて、もう一つの表示が出た。


【二台目:輸送完了】


 任務が終了した。


 ロビーへ戻ると、SORAは記録を確認した。


「出発が遅れたけど、到着は予定の範囲内だったな」


「一台目は先に着いてたね」


 悠真が言った。


「荷物が違うから、別々に運んだんだろう」


「でも、二台目は記録の確認で待ってた」


「確認が必要なら、待つしかないな」


 SORAは記録を保存した。


 今回の遅れは、出発前の照合作業によるものだった。


 荷物が足りなかったわけでも、車両に故障があったわけでもない。


 ただ、記録が一致していることを確認するまで、出発できなかった。


 悠真は任務の詳細を閉じた。


 そのあと、ロビーでしばらく装備を調整した。


 移動制御ユニットは、まだ使い続けている。


 今日の戦闘でも、車両の周囲を移動する時には役立った。


 ただし、機械獣が急に向きを変えた時には、以前の装備より反応が遅れることがあった。


 悠真は設定を大きく変えず、記録だけを残した。


 夕方、ログアウトすると、母親が夕食を並べていた。


「今日は何をしたの?」


「輸送車両の護衛。二台のうち、一台が出発するまで待ったんだ」


「故障していたの?」


「違うよ。荷物の記録を確認してた」


「確認が終わるまでは出発できなかったのね」


「うん。荷物の数は合ってたけど、受取先の記録も確認する必要があったみたい」


 母親は頷いた。


「出発を急いで、あとから困ることもあるものね」


 悠真は箸を取った。


 ゲームの中では、予定通りに進まないことがある。


 それでも、遅れの理由が分かれば、次に何を確認すればいいのかは見えてくる。


 今日の任務では、二台とも荷物を届けることができた。


 悠真は夕食を食べ終え、翌日の学校の準備を済ませた。


 明日は、どんな任務が並んでいるだろう。


 それを確認するのは、またログインしてからでよかった。

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