↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ゲームの向こうにいる君へ》 ――世界で一番強い小学生と、ゲームの中に生きる友達の話――  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
170/350

第百七十章 見えない変化

 日曜日。


 悠真が《クロスギア》にログインすると、ロビーの掲示板に新しい募集が出ていた。


【中央市街区・共同設備点検】


【参加人数:最大八名】


【内容:設備の稼働確認、周辺経路の確認】


【戦闘:状況により発生】


 募集主の名前は知らないプレイヤーだった。


 悠真は詳細を開いた。


 今回の任務では、中央市街区の三つの設備を順番に確認するらしい。設備ごとに担当を決め、点検が終わった場所から次の地点へ移動する。


 特別な報酬はない。


 しかし、複数の設備を一度に確認する任務は、普段の単独点検とは違う動きになる。


 悠真は参加申請を送った。


 少し待つと、承認の通知が届いた。


 現地へ転送されると、すでに六人のプレイヤーが集まっていた。


「あと二人か」


 募集主が周囲を見回した。


「参加した人は、最初の設備に集まってください。そこで担当を決めます」


 悠真は挨拶をして、ほかのプレイヤーの近くへ移動した。


 やがて八人が揃った。


 募集主は地図を表示した。


「最初は中央制御設備。次に東側の補助設備。最後に北側の通信設備です。二人ずつ確認して、残りは移動経路と周囲を見てください」


 各自が担当を決めた。


 悠真は、別のプレイヤーと北側の通信設備を担当することになった。


 通信設備へ向かう途中、中央通りを横切る輸送車両が見えた。


 車両の周囲では、NPCたちが荷物を運んでいる。


 その先に、以前は閉鎖されていた建物があった。


 入口には作業員が立ち、内部から機械音が聞こえていた。


「ここ、前は入れなかったよな」


 隣のプレイヤーが言った。


「そうだったと思う」


「もう使ってるのか」


「何の施設かは分からないけどね」


 二人はそれ以上立ち止まらず、担当地点へ向かった。


 北側の通信設備は、道路脇の小さな管理区画に設置されていた。


 外観には目立った損傷がない。


 電源表示も正常だった。


 悠真は操作盤を確認した。


【稼働状態:正常】


【記録更新:確認中】


 記録の欄だけ、表示が完了していなかった。


「また更新待ちか」


 隣のプレイヤーが画面を覗いた。


「前にも見たことがあるの?」


「別の設備だけどね。原因は分からなかった」


「じゃあ、今回も同じ原因とは限らないな」


「うん」


 二人は設備の周囲を確認した。


 接続部の固定に問題はない。


 外部ケーブルにも目立った破損はない。


 表示された稼働状態と、実際の動作にも異常は見つからなかった。


 悠真は点検結果を報告した。


【設備稼働:正常】


【記録更新:確認中】


【周辺異常:なし】


 報告を送信すると、管理NPCが近づいてきた。


「点検報告を受領しました。記録の更新状態については、管理側で確認します」


「いつ頃、結果が分かりますか?」


 悠真が尋ねると、NPCは少し間を置いて答えた。


「確認時期は未定です」


「分かりました」


 悠真は報告画面を閉じた。


 設備が正常に動いていることは確認できた。


 しかし、記録の更新がなぜ止まっているのかは分からない。


 そこまでが、今回の点検で確認できたことだった。


     *


 中央制御設備の点検を終えたプレイヤーたちと合流すると、募集主が次の地点を指定した。


「東側の補助設備へ移動します。さっきの報告は、こちらでも確認できました」


 悠真たちは移動を開始した。


 途中、道路の交差点でNPCの作業員が通行整理をしていた。


 以前は直進できた道に、簡易柵が設置されている。


 その先では、別のNPCたちが路面を調べていた。


 募集主が立ち止まった。


「ここ、通れないのか?」


 作業員に尋ねる。


「現在、通行を制限しています。迂回路をご利用ください」


「いつから?」


「詳細は管理記録をご確認ください」


 募集主は地図を開いた。


 迂回路は少し遠回りになるが、任務の範囲内だった。


「仕方ない。東側から回りましょう」


 全員が進路を変えた。


 悠真は柵の向こうを振り返った。


 路面の一部が掘り返されている。


 作業のために通行を制限しているようには見えた。


 ただ、いつから工事が始まったのか、何を調べているのかまでは分からない。


 今回の任務では、通行できないことを報告すれば十分だった。


 東側の補助設備に到着すると、二人一組で点検を進めた。


 設備の動作は正常。


 補助電源の数値も規定範囲内。


 周辺の部品にも異常はなかった。


 残る北側の通信設備についても、ほかの担当者から異常なしの報告が入った。


 ただし、記録更新の表示は、こちらでも確認中のままだった。


「三つとも、動作自体には問題なかったな」


 募集主が報告をまとめた。


「道路の通行制限と、記録更新の件は、それぞれ報告しておきます」


 任務の終了通知が表示された。


【共同設備点検:完了】


【評価:A】


 プレイヤーたちは、それぞれ短い挨拶を交わした。


 何人かは次の任務へ向かい、別のプレイヤーはロビーへ戻っていった。


 悠真も帰還操作を行った。


     *


 ロビーに戻ると、掲示板に先ほどの任務の記録が投稿されていた。


 募集主が、三つの設備の点検結果と道路の通行制限についてまとめている。


 その下に、別のプレイヤーからコメントが付いていた。


『別の設備でも記録更新の確認中が出ていました。こちらは稼働正常です』


 さらに別のコメントが続いた。


『うちの点検では記録更新の表示はありませんでした。設備によって違うみたいです』


 悠真は投稿を読み返した。


 同じ表示が出る設備もあれば、出ない設備もある。


 それだけでは、原因が同じかどうかは判断できない。


 そもそも、設備の種類も設置場所も異なる。


 悠真は自分の点検記録を保存し、掲示板を閉じた。


 その時、KAIからメッセージが届いた。


『今日は何をやってた?』


『共同設備点検。三つの設備を確認したよ』


『どうだった?』


『動作は全部正常。でも、記録の更新が確認中になってる設備があった』


『前に話してたやつか?』


『別の設備でも見たことはある。でも、同じ原因かは分からない』


 KAIから少しして返事が来た。


『なら、今のところは別々に考えるしかないな』


『うん』


『俺はこれから任務に入る。またな』


『またね』


 悠真はメッセージを閉じた。


 以前なら、似た表示を見つけると、すぐに何かつながりがあるのではないかと考えていた。


 今も気にはなる。


 けれど、似ていることと、同じ理由で起きていることは別だった。


 確認できていない部分まで決めてしまえば、次に何を調べるべきかも分からなくなる。


 悠真はログアウトした。


 現実世界では、母親が買い物袋を片づけていた。


「おかえり。今日はどうだった?」


「設備の点検をしてきたよ」


「何か問題があったの?」


「動作は正常だったけど、記録が更新されていない設備があった。別の場所でも似た表示が出てるみたい」


「原因は分かった?」


「まだ。設備によって違うみたいだし、同じ理由かどうかも分からない」


 母親は袋から野菜を取り出した。


「じゃあ、分かったことと、まだ分からないことがあるんだね」


「うん」


「それなら、今はそれでいいんじゃない?」


 悠真は頷いた。


 机に戻る前に、明日の予定を確認する。


 学校の準備は済んでいる。


 宿題も残っていない。


 悠真はノートを開き、今日の点検結果を短く書いた。


 設備の動作は正常。


 記録更新の状態は確認中。


 道路の通行制限は別途報告。


 原因は未確認。


 書き終えると、ノートを閉じた。


 分からないことが残っていても、今日確認できたことまで消えるわけではない。


 今は、それで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。