第百五十一章 集まった三人
月曜日。
悠真は学校から帰ると、宿題を済ませてから《クロスギア》にログインした。
【オンラインプレイヤー:206,413】
ロビーには、週末のイベント結果がまとめて表示されていた。
新しい区域の探索記録。
部品交換会の成立件数。
共同任務の達成状況。
悠真はそれらをざっと確認し、KAIからのメッセージを開いた。
『今日は来られるか?』
『うん。少しなら』
『RIONも来るってさ』
しばらくすると、RIONもロビーに現れた。
『今日は何をする?』
KAIが尋ねた。
悠真は掲示板を開いた。
高難度任務もあったが、制限時間が長く、途中でログアウトするには向いていない。
その下に、短時間の共同演習が掲載されていた。
『三人編成・設備防衛訓練』
制限時間は十五分。
指定された設備を守りながら、複数方向から現れる敵を排除する。
失敗しても通常の接続負荷以外に特別なペナルティはない。
「これなら、短い時間でできそうだよ」
『いいな』
KAIが同意した。
『俺もそれでいい』
RIONも参加を選択した。
三人は訓練区域へ転送された。
そこには中央の制御設備と、東西二つの進入路があった。
開始前の説明によると、敵は一定の間隔で出現するが、どちらの進入路を使うかは毎回異なる。
設備が破壊される前に敵を排除すれば成功となる。
「最初は、KAIが前に出て、RIONが後方から攻撃。僕は中央で、敵が来た方向を見ながら動くのはどうかな」
『了解』
KAIが答えた。
『俺は西側から見ておく。敵が東に出たら、悠真が連絡してくれ』
RIONも役割を決めた。
演習が始まった。
最初の敵は西側から現れた。
KAIが前に出て攻撃を仕掛ける。
RIONは距離を保ちながら射撃し、悠真は中央から敵の動きを確認した。
敵はKAIに注意を向けたまま、設備から離れていく。
三人の攻撃が重なり、最初の敵は短時間で停止した。
次の敵は東側に出現した。
「東側!」
悠真が知らせると、KAIはすぐに向きを変えた。
RIONは攻撃位置を調整し、悠真は中央に残っていた小型機を処理した。
設備に損傷はなかった。
そのまま三体目が現れる。
今度は東西の両方から、ほぼ同時に敵が進んできた。
『西は俺が見る!』
KAIが西側へ向かった。
『東はこっちで止める』
RIONが射撃を始める。
悠真は東側へ向かおうとしたが、中央の敵が制御設備に接近していることに気づいた。
どちらへ向かうべきか、一瞬迷った。
その間に、設備の耐久値がわずかに減った。
「中央に一体残ってる!」
『分かった。そっちは任せる』
RIONの返事を聞き、悠真は中央へ戻った。
敵の攻撃を避け、側面から攻撃する。
制御設備に接近していた敵は停止した。
東西の敵も、それぞれKAIとRIONが排除した。
演習は続いた。
その後も敵は複数の方向から現れたが、三人はその都度、位置を変えながら対応した。
最後の敵を倒すと、結果画面が表示された。
【設備耐久値:92%】
【敵排除:成功】
【評価:A】
悠真は結果を確認した。
「最後、ちょっと設備に近づかれたね」
『ああ。俺が西へ行った時、中央が空いた』
KAIが答えた。
『でも、最初から全員を中央に置いていたら、東西の敵に対応するのが遅れたと思う』
RIONは結果画面を閉じた。
『配置自体が悪かったというより、敵が同時に来た時の動きが決まっていなかったんじゃないか』
悠真は考えた。
確かに、三人はそれぞれの担当を決めていた。
しかし、複数の場所で同時に問題が起きた時、誰がどこを優先するかまでは決めていなかった。
「次にやるなら、中央が危なくなった時は誰が戻るか、先に決めておいたほうがいいかもしれない」
『そうだな。もう一回やってみるか?』
KAIが尋ねた。
悠真は時計を確認した。
まだ少し時間はある。
「一回だけなら」
三人は再び演習を開始した。
今度は、中央の設備に敵が接近した場合、最も近いプレイヤーが対応することにした。
ただし、担当区域の敵が設備へ向かっている場合は、無理に離れずに状況を報告する。
最初の敵は西側に現れた。
前回と同じようにKAIが攻撃し、RIONが後方から援護した。
悠真は中央で待機した。
次の敵は東側に出現した。
RIONが対応し、悠真は中央の設備から離れずに周辺を確認する。
しばらくして、中央にも敵が現れた。
今度はKAIが西側の敵を引きつけたまま、悠真へ連絡した。
『中央が来た。俺は西を離れられない』
「分かった。こっちは僕が対応する」
悠真は中央の敵へ向かった。
その間、RIONは東側の敵を処理し、KAIも西側の敵を倒した。
設備への損傷はなかった。
最後まで大きな混乱は起きず、演習は終了した。
【設備耐久値:100%】
【敵排除:成功】
【評価:S】
三人は結果画面を見た。
『今回はうまくいったな』
KAIが言った。
『でも、次も同じになるとは限らない』
RIONが付け加えた。
『敵の数や出現位置が違えば、また変わるだろうな』
悠真は頷いた。
「うん。でも、前よりは動きやすかったよ」
最初の演習では、敵が複数方向から現れた時、三人とも自分の担当を優先していた。
二回目は、状況が変わった時に誰が対応するかを、あらかじめ決めていた。
それだけでも、判断に迷う時間は減っていた。
ただし、すべての状況を事前に決められるわけではない。
次に何が起こるか分からないからこそ、連絡を取り合い、必要に応じて動くことが大切だった。
悠真はロビーへ戻った。
KAIが装備を確認し、RIONは次の予定を調べている。
『俺は今日はここまでだ』
RIONが言った。
『学校の課題をやらないといけない』
『俺も、そろそろ落ちる』
KAIも続いた。
「じゃあ、またね」
悠真は二人に挨拶し、ログアウトした。
現実の部屋に戻ると、机の上には明日の授業で使う教材が置かれていた。
悠真は鞄を開き、必要なものがそろっているか確認した。
ゲームの中では、三人で相談して動くことができた。
学校では、一人でやらなければならないこともある。
どちらも、今の自分に必要な時間だった。
悠真は教材をしまい、明日の準備を終えた。
夕飯までには、まだ少し時間があった。
彼は本を開き、続きを読み始めた。




